第20話 白いシャツと五十嵐さん
「ふぅー、スッキリしたぁ。
今、目の前には、すらりとした生足をあらわにした美少女が白いシャツを羽織って立っている。
これが高校生であったころの俺であれば、動揺が隠せなかったかもしれないが、二十歳を過ぎた現在なら、それを勘づかれることもないだろう。
「ちょっと集塵くん、目が泳いでいて気持ち悪いんだけど……」
「う、うるさい……」
おかしい……ど、動揺なんてしていないぞ!
からかうような笑みを浮かべながら話す彼女を見ていると、公園での出来事に少し後悔を感じた……俺はまだ彼女のことが好き……いや、それはない、と思う……。
ないよな?
それにしても、事故で電車が止まっているとニュースで聞いた瞬間から嫌な予感はしていたが、やはり
雨で濡れた彼女を放っておくわけにもいかなくて、咄嗟に部屋へあげてしまったけれど、このまま泊める感じになるだろうな……。
五十嵐さんを泊めるなら外出でもしてと思っていたが、外は雨だし、電車は止まっているしで外出は厳しそうだ。
まあ、そんなことを考える前にやることがあるか。
彼女はあれから食事をとる時間もなかっただろうから、お腹を空かしているに違いない……なにか用意してあげたほうがいいよな。
たしか、まだカルビが残っていたはず。
「五十嵐さん、夕飯まだだろ? ありものでよければ用意するけど、食べるか?」
「うわぁ、助かるー! もうお腹ぺこぺこなのよね。エヘヘ」
「
「なによ。別にいいでしょ?」
「全然よくないです! だいたい着替えくらいもってきているはずじゃないですか!」
「もっていたら借りていないわよ。ホテルに泊まるつもりだったし、備えつけのパジャマ使う予定だったから」
五十嵐さんは、頬を膨らませながら話すカタちゃんに向かって偉そうに腕を組みながら言った。
「むー! 嵐ちゃんのそう言うところが昔から嫌いなんですよ!」
「えー! なんでよ! あたし、なにか悪いことした? そんな悲しいこと言わないでよぉ」
なんだか喧嘩でも始まりそうな雰囲気だな。まったくこの姉妹ときたら……とりあえず話題を変えたほうがよさそうだ。
「カタちゃん。そういえば銀髪が見当たらないけど、あいつどこいったんだ?」
「え? 銀髪ちゃんなら夕食のあとに眠いって言ってベッドで寝ていますよ」
「だから見当たらなかったのか」
食ったらすぐに寝るなよな……。
「え? 銀髪ちゃんいるの! あっちの部屋?」
五十嵐さんはそう言うと奥の部屋へと向かっていく。
「ちょっと! 嵐ちゃん! 勝手に私の部屋に入らないで下さい!」
「え? いいじゃない。今日はカタたちの部屋に泊まることになりそうだし。そうよね? 集塵くん」
「ま、まあ、そうだな……カタちゃんそういうことだから部屋に入れてあげてくれ」
「むー」
俺の言葉にたいして、カタちゃんはムスっとした表情を見せると部屋のドアを嫌そうに開けた。
「エヘヘ。ありがとう」
五十嵐さんは、一言、カタちゃんにお礼を言うと部屋へと入っていく。
「銀髪ちゃーん!」
おいおい、銀髪は寝ているんだよな……起こすなよ……。
ん? あれ? 五十嵐さんが戻ってきた……。
「集塵くん……」
「どうしたんだよ」
「銀髪ちゃん、いないけど?」
「へ?」
カタちゃんは俺に向かって首をブンブンと左右に振っている。
――今度は銀髪か……いったいどこに行ったんだよ……。
※次回、第21話は9月24日(日曜)19時6分の公開となります。引き続きカタちゃんと銀髪ちゃんを楽しんでいただけましたら幸いです。
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