第26話 全力の全力の全力
カタちゃんは自宅マンションの方向へと走っていったから、このまま道なりに走れば直ぐに追いつけるだろう。
しかしまいったなぁ……あれは、なんていうか、そういうことだよな。
流石の俺でもいい加減に気がつく。カタちゃんは俺のことを……。
「ハァ、ハァ……そろそろ、見えてきても、ハァ、ハァ……」
お、おかしい……特殊タイツを着た銀髪ならともかく、カタちゃん足そんなに速かったっけ?
こうなったら仕方がない、アキレス腱が心配だけど、全力の全力の全力で走るぞ!
「うおぉぉぉぉっ!」
◇
ゼェゼェ……。
「や、やばい……もう、限界……つうか、もうマンションについてしまった」
嘘だろ……カタちゃんもう到着しているってこと?
俺は震える足を引きずり、自宅マンションのドアをあけて中に入る。
「カ、カタちゃん」
――ん?
反応がないな……気のせいか人の気配を全く感じないんだが。
そのままリビングに進むと、テーブルの上にはノートの切れ端に書かれた俺宛てのメッセージが残されていた。
突然いなくなってゴメン。雨も止んだみたいだし、あたしはホテルに泊まることにするね。カルビ美味しかったよぉ。エヘヘ♡
PS.カタのことよろしくね。
「まったく……人のノートを勝手に破くなよ……」
というか、鍵を開けたままにしないでくれ。泥棒が入ったらどうするんだ……って、まてよ? カタちゃんが鍵を閉め忘れた可能性もあるよな……自分の部屋にいるのか?
俺は念のためドアを軽くノックしたあと、カタちゃんの部屋に足を踏み入れたが、中を見渡すかぎり姿は見当たらない。
トイレにも風呂にも入っている感じはしなかったし……。
もしかしてカタちゃん戻っていないのか? よく考えたら家の鍵を持って出ていかなかったような……財布すら持っていなかったもんな。
それなら何処にいるんだ。ここまで来るのに見かけることは無かったぞ。
五十嵐さんも、こんな遅い時間から外に出て……まだ電車だって動いていないだろうに。
せめて銀髪が、今もどってきてくれたら、二手に別れてカタちゃんと五十嵐さんを探すことが出来るのに。
「ったく! どうしたらいいんだよっ! 早く戻ってきてくれ! 銀髪っ!」
※次回、第27話は11月12日(日曜)19時6分の公開となります。
引き続きカタちゃんと銀髪ちゃんを楽しんでいただけましたら幸いです。
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