第18話 返事をきかせて
街灯の灯りに照らされた彼女は、俺の目をじっと見つめたまま動かない。
突然の告白……まさか、こんなことになるだなんて、想像すらしていなかったから頭の中がまっしろだ。
返事……返事か……そうだよな、俺は五十嵐さんのことが好き……好きだ……った……けれど、いま俺の心にいるのは……。
彼女、じゃない……ような気がする。
「あ……あの……」
「うん……」
ダメだ……うまい言葉が出てこない。なんて言えばいいんだ。髪の毛は長いほうが好きですとか言えばいいのか?
いや……。
そうじゃねーな。髪は放っておけば伸びるし……しかも短めの五十嵐さんも、めっちゃ可愛い。
いやいや、なにを考えているんだ俺は……そうだ……ここは男らしくシンプルにハッキリと伝えないと。
「
しまった……沈黙がすぎたようだ。
「五十嵐さん。俺は……」
伝えなきゃ……。
「まって!」
「え?」
ちょっ!
「やっぱり、いい! 返事はまだ聞きたくない!」
「ちょっとまってくれ、今ようやく覚悟を決めたのに」
「だから、だよ……なんだか集塵くんの表情みていたら、わかっちゃったんだ。だから聞きたくないよ」
彼女はそう言うとブランコから立ち上がり、背を向けた。微かに身体が震えているように感じるのは俺の気のせいだろうか……。
泣いているのか?
「ごめん……五十嵐さん」
「そろそろ行くね」
「行くって……どこに?」
行くねって……この空気のまま俺の部屋に来るっていうのか? いやいや、なんかの罰ゲームかよ! 銀髪たちがいるとはいえ精神的につらすぎる。
でも、夜に宿もない女の子を放っておくことは出来ないよな……三人で部屋を使ってもらって、俺一人どこかのカラオケルームにでも泊まろうか……。
「集塵!」
「「⁉︎」」
この声……。
「銀髪っ!」
声のほうへと振り向くと、そこには白い全身タイツ姿の銀髪が公園の入り口に立っていた。
「銀髪ちゃん⁉︎」
五十嵐さんの驚きの声が背後から聞こえてきた。
「集塵! もうお腹ぺこぺこだよ! カタはもう戻ってきているのに!」
「ハハ……」
銀髪がこちらに向かって走ってきたかと思うと、五十嵐さんが俺を横切り銀髪のほうへと飛び出していった。
「銀髪ちゃーん! 久しぶりだねぇ!」
「わわっ! だれだこの女! 離せ!」
五十嵐さんは声をあげながら銀髪を抱きしめた。
銀髪は彼女のことが、まだ誰かわかっていないようで、必死に逃れようとバタバタしている。
「銀髪、五十嵐さんだぞ。覚えているだろ?」
俺の声が届いたのか、暴れていたのが瞬時に大人しくなった。
「お? おおおっ! 女! 久しぶりだー! 雰囲気変わってて気がつかなかった!」
「エヘヘ……」
やれやれ……五十嵐さんのこと、本当に気がついていなかったんだな。
「集塵! 早く戻って夕食を食べよう! 女も来い!」
銀髪はそう言って五十嵐さんの袖口を掴んでひっぱる。もう陽も落ちてしまったし、ここはとりあえず言う通り家に戻るとするか……夕飯を食べたあとにでも俺は適当なことを言って出かければいいだろう。
「よし! 帰ってカルビ焼くか。五十嵐さんもそれでいいよな」
俺はそう彼女に伝え公園の外に出ようとするが、五十嵐さんはその場を動こうとしなかった。
「どうしたんだよ、いこうぜ」
「あたしはいいよ。ここでバイバイするね」
「え? いや、だって泊まるとこないんだろ?」
「あれ、ウソだから……」
「へ? ウソ?」
――彼女はニコっと微笑むと俺と銀髪に軽く手を振り公園を出ていってしまった……。
※次回、第19話は9月10日(日曜)19時6分の公開となります。引き続きカタちゃんと銀髪ちゃんを楽しんでいただけましたら幸いです。
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