第11話 貉

「いらっしゃいませ~」

 もふもふのお客様がご来店した。

「お前、俺のこと狸って思っただろ!」

「あ、いえ、ちょっと違いますよね?」

「狸に似ているが少し違う。彼は貉(むじな)。鳴き真似が得意だ」

 店の奥から綾さんが言う。

「化けるのが得意なんだ。何でも言ってくれ。上手に化けてみせるさ」

「じゃあ芥川龍之介でお願いします」

「芥川龍之介? そいつは、どんな顔をしてるんだ?」

俺はスマホで芥川龍之介の写真を見せる。

「おっ、けっこうな美男子だね。……ほいっと」

 貉は写真そっくりの芥川龍之介に化けた。

「すごい! 写真撮っていいですか?」

「いいよ」

 俺は芥川龍之介(化け貉)とのツーショットを手に入れた。

「それで、どんな本をお探しですか?」

「間違い探しの本さ」

「子ども用と大人用ありますが、どちらになさいますか?」

「子ども達に遊んでほしいから子ども用だな」

「はい、どうぞ。300円になります」

「はい」

「ありがとうございました」

 貉の子ども達が間違い探しを楽しんでくれると良い。


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