第23話 鵺

「いらっしゃいませ~」

 来店したお客様を見て、俺はぎょっとしてしまった。

 何の生物か分からなかったからだ。

「鵺だね」

「ぬえ?」

「顔は猿、胴は狸、足は虎、尾は蛇の妖怪だよ」

 確かに、それぞれのパーツを見ればその動物のようであった。

 鵺は四つ足で歩きながら、店内を物色していた。

「何かお探しですか?」

「私、色々な動物のMIXなんです。どの動物とも仲良しになれず辛いのです。こんな私でも幸せな気持ちになれるような本はありませんか?」

 鵺の声は女性だった。

 MIX……、ハーフの女の子が主人公の本が確かあったはず。

「でしたら、こちらの本はいかがですか?」

 俺は『青い天使』という児童書を見せた。

「主人公のチナは日本人とフランス人のハーフなんです。ある日、母親の実家のおじいちゃんの家に行くことになります。いとこ達にいじめられながらも、チナは明るく楽しく生きています。チナの健気さに感動できる本です」

「ハーフの女の子が主人公ですか……。この本を読んで、私も前向きになりたいと思います」

「はい、きっとなれますよ」 

 鵺は少し嬉しそうにしながら店を去って行った。



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