第3話 偽りの愛
彼と付き合って2年目の春。
「僕と結婚してください」
夜景が見える素敵なレストランで、薔薇の花束と共にプロポーズされた。
テンプレすぎて笑ってしまいそうになったけど、彼の表情は真剣そのものだったから我慢した。
あのね、私は本当は、貴方のことが全然好きじゃないの。
一緒に行った遊園地、水族館、旅行、全然楽しくなかったんだよ。
「今日も楽しかったね」
私の嘘を真に受けて、いつも素敵なデートプランを考えてくれたね。
でも、一緒に時間を過ごしたかったのは貴方じゃない。
ヒナなの。
太陽よりも明るいヒナ。
感動ものの映画を観るとすぐに泣いちゃうヒナ。
私が悪口を言われたとき、私以上に怒ってくれたヒナ。
泣きたいとき、苦しいとき、肩を貸してほしかったのはヒナ。
貴方じゃないの。
ごめんなさい。儚い花を育てるように、大切に愛情を注いでくれたのに。
貴方と付き合っているうちに、愛せるようになれると思っていたのに。
結局、愛せなかった。
だけど、私は選ぶ。
世界の大半の人が歩む、普通の人生を。
「私で良ければ……よろしくお願いします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます