第29話 キラキラだねぇ

 食事を済ませたあとは展望台にでもと思っていたのだが、まだ時間じゃないと銀髪にわけのわからない返事をされてしまったので、塔に隣接している商業エリアを見に行くことにした。


 たしか五十嵐さんと来たときは、帽子などを見たっけな……あの店はまだ残っているのだろうか。


集塵しゅじん、見て! あのアクセサリー可愛すぎる」


 銀髪の指さす方向にはキラキラとしたアクセサリーが店前に並ぶ雑貨屋があった。


 アクセサリーの他にも、ちょっとした生活用品などが置かれているみたい。


 まぁ、雑貨屋だし当たり前なんだけど……。


「お前、ああいうのにも興味あったんだな」


「当たり前でしょ。さらっと失礼なこと言わないでよ」


 ふむ。銀髪も女の子なんだなぁ……よくよく考えてみたらコイツお姫様なんだっけ? 故郷の星では、どんな姿をしていたのだろう。


 店に近づくと、銀髪はスワロフスキーが埋め込まれている指輪を手に取り、目を輝かせながらまじまじと眺めている。


「集塵、キラキラだぁ」


「そうだな」


「キラキラだねぇ」


「そうだねぇ」


「ずっと見ていられるね」


「そうだな」


「ずっと見ていたいなぁ、どうしたら叶うのかなぁ」


「どうだろうな」


「ずっと見ていられるね」


「そうだな……って、お前、この会話をいつまで続けるつもりだよ」


 銀髪はじーっと、その指輪から目を離さない。ようは欲しくて仕方がないってことか。


 うーん。仕方ねーなぁ……少し高いけど、折角のお出かけだし買ってやるか。


 展望台の入場料を差し引いても予算的には問題ないだろう。


「ほんとか!」

 

「まだ、何も言ってねーからな」


「にひひ」



「見ろ、集塵! 可愛いだろ!」


「あぁ、可愛いな。でも、本当に良かったのか?」


「おう! これで満足だ!」


 銀髪は指輪をチェーンに通してネックレスに生まれ変わったそれを掲げる。


 購入前に指輪を試しにめてはみたものの、指が細すぎるせいでサイズが合わなかった。


 結果、店員さんのオススメで別売りのチェーンに指輪を通し、ネックレスとして使用することにしたというわけだ。


 おかげで余計な出費が、かかってしまったけれど、銀髪は満足しているようなので良しとしよう。


「集塵、コレつけてよ」


 銀髪はそう言うと指輪付きのネックレスを差し出す。


「ん? あぁ、いいぜ」


 彼女は背中を向けて銀色の髪をかきあげると、ネックレスをつけやすいようにうなじを見せた。


 その仕草にちょっとドキっとしながらも俺はネックレスをつけてあげる。


「ほら、つけたぞ」


「うん! ありがとう、集塵」


 振り向きながら見せる満面の笑みは、買ってあげて良かったと心の底から思わせてくれた。


「その、なんだ……そろそろ展望台に行ってみるか? カタちゃんが帰ってくる前には家に戻らないとだしな」


「そう……だね」


 ――ん? 気のせいかさっきまでと違って歯切れが悪いな……急にどうしたんだろう。



※次回、最終回、第30話は12月3日(日曜)19時6分の公開となります。

引き続きカタちゃんと銀髪ちゃんを楽しんでいただけましたら幸いです。

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