酔っ払い
食卓。それは何人たりとも侵すことの許されぬ、至高にして絶対なる休息の間。
老若男女、善人悪人、果ては種族の壁など関係なく。
例え欲する物や理想の状況もわかり合えずとも、その行為自体は生きとし生けるものにとって欠かせないであろう至福の瞬間だ。
「いやー美味しいです! やっぱり
「やーねもー! 相変わらず気持ちの良いこと言ってくれるんだからー!」
なのにもう、どうしてこう喧しいことになってるんだ。
たった一人増えただけだというのに、何か普段は出てこない刺身盛りなんて置いてある。まぐろちゃんもサーモンさんも美味しいから大歓迎だけどさ。
「それですーくん? 最近はどう? 学校は楽しい? 部活は何入ったの?」
「はふはふっ、普通だよふつー。精々勉強面倒だなってくらいさ」
くぅーたまらん。あまりの美味しさに緑茶が進んでたまらないぜ。
やっぱりお米は日本男児の魂……下手に素人の料理など出さず、そっとテーブルに白米を出せば部長も認めてくれるんじゃないか?
……はあっ。そろそろ現実逃避やめようかな。いい加減前を見るときだよね。
「うまうまぁ……」
名称
レベル 75
閲覧不可
馬鹿じゃないのこのレベル。びっくり通り越して最早呆れすら湧いてきちまうよ。
何が男子三日会わざれば
……いやこの場合は違うか。
……ま、千歩譲ってようやく
それよりもだよ。目下最大の謎はこの人じゃない、
名称
レベル 200
閲覧不可
……ふむ。馬鹿じゃないの。馬鹿じゃないの!?
心の中で思わず連呼しちゃうくらい意味の分からない高レベル。週刊漫画のインフレですらこんな序盤のスパートにはついて行けねえぞこれ。……しかしふうって可愛い名前だなおい。
母さんが気にしないってことは恐らく見えていない、黒スライムと同じ類の生き物のはず。
だって母さん猫アレルギーだし。もし感知していれば、それはもうくしゃみまみれで夕食と歓談どころではないはずだ。
しかしなぁ。例えそういう系統の奴だとしても、一応配慮して連れてこないでほしい。……もしや俺が気付かなかっただけで昔からいたりすんの、こいつ?
「はあっ……」
「ん、どうしたのすーくん。お姉ちゃんがお悩み相談してあげようか?」
「何でもないよ。世の中は広いんだなって」
隣から撫で回してくる
「そういえば
「うーんお仕事だよぉ。出張で出てきたからぁ、つい寄っちゃったのぉ」
「はえー。じゃあ明日には帰るの?」
「帰らないんだなーこれが。今回はちょっと長期間なんだよねぇ」
「ま、ちゃんとホテル取ったから安心しろよ思春期ぃ! 多感な時期を邪魔したりはしないぞぉ!」
「……へい
「嫌よ。あんたに構ってくれる女なんて人生片手で足りるんだし、今が旬だと大切にしてあげなさいな」
救援の
うーん辛辣ぅ。とても多感な時期の息子への対応とは思えない、流石は俺の母親だぜ。
「ごちそうさま。ほら
「いーやー! お姉ちゃんも一緒に入るの~!」
「やだよ。今度遊んであげるからそれで勘弁して、ね?」
「え、ほんとっ! じゃあ離れてしんぜようー! ぜぇーったい約束だからねっ!」
その場凌ぎの提案に乗った
なんて無様な醜態、これが一度は憧れた大人のお姉さんの姿なのかよ。見ろっ、地面でごろごろするお猫様(怪物)も実に冷めた視線で見ちゃっているじゃないか。
懲りずにビールに手を伸ばし始めた
はあっ、まったくあの人ロリ体系のくせして無駄に破壊力あるんだもん。
自分を猫かなんかと勘違いしてやがるのか。俺が紳士でなきゃとっくのとうに性のはけ口になっていただろう。……ま、三次でリアル知人をそういう目で見るのは後が怖いので遠慮したいところだが。
畳まれた部屋着ではなく、動きやすくて汚してもいい部屋着と私服の中間みたいな扱いな服を持って風呂場へ向かう。この後ちょっとお散歩(意味浅)するからね。
ぱっぱと服を脱いで突入し、さっと汗を流してから湯に浸かって体と盛った欲望を
風呂から上がり、着替えてから喉を潤し歯を磨くべくリビングへ向かえば、そこには帰りの支度をしている
……なるほど。やはり大人のスーツ姿は良い。先ほどまでとのギャップもあって俺の癖にしっくりくるぜ。
「どうしたん? さては見惚れちゃった?」
「そうかもね。もう帰るの?」
「うん。
さっきまでへべれけ満載だった女とは思えないくらい、この世の終わりみたいな死んだ目を見せてくれる
レベルなんて清くまともな社会人やるには関係ないんだなと実感しながら、鞄を持って玄関まで付いていく。
「ありがとすーくん。今のは気遣いポイント高いよー?」
「そりゃどうも。ホテルまで送ろうか?」
「大丈夫大丈夫。お姉ちゃん強いからね。それに学生一人で帰らす方が危ないからね」
鞄を受け取った
くそぅ照れるなぁ。これじゃあ俺の方が背が高いのに未だに弟感全開じゃないか。
「じゃ、また今度ね。ああそれと、当分夜の外出は控えるんだぞっ。ちょっと物騒だからね!」
なんかどこかで聞いたような忠告を残し、手を振って家から出た
いやー久しぶりに会ったけどあの人本当に変わらないにゃあ。
「さて。俺もそろそろ行こっかな」
さくっと気持ちを切り替えながら、部屋まで戻り部屋に隠してある靴を取って窓を開ける。
正面から出ると面倒臭いし、せっかくなら
縁を掴んで屋根へと飛び乗り、靴を履いてから力を込めて跳躍する。
気分は戦場を駆ける牛若丸の八艘跳びが如く。華麗で大胆に夜を駆けていくって寸法さ。
制限時間はおおよそ二時間弱。母が皿を洗い終え風呂から出てくるまでは、何かよっぽどのことが無い限り俺の部屋を訪れはしないだろう。
さあて今宵は何匹黒スライムくんを狩ろうかな。固有の応用にも手を出したいし、ちょっと心躍っちゃうぜ。
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