第23話 嫌いじゃないですよ
外へ出るとすっかり雨は止んでいたので、手にした傘を玄関に戻し、カタちゃんと一緒にスーパーへと向かうことにした。
「あの……
「ん?」
しばらく無言で歩いていると、カタちゃんが声をかけてきた。
「その……リビングで
あ、あぁ……俺のことがどうこう言ってた話か……これ、どう返していいか悩むし、なんだか気まずい。とりあえず余計なことは言わないでおこう。
「うん。わかったよ」
「はい……」
カタちゃんの横顔を確認すると、少しだけ落ち込んだような表情をしているように見えた。なにかもっと別の反応をしてあげたほうが良かったのだろうか。
「あっ、でもでも、集塵さんのことが嫌いとかじゃないですよ! あの、えーと、いつもお世話になっていますし、嫌いじゃないです」
あー、裏を返すと好きとなるが、恋愛のそれとは違うということか。そう考えると少し淋しい気もする。
「ハハハ、そっか。ありがとう」
「なんで笑うんですかぁ、日頃の感謝を込めているんですよ!」
「ごめんごめん。そう言ってもらえて嬉しいよ」
「わ、わかってくれればいいですけどぉ!」
顔を真っ赤にしながら、まるでいいわけでもするかのように必死に話してくる彼女を見ていたら、どこか愛おしく感じてしまった。
でも、まあ、恋愛のそれとは勿論ちがう……俺にとってのカタちゃんは妹みたいなものだし。
「あ! スーパー見えてきましたね! お菓子買ってもいいですか?」
「ん? 別に好きなの買えばいいだろ。自分の買い物なんだし、小遣いの範囲で自由にしたら?」
「え? なにを言っているのですか? お財布なんて持ってきていませんよ。急だったし」
いや、それ絶対に最初から俺に買わせる気だっただろ。その証拠に目が笑っているぞ……まったく、仕方ねーなぁ……。
「そんなに沢山はダメだぞ。俺は別に売れっ子イラストレーターとかじゃないんだからな」
「早く売れっ子になって下さいよ。そうじゃないと生活が苦しいじゃないですか」
「いや……いずれは君も社会に出て働くんだよ?」
「あはは。それじゃあ集塵さんと結婚しようかなぁ、ほら、そうなれば働かなくていいですし!」
カタちゃんは少し照れたようにそう言うと、一人走ってスーパーの中へと入っていってしまった。
――うーん。カタちゃんがなにを考えているのか、さっぱりわからない……。
※次回、第24話は10月15日(日曜)19時6分の公開となります。引き続きカタちゃんと銀髪ちゃんを楽しんでいただけましたら幸いです。
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