第10話 王城での晩餐会と社交

ドアーフ達とたらふく酒を飲んだ翌日、俺は辺境伯のところに顔を出していた。

話に出ていた晩餐会にいつ出れば良いかとの確認だ。

「出来れば最終日にお願いしたい。その時は国王夫妻も顔を出すのだ。王妃もその頃にはかなり化けているだろうからな。」

と苦笑いの辺境伯、従魔の3人がまだ俺のとこに帰らぬのはそういう訳か。

「分かりました、4人で顔を出しますが辺境伯様とご一緒が宜しいですか?」

「おおそうだな、私のところにそうだな3時頃来てくれぬか。」

という事で3日後の予定が決まった。

その後も俺は王都を見学して回った。


ーー 不思議な薬師



王都を回っていると不思議な店や店主に出会った。

1人に薬師がいた。

小さな店で目立たなかったが、匂いで良い品を扱っていると気づいた俺は店の扉を開けて中に入った。

「お邪魔します。」

と言いながら俺が見せに入ると、片目だけ開けた老婆が俺を見てまた目を閉じた。

棚の薬やポーションを見ているといきなり

「そこにあるモノじゃ珍しくもあるまい。お前さんも創薬するのだろ?」

と老婆が声をかけてきた。

「私ほどの歳になると大体の人物は見れば分かるが・・アンタは別モンだね。匂いからして創薬するんだろ?」

「はいよくお分かりで、コレが俺のポーションと毒消しです。」

と収納から3つほど小瓶を出して見せた。

「・・・エリクサー・・はじめてみたよ。冥土の土産になるね、ありがとうよ。」

という老婆に

「見本でこの店に置いとくよ、必要な時は使って構わないから」

と言いながら店を出ようとすると

「お待ちなさい、もう一本ないかい?今2人ほど死にかけている者がいてね、助けてやりたい人物なのさ。お題は足りないだろうがなんでも好きなものを持って行っておくれ。」

という老婆に

「それなら早く届けてきてください、お題は不要です。」

と言いながらもう2本エリクサーを置いて店を出た。



ーー 薬師のエルフ side



ぶらりと若い人種が顔を出してきた。

この店には魔法がかけてありだれどもは店を見つけることさへ出来ない。

その若者は店の品を見聞していたが珍しいものはなかったようだ。

王都一の品揃えのこの店の品を見て、私は人物鑑定を発動した、が、出来なかった。

その理由は多分レベル差だろう。

私は500年を生きたエルフだ、その私がレベル差で鑑定できないとなると恐ろしい化け物だね。

声をかけると数本の小瓶を取り出しても本で置いておくと言って出ようとする。

鑑定するとエリクサーがあった、幻の完全回復薬だ。

私はさらに1本の追加を頼んだ、すると何でもないように若者は2本追加で置いて行った。

多分彼は国王が話していた男に間違いないだろう。

あの魔境のそばに1人で城を建てたというホラ話のような男だ。

しかしこのエリクサーを見れば、その話が何でもないついでの話に聞こえる。

国王は言わなかったようだが、王子と王女が病に倒れて明日をもしれない状態だと聞くコレを持ってやろう。



ーー 晩餐会で飛び入りが驚き発言する



2日後の午後3時、約束通り辺境伯の屋敷に立ち寄り一緒に王城に晩餐会に出席した俺たち。

位の上の貴族ほど後から来るものにようで、会場にはほぼ人が埋まっていた。

「タイガード辺境伯並びにセブン殿一行様入場します。」

呼び込みのような声が響いた後俺たちは会場入りした。

興味深々の目が俺たち4人を取り囲む、堂々とした態度で俺は用意された席へと案内され座る。

獣魔達も緊張とは程遠い感じで、その美しさを振りまいて座ると、何処からかため息のような声がたくさん聞かれた。


その後

「国王陛下夫妻様並びに王子王女様の入場!」

と一声高い声が響くと、会場がざわついた。その理由を知らぬ俺が辺境伯を見ると小声で

「王子王女殿は病にふせっていると聞いていたのだ、しかもかなり悪いと。」

それを聞いた俺は、あの薬師のことを思い出した、2本のエリクサーがどこに行ったのか。


国王は用意された席には向かわず、数段高い場所に立つと

「コレから話すことは決定事項である。我がセントレア王国に新たな貴族家が生まれた。家名については後ほど披露することになるが、本にだけは一足早く紹介しよう。」

と言うと俺の方を見ながら手招きした。

『どうやらエリクサーの恩を貴族位でお返ししたいようだ。断りのも問題だろう。』と思いながら俺は席を立つと国王の目に進み出て膝をつく。

「コレにいる若者は、セブンと言うものである。我がセントレア王国に多大な恩恵を与えた者である。領地については王家の一部を譲渡するつもりである、皆もこの者を軽く扱わぬによう頼むぞ。」

と言うと俺に手を取り立たせると皆の方を向かせて紹介したのであった。


ざわつく会場、それ以上の声が

「お父様、私からの一言宜しいでしょうか?」

「おおどうしたカルメン?」

立ち上がり俺のそばまで来た王女殿下は、俺に膝立ちし

「セブン様、カルメンでございます。今後我が身は貴方様のそばにてございます、永遠によろしくお願いします。」

とトンデモ発言をした、コレには国王も声をなくしたがコレだけの貴族の前で否定もできず、

「合わせてよろしくな。」

と俺に言うのであった。



ーー 押しかけ女房は王女様



晩餐会は波乱の幕開けであったが、若く美しくなった王妃の姿と病に臥せっていた王子王女が問題ない状態で現れたことで、俺の話もいつの間にかかすんでしまった。


舞踏の時間になり、まず最初に国王夫妻が続いて王子王女が相手を伴いダンスを行う。

当然のように俺のところに王女が現れ

「お相手してくださいますよね、セブン様」

と言うのでスキル「礼式」「舞踏」を加点しながら

「私で良ければお相手します、どうぞ」

と手を差し出しながら舞踏会場に足を踏み入れる。


スキル様のおかげで、見事なダンスを披露した俺は

「カルメン殿下、今更ではありますがプレゼントを受け取って欲しいのですが。」

と言いながら収納から綺麗に飾られた箱を取り出して差し出した。

「プレゼントですか。嬉しいわ、開けてもよろしくて?」

と言いながらテーブルに箱を置き蓋を開けた。

その中には

・美しくも豪華なティアラ

・見事な宝石のネックレス

・収納魔道具のブレスレット

・身体異常無効の指輪

が入っていた。

コレは色々な状況を想定して用意した物の一つだ。

当然王子に合うプレゼントもある。


「こんな見事な贈り物を・・・有難うございます。」

とウットリとしながら贈り物を手に見定める王女。

そこに王妃が近づいてきて

「セブン殿、母親の妾にも何かあるのであろう?今で構わぬが。」

との催促

「確かに、順番が逆でありました。こちらが王妃様用のプレゼントであります、どうぞお納めください。」

と言いながら一回り大きな箱を差し出す。

中には

・さらに豪勢なティアラ

・さらに豪勢なネックレス

・身体異常無効の指輪

・ムラサキの糸で織ったガウン

が入っていた。


「何と豪華で美しいティアラにネックレス、それにこのガウンの肌触りの極上のこと。カルメン貴方の意思を最大級応援しますわ。」

と王女に言うと俺に向かい会い

「王家御用達の名前を授けます。以後も精進してください。」

というとニッコリと微笑んで立ち去っていった。


その後は特に問題なこともなく色々な貴族と顔を合わせながら言葉を交わして、俺はへんきょうはくのもとにもどった。

「だいぶ活躍のようだね、セブン子爵。」

というと辺境伯の言葉に俺に与えられた爵位が子爵だとそこで気づいた。

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