第23話 新しい領主と街

私ら農民は困惑していた。

新しく王家直轄のこの地に子爵様が統治をされると聞き、今度はどうなるのかと心配していたんだ。

実は今の代官様はとても立派な方でその前の代官様がやらかした数限りない面倒事を少しづつ元に戻してくださっていて、暮らしもやっと楽になりつつある頃の話だったからだ。

また以前のようなひどい方が領主としてくればもうここで暮らすことはできないかもしれない、皆そんな心配を抱いていた。


暫くすると「町役場」とか「市役所」とか言う建物が現れ、住民にかなりのお金を配って

「1月旅行か旅かに行っておいてくれ、その間に街を作りかえるから。」

と言われて追い出されるようにして皆が領地を出たのだった。


私たち家族も6人で王都へ向かったのだ。

王都には親戚がいて話をすると暫く泊まって行けと言ってくれたから。

しかしあのお金を本当にくださったのでしょうか?いくら何でも1年分のお給金をか家族の数だけ渡すことの意味がよくわからなかった。

それで他の街の出ると言う住民もいたのは当然だろう。


そして1月後街に戻ると私たちは街の入り口で唖然とした。

「何ですあの立派な城壁は?道もこんなに広く平で・・あッ!私たちの家があった場所が道に・・。」

住むべき家がなくなって呆然としていた私たちに、兵士と領主様の文官様が現れて一枚の紙を街を出る際のカードと交換で下さった。

紙には街の区割りが描かれ、私たちの家の番号に丸がしてあった。

「その丸の場所に行きなさい、そこが貴方たちの新しい家になります。使い方は家の中のテーブルに書かれてある小冊子を読んでくださいね。」

と言うと次に現れた元住人の方に向かわれた。

私たちは紙に書かれた地図に従って丸の場所に辿り着くとまた唖然としてしまった。

そこには立派なお屋敷のような家が、あったのだ。

家の入り口に紙に書かれた番号が刻まれていた。

恐る恐る扉を開き中に入ると、王都の親戚の家でも見かけなかったほどの立派な材料で仕上げられた建具や家具が並んでいた。

子供達は大喜びで二階に走り上がり、部屋を見てまわっていた。

私たちはテーブルの上の小冊子というものを開いて見ていた。

我が家では私が唯一文字の読み書きができるため、私が代表して読んでいく。

「お帰りなさい、我が領民よ。

この家は私がここを統治するにあたってささやかであるが領民へのプレゼントだ。

新しい魔道具なども置かれており使い慣れないだろうが、ぜひ小冊子の絵を見ながら使いこなすことを願う。

我がなはセブン=サーチ子爵、この街はフユーチャーの街と名づけた。

子孫末裔までこ街で幸せに暮らしてくれることを願う。」

という出だしで書かれた文章で、いろいろな道具に使い方が絵で描かれていた。


その後は、家族皆で絵を見ながらお風呂、トイレ、コンロ、冷蔵庫の使い方を覚えて、豪華な家での最初の夕食を迎えた。

「お母さん、お風呂とても気持ちよかったよ。お湯がこんなにたくさん出るの。」

と末娘が手を大きく広げてお話をする。

「トイレもすげーぜ、水が下からピーッてお尻に当たるんだぞ!」

長男が興奮気味にいいう。

そうここには王都で最近流行り出したという

・お風呂

・トイレ

・コンロ

・冷蔵庫

なる魔道具がついているのだ、親戚の叔父さんにも手紙を出しておこう。


そんな興奮と戸惑いに迷う家族が暫くこの街に溢れた。



俺は、代々農業をしている家だ。

ここの土地は良くも悪くもない土地だ、農作物は手をかければそれなりに収穫できるが、それで余裕ができるかといえばそこまではない、故に収穫が終わった後は出稼ぎに出たりもしている。


そのなこの土地に新しい領主様が来られた、今まで代官が変わるたびに良かったり悪かったりしたが俺たち農家は、誰に代わろうとも作物を育てるだけだ。


しかし今度の領主様はどえらく違った、一時期みんなを金を渡して他所に出してその間に家を道を畑を作り変えたんだ。

戻ってきてびっくりだ、農地の土が最上の土に変わっていた。

農業用水という水路や農作業に便利な道具がそれぞれの農家に納屋付きで与えられ、その使い方まで丁寧に描かれた絵があった。

家は豪農の家のような立派な家で、井戸に水汲みに行かなくても捻れば水が出るんだ。

一番驚いたのはお湯が出るお風呂だ、休みをもらって家族と王都に旅行に行った時に泊まった旅館に同じ物があって皆で

「こんなお風呂が家にあったらいいね。」

と夢の話をしたそのお風呂があるのだ。

「信じらんねえ。」

その後はそれ以上だった、新しい農具の使い方は今までの農業がいかに無駄だったか分からせるのにこれ以上のものはないという感じだ。

半年もすると収穫された農作物を見て今までに5〜10倍の収穫に

「こんなに獲れていいのか?」

と思わず頬をつねったほどだ。

そのため収入は大きく跳ね上がりさらに作業が楽になったことから怪我が少なくなり、いいことずくめになったのだ。

次の年、税金がどれほどかと心配していた俺たち農民、しかし5年間は無税だと言われた。

何でも「お金なら腐るほど持っている、お前らの金はいらん。」と領主様が言われたそうだ。


そういえば、あの家もこの道もあの畑も全て領主様が造られたという、何と凄い領主様が来られたんだ。



ーー 祭りだ


新しい街が出来上がって半年が過ぎた頃、次のようなお知らせが伝わった。

[次の月の満月の日、収穫祭を行う。期間は全3日間、領民はその間仕事をヤメテ祭りを楽しむこと。」

というものだった。


そしてその収穫祭が行われた日、領民はまたしても驚いた。

溢れんばかりの人人、珍しい商品を売る露店が端まで見えないほど並び、食べたこともない美味しそうな料理や酒が手に届く値段で売り出されていた。

女たちは綺麗な布地や王都で噂の化粧水にシャンプー、リンスなどの美容品に、ゴムというものを使った機能的な下着に目を奪われていた。

その日を境にその街には美女の街と呼ばれるように女性たちが美しく着飾った姿がよく見受けられるようになった。



その後もりょうしゅさまは色々なことをされて、多くきなった街に入植できない程の移民を収容するために新たに2つの街を作られたのだ。

さらにまた新しい街を作る計画があると噂されている。

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