第14話 嘘じゃないです!
カタちゃんは銀髪の一言に動揺が隠せないでいる。
えーと、話の内容を整理すると、カタちゃんはスマホの暗証番号を銀髪に押されたくはない。
そして、その数字は俺に関係している。
まあ、普通に考えたら勝手にスマホのロックを解除されるのは誰でも嫌だけど……。
問題は気になる数字のキーワードがあることだ。
思いつくのは俺の誕生日と同じなことくらいだが……。
うーん。正直、俺はどうでもいいんだよなぁ……とはいえ、なにか気まずい空気が流れてもいるし、ここはなんとかしたいところだ。
「変えます……」
場の空気を変える為に、カルビ丼のアレンジメニューでも発表しようと思っていると、カタちゃんは突然口を開いた。
「え? 何を?」
「ですから、暗証番号です。そもそもこの番号に拘る必要なんてないんですよね」
「まぁ……よくわからないけど、いいんじゃない? 番号を他人に知られているのもどうかと思うしな」
もっとも、銀髪の手にかかれば心を読む力を使われて何百回変えようと、すぐに知られてしまうだろうけど。
その辺に関しては銀髪に厳しく言っておかないと駄目だな。
今回のことに関してはカタちゃんはただの被害者だし、どんなに仲が良くても踏み込んではいけない領域はある。
わかったか? 銀髪。
「う、うぅ……わかった」
やはり俺の心を読んでいたか……今の返事が証拠だよな。
「でも……カタ、本当に番号変えていいの? その番号はお気に入りなんでしょ?」
銀髪が続けて言った。
いやいや、そもそもお前が原因じゃないか……。
「え? 何を言ってるんですか! そもそも銀髪ちゃんが悪いんだよ!」
カタちゃんの言うとおりすぎて何もいえない。
「そ、そうだけど! カタがその数字が好きなのもわかるから……」
「またゲームをしたいだけじゃないのか?」
「
「へーい」
なんか知らんが怒られてしまった。
「べ、別に好きとかじゃないですよ……」
カタちゃんはポツリと呟くように言った。
「嘘だ!」
銀髪はカタちゃんの一言が気に食わなかったのか叫ぶように声を上げる。
「嘘じゃないです!」
「嘘!」
「嘘じゃないです!」
「嘘、嘘、嘘!」
「嘘じゃないです! 嘘じゃないです! 嘘じゃないです!」
「「うぅぅぅ!」」
二人はお互い睨み合って、唸るような声を出している。
これ、いつになったら終わるんだ……。
「カ、カタの嘘つきー! 集塵のことが気になってるくせにー!」
「え?」
なんだ? どういう意味だ?
「何を……」
ツーテールの彼女は身体を震わせながら、小声で呟くと、銀髪を睨みつける。
「何を言ってるんですかー! 銀髪ちゃんのばかぁー!! 絶交です! もう口なんて聞いてあげない!」
カタちゃんは声を荒げると、そのまま走って部屋を出て行ってしまった。
――勢いよく閉まる玄関ドアの音が部屋に響き渡る……。
※次回、第15話は8月6日(日曜)19時6分の公開となります。引き続きカタちゃんと銀髪ちゃんを楽しんでいただけましたら幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます