第6話 ぬらりひょん

俺が本棚の埃取りをしていると、いつの間にか禿げ頭で着物を着た老人が店内にいた。

「いらっしゃいませ」

「やあ、こんばんは」

「こんばんは」

「少し本を探していてね。良ければ手伝ってもらえると嬉しいんだが……」

「どんな本をお探しですか?」

「実は私、ぬらりひょんと言って、妖怪の総大将とか言われてるんですな」

「はい」

「私なんて、人の家に勝手に入って寛ぐしかないのに総大将ですよ。おかしいでしょう?」

「確かに、何か強い能力とかではないですね」

「でしょう。最近、55代目ぬらりひょんを襲名いたしまして、妖怪のリーダーの資質というか、そんなことを考えていたのですよ」

「つまり、良いリーダーになるための本をお探しだということでしょうか?」

「はい、その通りです」

「わかりました。一緒に探しましょう」

 俺とぬらりひょんは本の海の中に飛び込んだ。


 十分も経たないうちに俺は一冊の本を見つけた。


『頼られるリーダーになるには』


 真葛秋人という若手社長が書いた本だ。

「これとかどうですかね? 若くして会社の社長になった方の本です」

「おお、まさにそれです! ありがとうございました」


「ありがとうございました」

 ぬらりひょんを見送った後、俺は思った。

 妖怪の総大将って襲名制なんだ……。

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