第25話 カタちゃんの勘違い

 どう思っている? って、銀髪まで何を言い出しているんだ。どうもこうも俺は銀髪のことを……あれ? どう思っているんだろう……。


 コインランドリーで初めて会ったときは、奇妙な奴で、かかわりたくないと思っていたけれど、長いこと一緒に生活しているなかで、銀髪がいない生活は考えられなくなっていった。


 だから、銀髪が身体を治して彼女の星から戻って来たときは本当に嬉しかったんだ。


集塵しゅじん?」


「え? ああ、悪い。えーと、なんだっけ?」


「ええぇ……聞いてなかったの?」


「いや、聞いてはいたが……えーと、俺が銀髪のことをどう思っているかだろ?」


「うんうん」


 銀髪は首を縦にコクコクとして見せた。


 うーん。そもそも、これってどういう意図で訊いているんだ……公園での五十嵐ごじゅうあらしさんの件や、カタちゃんのこともあったから、色々と余計なことを考えてしまうな。


 と、とりあえず此処は無難に返事をしておこう。現状では、それが一番の選択のはずだ。


「その、なんだ。勿論、カタちゃんと同じように銀髪のこと好きだぜ」


「集塵さんっ! それってどういう!」


 ん? この声……。


 明らかに銀髪の声とは違う……それは……。


「カタちゃん!」


 振り返ると、カタちゃんがスーパーの入り口に立っていた。


「あれ? 中に入っていたんじゃ……」


「集塵さんがいつまでたっても入ってこないから、心配になって戻ってきたんです!」


 な、なるほど……立ち話が過ぎたか……。


「それより集塵さん。銀髪ちゃんのこと……好きなんですか?」


「え? えぇぇぇぇ! いやいや、好きって、そういう意味じゃ!」


「そういう意味ってなんですか! 今、告白してましたよね!」


「告白ぅ⁉︎ 」


 もしかしてカタちゃんは俺が銀髪に伝えた最後の好きという言葉しか聞こえていなかったんじゃ……なんというタイミングの悪さだ。


 これは絶対に勘違いをしているよな。なんとかしなくては。


「違うんだカタちゃん。それは、その、告白の好きじゃないんだよ」


「なんですかそれ……つまり銀髪ちゃんをもて遊んでいるってことですか?」


「いやいやいや、なんでそうなるんだ。とりあえず、きちんと話すからちょっと冷静になってくれ」


「私は冷静です!」


 これは駄目だ……今のカタちゃんは冷静ではない。どうすれば……あっ! そうか! 銀髪に説明してもらえば……きっと、今も俺の心を読んでいるはず。


 早速、銀髪にアイコンタクトを送ってみる。


「わかった」


 銀髪は、そう言うとペタペタと歩きだし、カタちゃんの前に立った。


 良かった……やはり俺の心を読んでいたな。頼んだぞ銀髪! 


「カタ。わたしは集塵に、わたしのことが好きか訊いただけだ」


 ん? なんか誤解を生むような言い方をしていないか? ああぁぁぁ! カタちゃんの身体が震えてるじゃねーか! や、やばい……。


「カタちゃん! ちょっとまって!」


「もう……知りませんっ! 集塵さんなんてカルビ肉に呪われて超爆裂砲撃メガズドンされてしまえばいいんですっ! 集塵功しゅじんこうのバカー!」


 カタちゃんは俺の顔を睨むような目つきで、訳のわからないことを叫び、スーパーとは反対の方へと走っていってしまった。


「カタちゃん!」


 ちょっ! 買い物はどうするんだよ! とはいえ、カタちゃんを放っておく訳にもいかない。


 辺りは暗いし女の子を一人で歩かせるのも危険だもんな……こうなったら仕方がない。


「銀髪。お前に財布を渡しておくからスーパーでカルビ肉を買っておいてくれ。俺はカタちゃんを追いかけるから」


「おう! まかせろ!」


 返事に迷いがないところが若干不安ではあるが、ここは信用するしかないな。とりあえず余計なものは買わないように釘をさしておくか。


「心配するな集塵。余計なものは買わないから」


「あっ……お前、本当、いつも俺の心を読んでるよな」


「イヒヒ」


「たくっ、じゃあ、まかせたぞ!」


「まかされた!」


 ――全力で走れば、まだ追いつくだろう。俺のアキレス腱、大丈夫かなぁ……。



※次回、第26話は二週間後の11月5日(日曜)19時6分の公開となります。

申し訳ありませんm(_ _)m

引き続きカタちゃんと銀髪ちゃんを楽しんでいただけましたら幸いです。

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