(ちょこっと短い話)新卒世代を殺す犯人たちは、会社の休憩室にいます。

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 SFな時間の中で、新卒世代を殺してストレスを発散している本当の黒幕は、誰だ?きっと、「あの方」。

 これは、新しいSFだ!

 ある場所だけ、時間の流れが、おかしいんだよ!

 「…え?」

 「あれ?」

 「何で?」

 会社のある部屋だけは、時間の流れがちがう。

 仕事をしているときに、ある一定の世代の人たちだけ、立ち上がる。持ち場を離れて、ある部屋に入っていく。

 「さあ、休もう」

 「ひひひ」

 何なんだよ?

 「あの部屋に入ると、私たちに、戻れるわねえ」

 「ああ、まったくだ」

 私たちに、戻れる?

 時間旅行を、しているのか?

 SF話は、会社にもあるんだな。

 「あ、まただ!」

 「まだ、休憩時間じゃないのに」

 日々の会社は、SFであって、ホラーな劇場だ。

 定年退職っていうのをひかえた人たちが、「休憩室」に入っていく。その場所では、どんな時間が流れているんだ?

 「休憩時間にならなくても、休憩している人たちがる」

 そういう人には、注意を入れたい。

 でも、できない。

 今の日本では、弱い立場の人が弱いまま。

 「皆が働いているのに休憩している、身分のあるあの人たち」には、何も、言えなくなってしまっている。

 この言葉は、知っていると思う。

 「働かないおじさん」

 「働かないおばさん」

 ああ、いやだ…。

 どうか、働いてくれ!

 どれだけ働いても報われない若い世代が、みじめでならない。

 リアル日本では、こんな事件が大バズリ。

 「新卒男子たちが、何者かに連れ去られて殺される」

 え?

 SF的な、ミステリー事件か?

 会社の休憩室では、働かないおじさんやおばさんたちが、ほお杖をついて、TV番組を見ながら、茶を飲んでいるまま。

 「若い子って、働かないよなあ…」

 「ホント。そうよねえ」

 「働けって、いうんだよ」

「ふふふ」

 よく、言うよ。

 休憩室は、満員御礼。

 おじさんやおばさんは、数だけは、無駄に多かったからね。

 それに比べて、優秀でも就職できない世代たちがいてさ。こちらは、数が少なすぎ。

 日本のアンバランスさが、悲しすぎる。

 おじさんやおばさんたちの目線の先、外の町では、シューカツに燃える新卒世代が、走り回っていた。

 過保護に生きても、こういうときだけは、がんばってしまう奴ら。

 「未来の働かない世代」に、なっていくんだろうな。

 働かないおじさんやおばさんたちは、会社の窓の外に見える、苦走り回る新卒世代たちを見て、口々に、つぶやきはじめた。

 「…ひひひ。今度は、あの子たちにしようぜ?」

 「ええ」

 立場の弱いシューショクヒョーガキ世代の俺は、何も聞かなかったことにしていた。

 「あの方には、関わるな」(「○ナン」のことでは、ない)

 日本の、日常。

 「…ふう。今日も、仕事が終わった」

 無駄な残業の後で。

 俺は、帰宅。

 「時間が、戻ったぞ!」

 俺にとっては、こちらの空間のほうが、大切だ。

 ネットニュースを、見る。

 「皆さん!またです!また、例の事件が、起こりました!シューカツで走りまわる新卒男子たちが、何者かに連れ去られ、殺されたもようです!」

 うん。

 うん。

 たぶん、あの方たちが、犯人ですよ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

(ちょこっと短い話)新卒世代を殺す犯人たちは、会社の休憩室にいます。 冒険者たちのぽかぽか酒場 @6935

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ