第27話 みんなと一緒に

「呼んだか集塵」


 俺を呼ぶ声。振り向くと、そこには――。


「カタちゃん⁉︎ なんで銀髪と……え? あれ? なんで?」


「にひひ。カタと帰り道であった」


「いやいや、俺ずっとカタちゃんを追いかけて走ってきたけど、どこにも見当たらなかったぞ」


「それはあれですね、集塵さんが追いかけてくると思っていたので、私すぐに物陰へと隠れましたから」


 銀髪の隣に立つカタちゃんは澄ました顔で言った。


 俺が自宅に到着してからたいして時間も経ってはいない。さては銀髪のタイツの力で移動してきたな……。


「隠れるって、なんでそんなことしてるんだよ」


「集塵さんが悪いんですよ! 私の気持ち……な、なんでもないです! とにかく少し意地悪したくなったんです」


 おいおい、なんだよそれ。人が心配して追いかけたと言うのに……五十嵐ごじゅうあらしさんといい……って、そうだ! カタちゃんが見つかったのなら、急いで五十嵐さんを探さないと!


「それより、二人とも五十嵐さんを見かけなかったか? メモを置いて部屋を出ていってしまったんだ」


「嵐ちゃんですか? それなら、そこにいるじゃないですか?」


「ハロハロぉー、あたしはここよぉ♡」


 カタちゃんの人差し指が俺の方へ向けられ、俺の背後から声がしてきた。この声は間違いなく彼女だ。


「五十嵐さん!」


 振り返ると、そこには胸元で小さく手を振って立つ五十嵐さんの姿があった。


「へ? あれ? 外にいったんじゃ。なんでいるの?」


「なんでいるのって、失礼ね……みんな行っちゃうし、一人で退屈していたから集塵くんにイタズラしたくなっちゃったのよ。だから、驚かそうと思ってカタの部屋のクローゼットに隠れていたの、びっくりした?」


「あのなぁ……」


 たくっ、心配して損したじゃねーか。


「エヘヘ。ごめんね」


 俺は二人の元気そうな姿を見たら、なんだか急に身体の力が抜けてしまい、床に座り込んでしまった。


 と、とりあえず二人とも無事で良かった。


「はぁ……ん?」


 銀髪の手に握られているのはスーパーの袋だよな……カルビ肉を買うだけなのに、なんで何袋も手にしているんだ?


 あっ! さては……。


「銀髪。余計なものは買うなと言ったよな?」


「おう! 必要なものだけを買ったぞ!」


 いや、どう見ても余計なものが入ってるじゃねーか。カルビクッキーの箱がはみ出ているぞ。


「ええー! なになに、銀髪ちゃん! 美味しいもの入ってる?」


「おう! 女! わけてやるぞ!」


「あっ! 私も見たいです!」


 カタちゃんと五十嵐さんは銀髪の側へ走り寄ると、スーパーの袋をガサガサとあさりはじめた。


「お前らなぁ……」


「そのカルビクッキーは、わたしのだぞ!」


「あー! ねこじょのオマケつきー! 懐かしい! このキャラクターまだ人気あるのね。あたしはこれ貰うわ」


「私はピザパンがいいです!」


 そういえばカタちゃんはピザパンが好きだったな……ねこじょの商品もまだ人気があったとは驚きだ。


 まあ……言いたいことは山ほどあるが、みんな楽しそうだし、今まで色々と困らせてしまってもいるしな。今回の買い物に関しては大目にみてやるか……。


「銀髪。俺にも何かくれよな」


「おう!」


 ――俺はみんなと一緒に銀髪が買い物をしてきた商品を手に取った。



※次回、第28話は11月19日(日曜)19時6分の公開となります。

引き続きカタちゃんと銀髪ちゃんを楽しんでいただけましたら幸いです。

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