第9話 王都セントレア
連日の貴族の歓待に少しばかり疲れた様子の辺境伯と共にやっと王都に着いた一行は、直ぐに王城に馬車を進めた。
「お待ちしておりましたタイガード辺境伯殿」
と迎えにきていたのは、宰相だという。
落ち着いたナイスミドル風の男で、言葉や態度からも真摯な性格が見える。
しばらくの間待機部屋で待っていると、煌びやかな女性が入室してきた。
「これは王妃様、久しくご無沙汰しておりましたがごご健勝のようで、このアルフレッド安心しました。」
と恭しく挨拶する辺境伯に女性は
「何を固苦しい挨拶をしているの。さあ、レシレートとシルクはこれからは私の方に来なさい。」
と2人を連れて行こうとしたところで、
「王妃様お待ちください。こちらの3人にも同行をお許しください。商品を開発した者の従者であります、今後大事な人脈となりまする。」
という辺境伯夫人の言葉に王妃は
「この者達が・・・確かに垢抜けており、美しい者達だ。分かったその者達も同行せよ。」
というとさっさと部屋を出て行った。
「済まぬな、姉上はああいう性格でな。悪い人では決してないがせっかちなところがあるので。」
と謝罪する辺境伯に問題ないと答えて、ムラサキに王妃用のお土産を持たせて向かわせた。
その後すぐに迎えに来ていた宰相殿が再び現れて
「辺境伯殿、こちらがカノ男性で良いのか?」
「はい、紹介が遅れました。彼が我が辺境伯領の救世主たる人物、セブン殿です。」
「紹介にあずかりましたセブンと言う一介の冒険者でございます。」
と頭を下げると
「頭をお上げください。貴方の話は内密ではありますが辺境伯から聞いておりました。我がセントレア王国にとっても恩人と言える、ただの面会と思い気をゆるりとしていただければ助かる。」
とかなり低姿勢の態度が好感持てた。
その後たわいのない話をしたところで、お呼びがかかった。
ーー 王様との会合
案内されたのは正式な使者などが謁見する場所ではなく、親しい者が謁見するための小部屋であった。
部屋に入ると既に国王が座っておられた。
「お初にお目にかかります、辺境伯領にて冒険者を生業としておりますセブンと申します。」
と膝をつき頭を下げて申し上げると
「気にせずとも良い、気楽にいたせ。まずはそこの座りなさい。」
と気軽に話しかけた国王は、さすが国王と言われるような威厳があった。
椅子に腰掛け対面する形での謁見が始まる。
内容的には、辺境伯領にて俺がした産業改革的な商品開発とそれを領主に丸投げした話が主で、魔境の城については、「他の貴族は知らぬので話はせぬように。」と言う注意だった。
さらに2年前のオークションの品物の半分を王家が購入したそうで、
「他になないのか?あれば購入するぞ。」
と言う国王に
「お土産でお持ちしました。お金はあるのでご心配なく。」
と言いながら目録を手渡した。
「何!これらの品をお土産とな!宰相これをみよ。」
とそばに控えていた宰相殿に目録を見せていたが
「流石でございますな、これだけでも小さな国が買えそうです。」
と言いながら後で案内するのでそこで渡してくれ、と言われた。
国王との会合も終了し、次の日に3日ほど歓迎の晩餐会が行われるので好きな日に出席してくれと言われて自由になった。
宿泊先は既に決められていて、ムラサキらの後程合流すると聞いていた俺は、王都見学に出かけたのだった。
ーー 王都の商品と鍛治の技量
王都の商店街を地図をもとに歩く俺は、並べられた商品や鍛治士の打つ武器などに興味をそそられていた。
流石に2年も経てば似たような類似品が出回るもので、シャンプー・リンスの紛い物が多く目に止まったが、それを買い入れる女性は庶民がが多く本物はその値の数倍という値付けのため、貴婦人らが主な購入者のようだった。
それでもゴム製の下着や洋服は、庶民の間にもかなり流通している気がした。
武器屋を覗くとドワーフと思われる力作が並んでいた、鑑定でもかなりの完成度で俺の初期の作品と同じくらいだった。
今の俺の作品は、鑑定すれば[神話級]と表示されるほどの品物だからな。
俺の様子に興味を持ったのか店主のドワーフが声をかけてきた
「俺の作品がそこまで気を引かないようだが、小僧も鍛治をするのか?」
と言う質問だ。
俺は面白そうだと思い最近作った剣を取り出して見せた。
「うんーん。これほどの作品は見た事がない。神話級か?」
「よく分かるなさすがだ。貴方の作品も中々のものだ、ただ少しばかり俺の方が上というだけだ気にする必要はない。」
と言いながら別の剣を取り出し
「これは見本としてここに置かせてくれ。」
と剣を差し出すと
「見本というのはわしらに対してだな、確かに預かった。これを見ながら精進しよう。それで何処に連絡をすればお主ん連絡がつくのか?」
「ああ俺はタイガード辺境伯のアレクサンドリアの街にいる。」
と答えると
「成程、お前さんが名の知らぬ名人と言われていた人物か。納得だ。」
というと鍛治の話になり、持ち込んだ酒で酒盛りとなった。気がつくと多くのドアーフがそこにいて大いに飲んで語っていた。
楽しいひと時だった。
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