第19話 雨が降って

「「「いただきます!」」」


 五十嵐ごじゅうあらしさんと公園で別れたあと、銀髪と一緒に自宅マンションへと戻り、俺は三人分の牛カルビ丼を作った。


 カタちゃんと銀髪は目の前で、それを美味しそうに食べている。俺も冷める前に食べてしまうか……。


「うん。美味い……」


 われながら、プロ級の味付けだな……これ、お店とか開けるんじゃないか?


集塵しゅじんさん、たしかに美味しいですけど、たまには味付けを変えて下さい。いい加減飽きてきました」


「そうだそうだ!」


 カタちゃんに続いて銀髪までもケチをつけてくるとは……。


「はいはい……次はバナナ味にでもしてみるよ」


「「えー!」」


 それにしても五十嵐さんがうちに来ると言い出したときには、どうしようかと思ったけれど、結局、彼女は宿を予約していたんだな。


 まあ、あたりまえか……なんで最初、うちに泊まるなんてウソをついたんだろう?


「そうだ! テレビ! あれ? 集塵さんリモコンどこですか?」


 カタちゃんは、ほっぺにご飯粒をつけながら声をかけてきた。


「俺は知らねーぞ。それよりどうやったら、そんなところにご飯粒をつけられるんだよ」


「カタ! リモコンならわたしが持ってるぞ!」


 銀髪はそう言うと全身タイツの首元からテレビのリモコンを取り出した。


「あ! 早く返してください! もうすぐ番組が始まっちゃう!」


「返すもなにも、そのリモコンは俺の所有物なんだけど……」


「電源オン!」


「無視なのかよ……」


 カタちゃんがリモコンのボタンを押すとテレビの画面がついた。まだ目的の番組は始まっていないようだ。ニュースが流れている。


 ―― の影響で運転を見合わせています。なお、復旧の見込みは ――


 ん?


「わわわ、これじゃあ、白倉駅も電車止まっちゃってますね。そういえば嵐ちゃん、今夜はどこに泊まるのかなぁ……集塵さんは聞いてますか?」


「いや、聞いていないけど……」


 まてよ……ニュースによると、電車は今から二時間前には止まってしまっている。この辺はホテルなんてものはないし、駅にはタクシー乗り場もないから捕まえるのも難しい。


 彼女の行き場がない……。


「ふ、二人とも、すまないけど留守番しててくれ。俺はちょっと外に出てくる」


「おう! カタと待ってるから大丈夫だぞ!」


 銀髪は俺の心をタイツの力で読んだのか、察したような表情を見せて言った。


「それじゃあ、行ってくる!」


 一言だけ告げて部屋を出ると、いつのまにか外は雨が降っていた。俺は玄関に置いてある傘を手にして再び外へ出ると――。


「エヘヘ……来ちゃった……」


 ―― そこには、雨でずぶ濡れになった五十嵐さんの姿があった……。



※次回、第20話は9月17日(日曜)19時6分の公開となります。引き続きカタちゃんと銀髪ちゃんを楽しんでいただけましたら幸いです。

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