第3話 金縛り

 Bの家に泊まりに行った時の話である。


 Bの家は普通の一軒家なのだが、何となく「田舎のおばあちゃん家」のような雰囲気があり、私はBの家に行くのが好きだった。 

私にとってはそんな落ち着く居心地の良い家だったが、Bの話によれば霊的現象が少なくない家だという。

何時だったか、窓ガラスの全面に男の人の顔がドアップで映っていて腰を抜かしたこともあるらしい。


 その日泊まりに行ったのは、私とHだった。

Bの家に集まったのは昼だったが、あっという間に夜になり、そろそろ寝ようということで三人並んで雑魚寝をすることになった。

部屋の電気を消して目を閉じてみたが、友人の家でお泊りという事もあってすぐには寝付けず、私とBは何だかんだとお喋りを続けていた。

Hはというと、隣からすぅすぅと息を吐く音がしていたので早々に寝てしまったようだった。


そうしてしばらくBとの会話は続いていたが、瞼も重くなり夢と現実が曖昧になりそうになった矢先。

突然Hが勢い良く飛び起き、喘ぐように空気を吸い込んだ。

一体何事だと慌てて電気点ければ、Hが必死に肩で息をしている。

そんなHに、私とBはただ首を傾げるだけだった。

その後、ようやく息の整ったHの説明によると、どうやら金縛りにあったらしい。

階段を上がってくる足音が聞こえ、それが段々と近付いて来るのに、全く身体が動かなかったと。

そして話を終えると、Hは怒ったように口を尖らせた。


「助けてって必死に声を出してたのに、何で二人とも気付かないの!」


どうやらすぅすぅという音は寝息ではなく、助けを呼ぶ声だったらしい。

正直、気付けと言う方が無理である。

そう言うと、Hはまたぷりぷりと怒っていたが。


因みにBによると、その足音は中年男性のもので、階段の途中までは上がってくるが、二階までは来ないので実害はないとの事だ。

その説明を聞いたHが、納得しかねる顔をしていたのは言うまでもない。


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