第21話 バイトを掛け持ちしようかな…?

 昨日の夜、藤原さんの部屋でサウちゃんの生配信を観た俺。

デバイスはノートパソコンなので、どうしても互いの距離は近くなり…。


彼女の顔が目の前にあったし風呂上がりの良い匂いも相まって、変な気分になってしまう。正確には、と言うべきか…。


これ以上余計なことを考えないために、生配信が終わってすぐ藤原さんの部屋を出たのだった…。



 翌日、花恋荘に来て4日目になる。荒井さんは昨日俺と会った時間と同じぐらいに管理人室に来て、菓子折りを持ってきた。


再度の謝罪の言葉に加え深々と頭を下げてきたので、この一件は水に流すことにする。程度は違えど、間違いは誰にでもあるからな。気にし過ぎるのは良くない。



 今日で、花恋荘敷地内の雑草抜きは終わりそうだ。そうなるとやることがないな…。古賀さん達がヘルプを出さないので、手が空きがちだ。


何か別のバイトを掛け持ちするのもアリだな…。とはいえ、こっちがメインだから新たに探すのはサブになるけど。



 色々時間を潰し、ようやく夕食の時間になる。この時間になるまで、履歴書に貼る写真を撮って記入したり、部屋内で筋トレや掃除をした。


他には敷地を出て、敷地を囲ってる塀周りまで掃除範囲を広げたり…。正直なところ、退屈な時間が多めだったぞ…。


掛け持ちするのは俺の自由とはいえ、勝手にやると迷惑をかけるかもしれないし、この夕食中に話しておこう。



 「皆さん。ちょっと話したいことがあるんですけど、良いですか?」

俺は3人の顔を見渡す。


「倉式君。また何かあったの?」

心配そうな顔をする古賀さん。


「悪いことって感じじゃなさそうだけど?」

金城さんの指摘に藤原さんも頷く。


「はい、悪いことじゃないです。実は俺、バイトを掛け持ちしたいと思うんですが、どうでしょう? 何か意見があれば遠慮なく言って下さい」


「倉くん。ウチらに飽きちゃったの? この浮気者~」

おふざけトーンで話す金城さん。


「ちょっと真理ちゃん。ふざけちゃダメでしょ!?」


「あはは、ゴメンゴメン。…冗談はさておき、どうして掛け持ちしたいの?」


「皆さん俺にヘルプを頼んでこないし、雑草抜きとかの掃除もあらかた済んだので退屈なんですよ。だからです」


「そうなると、倉式君に会える時間が減るわね。…寂しいわ」

古賀さんは悲しそうな顔をする。


「掛け持ちしても、こっちがメインなので安心して下さい。負担にならない程度にしますから」


“二兎を追う者は一兎をも得ず”にならないようにしないと。


「そっか…。なら昨日みたいに一緒にサウちゃんの配信が見られそう…」

そう言う藤原さんは嬉しそうだ。


「はい、大丈夫だと思いますよ」

今度一緒に観る時は、風呂上がりは勘弁してほしいけど…。


「倉式君なら、うまく掛け持ちできそうね。頑張ってちょうだい!」


「はい、ありがとうございます!」

誰も反対意見を言わなかったな。本当にありがたいよ。



 夕食が済んで全員自分の部屋に戻った後、自室でバイト先の候補を考える。


今まで年上と話す機会は皆無だったが、ここに来て古賀さん達と話すようになってからは、少し慣れてきたように感じる。


できなかったことができるようになるのは、充実感があるよな。それを軸に、考えてみるとするか。

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