第4話 we all lie
「結婚決まったんだね! おめでとう」
いつもの公園で結婚報告をしたとき、貴女は手を叩いて喜んでくれた。
とっても明るい笑顔で。
あーあ。
引き留めてくれたら嬉しかったのにな。こんなに喜ばれたら、「本当は彼のことが好きじゃない」なんて言えない。
胸が苦しくなって溢れてきそうになる涙を堪えて、微笑み返す。
「ねえねえ、どんなドレス着るの?」
「まだ式場も決まってないのに――」
「『こんなドレスが着たい』っていう希望はあるでしょ? 見せてよ」
「仕方ないなあ」
スマホを取り出して、彼から送られてきたメッセージを開く。
「君にはこんなドレスが似合うと思う」
押しつけられた私のイメージ。
それに似合う、沢山のウェディングドレスの写真。
「うーん」
画像を見たヒナは、
「似合わないと思うなあ。正直、趣味じゃないでしょ?」
「あーわかっちゃう?」
「勿論、何年一緒にいると思ってんの」
胸を張ってドヤ顔をする彼女が面白くって、思わず笑ってしまった。
「あはっ、そうだね」
ヒナに理解されていることが嬉しくって何故だか泣きそうになっている間に、
「あんたに似合うのはねえ、こういう感じ」
彼女はスマホを差し出して来た。
「おっ、そうそう。これ好きだわ」
「でしょでしょ」
彼からは1枚も提示されなかった、Aラインのウェディングドレス。
「彼の言いなりになるんじゃなくて、自分が着たいのを着なよ」
「うん。ありがとう」
彼と付き合ったのも、結婚するのも、私の意思であって、そうじゃない。
そんな考えが見透かされているような気持ちになった。
「結婚式、まだ日にち決まってないけど来てよね」
「……うん、行くよ」
肩を寄せ合ってスマホを見ていたのに、ヒナはパッと立ち上がってしまった。
今の間はなに? どうかしたの。来たくないの?
そうやって聞けば良かったね。
本当に私は馬鹿だ。
「楽しみにしてる」
私に背を向けてそう言ったヒナ。
ねえ、貴女はどんな気持ちで私の話を聞いていたの。ドレスを選んでくれたの。
教えてよ。
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