第27話 大会に参加する

今回の剣武祭という大会は、剣士の腕を見せる大会である。

剣に魔法属性をまつわせたり、身体強化をして高速で切り掛かったり、背よりも大きな大剣を振り回したり、剣以外の武器を使い剣士と戦ったりと武器を使った勝ち抜き戦だ。

そのため死者や重傷者が絶えないことでも有名だ。

人はそれを「血」を望むのだ!


予選は既に終了し明日からの本戦の抽選が行われていた。

「セブン選手は明日の朝一でAパートで試合ね。相手は・・剛力のカン選手だ。」

と組み合わせを告げられ会場を後にする。


夕食を皆んなと共にしようと近くの居酒屋風の食堂を貸切にして、移動中にまたしてもセシル殿下達と鉢合わせ。

「如何されました?何かお困りでも?」

「それが・・・。」

と口ごもるセシル殿下の後ろから

「申し訳ありません。私が予約を間違えてしまって・・。」

と涙目の侍女が。

「そうですかそれはお困りでしょう。今川私たちは食事に行くとこでした、席は多分十分空いていると思いますのでご一緒しませんか?」

「本当に❤️、嬉しいのですがご迷惑ではありませんか?」

「大丈夫です、それに乙女の涙を見ては食事が美味しくありませんからね。」

と答えて合流して予約していた食堂へ。

そこは予想以上に美味しい店だった。

「明日も予約できますか?」

と思わず言ってしまうほど。


「何度も何度も有難うございます。この御礼は必ず。」

と言いながらセシル殿下は宿へと消えていった。

「ご主人様、セシルさん誰かに嫌がらせを受けているみたいですね。様子を探ってみましょうか?」

なぜか普段俺からあまり離れたがらないムラサキがそう言い出した。

「ん!・・それでは頼む。」

と答えて俺らも宿へ。



ーー セシル殿下の宿  side



「なぜこうもうまくことが運ばんのだ。」

1人の男が机をダン、と叩いて酒を煽る。

彼はセシル殿下の護衛役の副隊長ツータン男爵。

その脇で本日涙目の侍女が震えながら立っていた。

「いいか、次はないぞ!お前の家族の命を守りたかったら次は死んでも遂行しろ。」

というとツータンは部屋を出て行った、残された次女は腰が砕けたように座り込むと手渡された薬袋を睨むように見ていた。


ムラサキは既に宿到着以前からセシル殿下一行の様子を見ていた。

当然ツータン男爵以外にも協力者がいることも。

それを知ってなおセブンに申し出た真意は。


「ご主人様はこの世界を統べるお方、世界中の王族を嫁に娶らせる。私の野望は必ず達成してみせる。」

と密かに心を燃やすのだった。


ー 大会当日の朝


「ご主人様おはようございます。これは今までの調査結果です。」

ムラサキがレポート用紙を差し出す。

最近ではムラサキや他の従魔まで読み書きなどが十全にできるようになり、報告にレポートを使うようになった。

「なになに、意外と敵が多いようだな。次はどこを守られる可能性もあるな。」

と独り言のように呟くと

「その点はお任せください、私の分体をセシル殿に取り憑かせておりますので」

と答えるムラサキ。

「それも少し怖いな」

と答えながら後のことはムラサキに任せて会場へ向かう。


第一試合のあるあ会場に着くと対戦相手と思われるごっつい男が俺を見ながら

「お前が俺の相手か、せいぜい長く立っているんだな。」

と息巻いて相手コーナーに向かった。

「失礼な男ですね、息の根を止めてきましょうか?」

カティーがそっと俺にいう

「いいよどうせ試合で思い知るだろうから。」

と答えた俺も自分のコーナーに向かった。


「第一試合開始!」

選手の呼び出しの後審判が号令をかける。


大剣を振り回しながら剛力のカン選手が駆け寄ってくる、早めに蹴りをつけたいのか?

俺の目の前を大剣が通り過ぎる、するとカン選手がニヤリと笑い

「降参するなら今のうちだぜ。なぶり殺しにしてやる。」

と小声で俺に声をかけた、どうやら俺を脅しているようだ。

俺はカン選手が振り回す大剣を紙一重でかわしながら、チクチクと剣をカン選手の向こう脛や手首に当てていく。

「ちょこまかと逃げやがって「痛て!」効きもしない攻撃を「痛て!」くそー。」

激昂してさらに激しく大剣を振り回すカン選手の手足の腱を斬り裂く。

「ウ!・・動かねえ!」

カランと大剣を取り落とすカン選手、俺は脇と腿の腱を切り裂く、これで身動きができない。

顔面のすぐ横の地面に剣を突き刺す、恐怖に顔が歪む。

「参った!だから助けてくれ!」

大声で泣きながら叫んで助けを求めるカン選手に審判が負けを宣言する。



闘技場から降りた俺にカティーが

「流石です、ご主人様胸がスカッとしました。」

と言いながら迎えてくれる。



その日は2回戦い終了、街に繰り出して従魔達の買い物を済ませると昨日の居酒屋風食堂に向かう。

丁度やって来たセシル殿下達と合流し食事を注文する。

ムラサキがそっと俺に報告する

「本日の昼食に毒を盛った者がいますが、私の分体がそれを中和しており問題ありません。」

「そうなると次は実力行使かな。」

「はい、この後暴漢んが一行を襲う手はずです。」

「それに便乗して敵側の者達を始末するか。」

「はい、お望みのままに。」

ムラサキが他の従魔達に指示を伝える。


「本日も楽しいお食事でした。セブン伯爵様もご活躍で明日も楽しみに応援いたしますね。」

と言い残しセシル殿下が宿へ向かう。


俺は従分時間をかけてから店を出て宿に向かうと、途中の路地で血の匂いが。

セシル殿下一行の供が3人暴漢どもと息絶えている。


宿に着くと青い顔をしたセシル殿下がホールに座っていた。

「どうなされました?顔色がお悪いようですが。」

と何食わぬ顔で声をかけると

「私の問題ですので・・・しかし・・相談に乗ってもらって良いですか?」

と思い詰めた顔で言い出した。

「どうぞ、私で役に立つことでしたら何なりと。」

「実は・・」

と言い出すと、ことの経緯を話し出した。

「私の生まれた王国は、国王だ狭いが海産物と鉱石が豊富で昔から貿易が盛んで栄えていました。今から10年ほど前、現国王が病魔に侵されてから時を同じくして経済が悪くなり穀物を輸入するお金に困り始めました。

 国王は他の高位の貴族にお金を借りて穀物の輸入を行いなんとか今までやって来たのですが、貴族に借りたお金の返済が嵩みだしさらに経済が回らなくなって来たのです。

 私はその原因がある貴族グループだと分かり、その証拠を集めさせている最中に現国王の容態が急変して・・・。

そんなことで跡目争いが活発化しており、怪しい貴族グループが推す第二王子の勢力が大きくなっているのです。

第一王子から「お前は安全な場所の避難しろ」と言われて今ここにいるのですが、先ほども刺客と思われる者達から襲われ、私の臣下が3名亡くなったのですが・・なぜかその者達は最近よくない噂が・・。

 今私は誰を信じて良いのか疑心暗鬼になっているのです。

こんな話を関係のないセブン伯爵様にしても迷惑なだけなのですが、今の私は貴方様だけしか信用できないのです。」


と心の思いを吐露した。



ー ムラサキの活躍



そんな話をしているといつの間にか後ろにムラサキが戻って来ていた。

「ご主人様お話宜しいでしょうか?」

といつも以上に聞いて来た、多分セシル殿下がいるからだろう。

「ああ構わない話をしてくれ」

と言うと、セシル殿下を見ながら

「今から話す内容は、セシル殿下のことに関するお話です。」

と前置きして

「先ほどセシル殿下を襲った暴漢たちの後をつけさせていた者からの報告がありました。

 ・暴漢者を直に雇ったのは、死んだ家臣の方でその家臣を動かしていたのは、ここから距離で   

  1kmほどのところにある宿に拠点を構える、※※と言う者です。

 ・本日のセシル殿下の食事に毒が盛られていた件も死んだ家臣が家族の弱みを握る侍女の※※

  に命じたものです。

首謀者と侍女については今私の部下が拘束しております。

さらに他の部下からの報告でセシル殿下の本国で第一王子が亡くなったそうです。」

と言う内容だった。

これを聞いたセシル殿下は、今まで以上に衝撃を受けたようで、そのまま部屋に下がり閉じこもった。


俺はムラサキの情報収集能力と人知れず確保する能力を褒めてやると、

「それでは褒美として私の作った服を着ていただきたい。」

と言うので数着、ムラサキ作の服を受け取った。


ムラサキが捕らえた首謀者は現在仮死状態で繭のように丸められているそうだ、流石は女郎蜘蛛なだけある。

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