第7話 女性の欲望と辺境伯の憂鬱
ーー 女性の欲望は底なし沼のよう
夕食会と言う顔合わせが終了を迎え、そろそろお暇しようと俺が思っていたが
「貴方、私達はコロネさん達ともう少しお話をする必要があります。お泊まりになれるように準備をしてもよろしくて。」
と夫人が辺境伯に有無を言わせぬ感じで話しかけた、こりゃかなり興味を持ったようだ。
そこで俺はこのような場面を想定して用意していた品物をムラサキに手渡して
「ご好意に甘えるようで申し訳ありません。私も辺境伯様ともう少しお話があるので喜んでお話に甘えたいと思います。」
と辺境伯の言葉よりも早く答えると、ホッとした様子の辺境伯の表情。
その後は男女二手に分かれての会談の続きと相なった。
「辺境伯様、お近づきの印に何かお困りや必要とする物はございませんか?可能な限りお答えします。」
と話を向けると、一瞬明るくなった辺境伯の顔が直ぐに難しい顔になった。
何かあるがしぃうしょう難しい問題のようだな。
「実は・・無理を承知で話をするが・・魔境側に建てている見張り台兼砦が、昨年の魔物の攻撃で大破しておりその修復が中々進まず、同じ様な魔物の攻撃に直接街が襲われる危険性があるのだ。冒険者1人が加わったからどうと言うことではないが、近々の問題でありとても重要な案件なのだ、良い案などなかろうか?」
と半分無理と承知での意見を求めると言う形の話だった。
俺は少し考えると
「砦の規模を教えてください」
「ん!規模か。兵士が100人ほど駐留できる広さで、Aランクの魔物の突進を防げるほどの城壁が必要なのだ。」
と答えると辺境伯に
「分かりました、同じ場所でよろしいならば私が建て替えてきましょう。そうですね3日ほど時間をください。」
と答えると
「へ!建て替える?3日で!申し訳ないが先程の規模の話を聞いての意見なら無理なことは答える必要はない。」
と困った子供に噛み砕くように言う辺境伯の言葉に俺は
「問題ないです。5日後には確認ができる者を向かわせてください。問題なく建て替えて見せます。」
と言い切った、流石にそこまで言われると辺境伯も
「分かった、無理をせぬように。」
と了承してくれた。
ーー 砦の建て替え
話をした次の日俺は1人で魔境に向かっていた。
コロネ達は未だに辺境伯夫人に捕まっているようで、しばらく時間がかかるようだ。
森から300mほどの地点に砦であった物の残骸が残っていた。
「かなり大型の魔物が襲ったようだな、それに耐えうる城壁と高さか。」
と独り言を言いながら俺は残骸を収納し更地になった場所に立つと、設計図を見ながら創造魔法で改良した土魔法を発動した。
「コンストラクション!」
目の前の地面が周辺の土をかき集める形で大きな塊になると、建物の姿を形造り始めた。
地下の倉庫兼シェルターを備えた高さ30mにもなる城壁を備えた砦というよりも城が完成した。
仲の間取りは事前に辺境伯のできる部下さんに聞いてからの設計なので問題はないだろう。
広さも以前の3倍は裕にある。
中庭に井戸を掘り飲水の確保、外側にも深堀を掘り容易に城壁に近でけないようした。
予想以上に早く完成したため、魔境で魔物を狩りながら辺境伯の到着を待った。
ーー 辺境伯 side
夕食会の際、セブン殿が
「砦を建て替えます、3日ください。」
と言う言葉に信じられない思いで許可を出したが・・・まず無理であろうな。
私は今まで5度再建を計画したが頓挫した、魔境対策用の砦の再建を思い出していた。
「辺境伯様、お約束の日時です。ダメ元でも向かって確認いたしましょう。」
と言う部下の声に力無く頷き、馬車の人となった。
街から馬車でほぼ1日かかる魔境の砦が見えてきた時に自分の目が信じられなかった。
「なんだあれは!城ではないか?まさか・・あれを建て替えたと言うのか!」
信じられぬ思いで砦であったものに近づくと、高さ30mはあろうと思われる城壁の上から声が聞こえてきた。
「お待ちしていました。どうぞそのまま場内にお入りください。」
と言うセブン殿の声だった。
中に入ってさらに驚いた、以前よりはるかに広くなった砦いや城の大きさに見違えるほどの建物が建っていた。
「中も確認してください、今宵はここで休んで頂きますので。食料は問題ありません、魔物を狩って備蓄しておりますので。」
と言うセブン殿の声が半分しか耳に入らなかった。
言われるままに建物の中を確認する私と部下達。
「・・・これはもう・・なにも言えんな。これで我が辺境伯領は100年は安泰だと私は思う。」
と言う言葉に部下も頷くのみ。
その夜はここで風呂か!と言うほどの大浴場にある湯船に皆と浸かりながらセブン殿に尋ねた。
「これを貴方1人でこの短期間で作り上げたと言うのですね。その力は王国にとって脅威ともなります、ここだけの話に留めておきましょう。」
「ああそうですね、敵陣にあっという間にこのような城をつくられたら・・勝負になりませんね。分かりました辺境伯様の思うままに。」
と答えてその後は魔物料理に皆で舌鼓を打った。
私は、大変な人物と懇意になったものだ。これは内密で陛下に報告しておこう、みだりに手を出さないようにと。
ーー 魔境の資源は無尽蔵?
砦を建て替える際に魔境の森の木を建築資材の一部としたが、その切り倒した後の森の木々が数日後には元に戻っていた。
「どういう理由かわからないが、森の再生力は凄いもんだ。これなら資材を取り放題だな、危険を排除できるのなら。」
と言いながら俺は、かなりの量の木材や鉱物資源を掘り出し収納していた。
辺境伯らと共に街に帰ると俺は、広い空き地に収納していた資材などを山のように積み上げた。
「セブン殿これは・・魔境の資源ですかな。」
辺境伯の言葉に
「そうです、無尽蔵にある資源です。これを定期的にここに持ってきますので、辺境伯家の防衛資金としてください。」
「なんと!どうしてそこまでしてくださるので?」
「いやー。私が住む街の領主様に税の代わりに納めて私の自由を勝ち取るためですので、気にしないでください。」
というと
「貴殿の頼みであれば、可能な限り認めると約束しよう。」
と言ってくれた辺境伯に俺は、固く握手をして自宅へ戻った。
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