第6話 夕食会

俺たち4人(匹)は、オシャレをして迎えに来た馬車に乗り込んだ。

俺の考えはこうだ

・我々のオシャレで斬新なデザインのドレスやフォーマルな服の宣伝と貴族への売り込み

・俺が栽培している香辛料類の大々的な栽培と販売を辺境伯に丸投げする

・便利魔道具を売り込み高位貴族の顔つなぎを果たす

というものだった。


辺境伯の屋敷についた途端その作戦の一つが女性らの心に火をつけた。

「まーなんて素敵なドレスですこと。」

「お母様、あの髪飾りや胸持ちや腕に付けておられる宝石やカメオは見た事がないほど見事です。」

と辺境伯の妻と娘が目ざとく見つけたようだ。


「ご招待ありがたくこうしてまかり越しました。」

と辺境伯と思われる紳士に声をかけながら頭を下げると

「気を使うことはない、私が当屋敷の当主アルフレッド=タイガードだ。今日は気楽に食事をしたいと誘ったので、気を楽にしてくれたまえ。」

と気さくに話しかけて来た、『意外といい人?』


その後はリビングで軽くお茶をしながら自己紹介とお土産を渡したりしながら時間を過ごしていたが、シルクという辺境伯の娘が我慢できなくなったようでコロネ達に

「教えてください、その艶やかな髪や透き通るようなお肌は・・作られたものですかそれとも個性でしょうか?」

俺の作ったシャンプーとリンスで潤いと艶を与えた髪が気になるようだ、化粧水や保湿剤も使った肌も相当気になっている様子そこで

「お嬢様、もしよろしければ彼女らが使っているこれをお持ちしました。別室で使い方などお聞きして試してみてはどうでしょうか?」

と箱詰めの商品を見せながらムラサキに手渡して別室に誘わせた。

するとレシレート夫人も共に化粧室にでも向かったようだ。


「済まないね、女という生き物は美に関して貪欲なようで。」

「いえお構いなく、当然のお話です。そのために準備して来ておりましたので。」

と言いながら俺は辺境伯に二つの長い箱型のお土産を差し出した。

「これは何かね?」

「辺境伯様は魔物狩りに心血を注いでおられるご様子、少しでもそれが楽になればと私が鍛えました剣をお土産にお持ちしました。」

というと「何本当か」とすぐに箱を開け始めた。

「これは!まさか・・魔剣なのか?それも2本。」

「これが魔剣かと問われても私にはお答えできません。私は魔剣を見た事がありませんので。」

と言いながら一つずつ説明をする

「こちらの青みかかった剣は、氷の属性を持つ剣で魔力を流すと斬りつけた相手に氷属性の魔法攻撃を同時に行います。」

「何!氷属性とな。」

「はい、それとこちらの赤い剣は、炎の属性を持ち炎の斬撃を飛ばす事ができます。」

「炎の斬撃・・魔剣以外の何者でもないな。しかしこれほどの剣を2本も私に・・・何か必要な物があるのか?」

「はいございます。」

「そうであろう、これほどの物王国の宝物庫にも無いであろう。それで何が欲しい?」

「はい、私が今しております香辛料類の栽培と販売を辺境伯様の手で大々的に行なって欲しいのです。」

というと「はあ」という顔で俺を見る辺境伯。

「今の話は、お主の稼ぎをそのままこの私に譲ると言っているように聞こえるが?」

「その通りでございます。私は冒険者であって農家でも商人でもありません。自分の自由を縛ることは可能な限り人にやってもらいたいのです。」

「なるほど・・、自由が欲しいか。分かった後で部下に話を通しておこう。」

ということで特に問題なく俺の作戦は思い通りになった。



ーー 美と甘味の魅力



髪と肌を磨き生まれ変わったよう若々しくかつ美しく生まれ変わった辺境伯母娘が、衣装を変えて戻って来たのは約2時間度後のことだった。


「おおこれは・・・」

言葉を失う辺境伯。

「お父様でうですか?美しくなったでしょ?お母様も私のお姉さまと言っても誰も疑いませんわ。」

というシルク嬢の言葉の通り、磨きをかけた彼女らは大変美しく若々しかった。

「セブン殿、この商品を我が家に常備させてくれぬか?」

大いに感動した辺境伯がそういうのに俺は

「先程お話ししたようにこれもその商品の一部でございます。外に売るも特定の者だけに売るも全て辺境伯様の考え一つです。」

と答えれば

「なんと!そうであったか。分かった、これより我がタイガード家は、冒険者セブン殿の後ろ盾となろう。


目的の半分がなった瞬間だった。


その後夕食会となり、場所を移す。

テーブルの上には、この地のご馳走と言える物が並んでいるようだ。

『かなりの厚遇だな』と思いつつ俺は、そこに幾つかのアイテムを差し出す。

「これは私は作りし甘味であります。お試ししていただけると助かります。」

と言いながら

・いちごのショートケーキ

・シュークリーム

・プリン

を並べると

「可愛くてそれでいて美しい甘味ですね、どうやって食するのですか?」

シルク嬢が聞いてきた。


「それでは三種類取り皿にお取りしてお持ちします。」

と言いながら俺は、準備していた陶器の白磁器の皿に取り分けると、金属のスプーンやホークを添えてシルク嬢とレシレート夫人の前に運んだ。

「これはいちごのショートケーキと言います、ホークで切りながら刺してお食べください。こちらがプリンでして・・・。」

と一つ一つ説明しながらコロネに見本を見させた。


「わー!とても甘くて美味しでございますわ。」

一口ごとに感動を表すシルク嬢。

それを目を細めて辺境伯、家族仲のいいようだ。


その後は持ち込んだ香辛料を料理に加えながら楽しいひと時を過ごした。

その後は二手に分かれての会談、当然俺の方は商売の話だ。

使者として家に来たあの者が、

「私が代理として話を承ります。」

とトントン拍子に話が進み2時間ほどでほぼ問題なく俺の煩わしい仕事は、辺境伯のお仕事となった。

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