第35話 ラスボス

 10月12日 - 14時50分ごろ、埼玉県新座市の東京電力の地下送電ケーブルから出火、東京都内の約58万6000軒で停電が発生、西武鉄道と都営地下鉄大江戸線が運転を見合わせた。

 

 毒島は今年の1月の出来事を思い出していた。浦島市の西にある砂利運搬会社事務所内で、毒島は郡上髄元ぐじょうずいげんの首を絞めて殺害した。


 事件が発覚する前の午前4時ごろ、事件現場となった事務所から離れた同じ浦島市内のスーパーのATMをショベルローダで破壊して3000万を手に入れた。


 毒島がそんなことをしたのは金のためだけじゃない。犯罪そのものをゲーム感覚みたく楽しみたかったのだ。


 今のところ織田和樹が優勝者候補だ。彼には犯罪の才能がある。


 逗子市は神奈川県南東部の市。横須賀三浦地域に所在し、三浦半島の西側の付け根に位置する。

 

 ホテルのスウィートルームからマリーナを眺めていた。フロントでジュニア・コルトをちらつかせホテルマンを脅して、タダで泊めてもらった。

 

 和樹は漁り火を眺めながら、今まで戦った妖怪を思い出していた。

 👻明石様は神奈川県横浜市保土ケ谷区に伝わる。  1800年頃の乱心した殿様の霊。明石御前という名前で、どうしても人を斬りたかったが、家来たちから外に出てはいけないといわれているのに内緒で遊んでいた猟師の女の子を斬ったため、その父親の猟師によって殺されてしまった。このことから神奈川県横浜市の昔の子たちは親から「外に出ると明石様が出るから」ときつくしつけられていた。

 

 👻後追い小僧は神奈川県丹沢地方東部に伝わる妖怪で、丹沢の山霊(山の神霊)の一種。


 姿は4歳から10歳程度の子供のようで、ときには15歳ほどのこともある。服装はぼろぼろのむしろや、かすりの着物、毛皮などを纏っている。


 山中を人間が歩いていると、後追い小僧は無言でその者の後をつけて歩く。つけられた者が気配を感じて後ろを振り向くと、木や岩の陰に隠れ、姿を消してしまう。後を追うだけでなく、ときには道案内のように前を歩くときもある。土地の古老によれば、日中の午後に現れることが多いというが、夜に現れる場合は提灯のような火を灯している。


 声を出すことも物音を立てることもなく、人間に対して危害を加えることもないが、何度も後追い小僧に遭った人は、食べ物(握り飯、芋、菓子、干し柿など)を辺りの岩や切り株の上に置いて行ったという。後をつけられている者が山を抜けて里に近づくと自然に消えるという説や、夜に現れた場合は声をかければ消える、などの説もある。


 古来より山は死後の世界に近い場所とされ、死者の霊が集まってくると考えられていたことから、後追い小僧は、そうした霊が生きている人間になついて現れた者という説があり、実際に前述のように、後追い小僧のために食べ物を残すのは、後追い小僧が自分の亡くした子供の霊ならばと思っての行動とされている。

 

 👻大首については、江戸時代の怪談や随筆などの古書には、巨大な女の生首が現れたという事例が多数あり、ほとんどは女性で、既婚女性の証としてお歯黒を付けていることが特徴である。それらの正体は、人間の怨霊や執念が妖怪と化したもの、あるいはキツネやタヌキが化けたものといわれている。


 山口県岩国の怪談集『岩邑怪談録』には「古城の化物の事」と題し、ある女が御城山という山で一丈(約3メートル)の女の生首に遭い、にこにこと笑いかけられたとある。江戸時代の俳人・堀麦水による奇談集『三州奇談』では、金沢で雨上がりの夜に月が顔を出し始めた頃、雷と共に大きさ6~7尺(約1.8~2メートル)ほどの大首が現れたとあり、塀の上に大きな首が乗っていたこともあるという。また、ある者がこの大首に息を吐きかけられ、その場所が黄色く腫れて具合が悪くなり、医者に薬湯を処方してもらって治ったという話もある。


『四谷怪談』の祖形といわれる文化時代の読本『近世怪談霜夜星』では、策略に陥れられて命を絶った女性の怨霊が、鎌倉の地で巨大な大首となって現れた姿が描かれている。


 江戸時代よりさかのぼって平安時代にも、「面女つらおんな」と呼ばれる巨大な女の首の妖怪が出現したとある。恋川春町の黄表紙『妖怪仕打評判記』によれば、平清盛が福原に遷都した夜にも、この面女が現れたという。


 👻神奈川県津久井郡内郷村(現・相模原市緑区)では川天狗は姿を現すことはなく、夜に人が川で漁をしていると、大きな火の玉が突然転がって来ることがあり、これが川天狗の仕業とされていた。このような時は、河原の石の上を洗い清め、獲れた魚を供えるとこの怪異は失せたという。また人が川に網を放つと、川天狗も姿を見せずに網を放つ音を立てたという。誰もいないのに大勢の人声が聞こえたり松明の火が盛んに見えるものも、川天狗と呼ばれた。

 

 👻逆柱は日本の木造建築における俗信の一つで、木材を建物の柱にする際、木が本来生えていた方向と上下逆にして柱を立てることを言う。

 古来より逆柱にされた木は、夜中になると家鳴り等を起こすとも言われていた。また、家運を衰微させるほか、火災などの災いや不吉な出来事を引き起こすと言われており、忌み嫌われていた。


 妖怪漫画家・水木しげるによれば、逆さにされた柱からは木の葉の妖怪が出現する、もしくは柱自体が妖怪と化すともいう。


 井原西鶴の著書『西鶴織留』によれば、京都六角堂の前のとある家に住む夫婦がこの逆柱の怪異に悩まされており、家では毎晩のように梁が崩れるような音が響くので、遂には引っ越していったという。 

 

 また小田原では、ある商家で祝い事の最中に「首が苦しい」と声が聞こえてきたので、声の主を捜したところ、座敷の柱から声が発せられており、その柱が逆柱であることが分かったという。

 

 👻舞首については、『絵本百物語』の本文には、以下のような伝承が述べられている。

 鎌倉時代中期の寛元年間。小三太、又重、悪五郎という3人の武士がいた。伊豆の真鶴の祭の日、酒の勢いで3人が口論となり、やがて刀の斬り合いとなった。


 怪力を誇る五郎が小三太を斬り捨て、さらに又重を斬ろうとするが、又重は山中へ逃げ去った。五郎は小三太の首を切った後に又重を追いかけた。又重は斬り合いに応じたところ、五郎がつまづいて転んだので、隙をついて五郎を斬りつけた。五郎は斬られてなお起き上がって又重に立ち向かった。2人は組み合っている内に足場を踏み外し、海に転げ落ちた。水中で2人は互いの首に刀を当てて、2つの首が切り落とされた。首だけになっても2人は水中で争い続け、又重の首が五郎の首に噛み付こうとしたとき、そこへ斬り落とされた小三太の首が躍り出て五郎の首に噛み付いた。


 こうしてこの海では3人の首が食い争い、夜には火炎を吹き、昼には海上に巴模様の波を起こしたので、巴が淵と名づけられたという。


 なお挿絵中にある文章はこの本文とは異なり、博打勝負をしていた3人が役人に捕らえられて死罪となり、その遺体を海に流したところ、3人の首がくっつき合い、口から火を吹きながら互いを罵り合っている、とある。


 缶ビールを飲んでいると和樹は気持ちよくなって眠りに落ちてしまった。


 次ぐ日、朝食を食べ終えるとホテルを出て逗子エリアを散策した。

 三浦半島北西部、相模湾に面する都市で、湘南の一部とされることもある。北西に鎌倉市、南に三浦郡葉山町、東に横須賀市北部、北東で横浜市金沢区に接する。東京都区部や横浜のベッドタウンで、1965年(昭和40年)造成開始の披露山庭園住宅など、新興の高級住宅街が見られる。また鎌倉・葉山などとともに海水浴場のある観光都市でもある。


 三浦丘陵の西側にあたるため山がちな地形である。最高峰は二子山(標高207.6 m)。鎌倉市や葉山町とは尾根筋を境界としているが、山上にも宅地が造成されている。市域の大部分は東部の横須賀市境付近を源流とし、相模湾に注ぐ二級河川田越川の流域で、川沿いに平地が広がっている。


 歩いて10分、和樹はマリーナにやって来た。

 敷地内にはマリーナ(ヨットハーバー)を中心に、ホテル、レストラン、マンション、イベントプロデュース、ウエディングなどの展開がある。


 ハーバーには、海上係留と陸上艇置併せて約280艇のクルーザー及びボート、ヨットを置く事が出来る他、ビジター用バースもある。新艇、中古艇の販売の他、メンテナンスも受け付けている。


 海風を浴びながらベンチで『幻想将門伝』をプレイした。

 溝出みぞいだしと戦った。江戸時代の奇談集『絵本百物語』にある死霊譚。

 

 挿絵中にある文章によれば、ある貧乏人が死に、始末に困って葛篭に入れて捨てたところ、亡骸の皮がひとりでに剥がれて白骨となって歌い踊り出したとある。


 また『絵本百物語』中の「溝出」本文によれば、死者を粗末にしたがための怪異として、以下のような話が述べられている。


 北条高時の時代。鎌倉に戸根の八郎という武士がおり、家来の1人が死んだので櫃に入れて由比ヶ浜の海に捨てた。後に櫃は波で岸に打ち上げられ、中から歌声が聞こえてきた。それを聞きつけた寺の僧が櫃を調べると、中には海水に晒された白骨があったので、寺で手厚く葬った。


 後に新田義貞が鎌倉へ攻め入った際、北条時行がそれを迎え撃つために由比ヶ浜の軍勢を敷き、その中に戸根の八郎もいた。別の場所に敵兵が攻め入ったとの報せを受け、時行軍はそちらへ馬を走らせた。しかし八郎だけは追いつけずに取り残され、時行軍を追う敵陣の格好の的になり、矢に貫かれて命を落とした。その死に場所は奇しくも、八郎が家来の亡骸を捨てた場所だったという。

 

 溝出自体は魔法を使えないが、MPを吸い取って自分のものにするという不思議な杖を手にしていた。猛虎も朧車も寝返ってしまい絶体絶命に。

 助っ人に現れた『弓矢』が鉄砲攻撃で溝出を一網打尽にしてくれた。瀕死になったところを『イルカ(源扶)』が『震撃』という地震魔法を使って溝出を倒してくれた。『イルカ』はドMキャラでやられれば、やられるほど魔法を覚える。『震撃』はつい先ほどの舞首にやられたときに覚えた。


 将門が50HPになっていたのでマリーナ内にある『あまちゃん』というパンケーキ屋に入った。評価が5なので100%回復、150HPになった。将門は200HPなので、完全に回復はしていない。


 和樹は披露山公園ひろうやまこうえんに向かった。逗子市新宿の披露山の頂上にある逗子市立の都市公園である。遠くに富士山が見える。

 園内では、ニホンザルや水鳥などの動物を飼育している。


 レストハウスが営業し、大崎公園・浪子不動へと向かうハイキングコースも整備されている。


 戦時中は海軍の小坪高角砲台として2連装12.7センチ高角砲2基と高射装置(Director)を備えた鉄筋コンクリート製の円形砲座3基と、同じく鉄筋コンクリート製の半地下式の指揮所が存在した。指揮所跡にレストハウスを設け、砲台のすり鉢型の砲座跡を猿舎と展望台、花壇に利用している。

  

 レストハウスでカツ丼を食べた。験担ぎだ。評価は3で50%回復し、将門のHPが完全回復した。

 

 決戦の舞台は披露山公園だ。

 将門「ついにここまで来たね?」

 イルカ「悔いのない戦いをしよう」

 桔梗の前「将門、死なないでね?」

 

 評価は4.2、ラスボス藤原秀郷のレベルは4だ。巨大な龍を伴って出現した。龍は秀郷を回復したり、蘇生出来る。

 ロック調のBGMとともに戦闘がはじまる。

 桔梗の前が死んだら事実上の敗北となるので、彼女が死なないようにしないといけない。

 将門は天之麻迦古弓あめのまかこゆみを射たが秀郷に跳ね返された。

 イルカが『震撃』を使った。地面に亀裂が入り、300HPだった秀郷が250HPに下がる。

 桔梗の前は『夢魔むま』という眠り魔法を秀郷に掛けた。秀郷が目をグルグルさせて、眠った。

 チャンスだ!秀郷は攻撃をすることも、躱すことも出来ない。

 次は龍のターンだ。

 日本でも龍神・龍王は水を司る水神とされた。龍宮様とも呼ばれる。日本の龍神信仰においては中国伝来の龍と日本の水神・蛇信仰が習合しており、龍王と蛇神とが混交されていることも多い。龍神の棲むとされる淵や龍神池で雨乞いが行われたり、漁村では龍神祭で龍宮の神を祀って豊漁を祈願するなど、農耕や漁業に関わりのある神格である。

 

 龍は軽蔑のまなざしで将門を睨みつけ、水魔法で悪戯に彼を揺らす。将門200HP→150HP


 しかし、将門は『猛虎』を召喚して、その強さを龍神に見せつけた。


『猛虎』は、いななくようにえ、鋭い爪で龍を攻撃した。龍は水魔法で『猛虎』をおびき寄せ、その場に閉じ込めようとしたが、将門は巧みに『猛虎』を運び、龍の意表を突いた。


龍は激怒し、より強力な水魔法で『猛虎』を攻撃した。しかし、将門は『猛虎』を使いこなし、その攻撃を避けながら、機敏に反撃した。


 龍の攻撃が強力であったため、将門は次第に追い詰められていった。将門150HP→100HP。

 しかし、将門は屈しなかった。


『私はこの国を守るために戦う。お前らが進むところまで行っても、私が立ちはだかり、立ち向かう!』


 桔梗の前が将門を回復させる。100HP→200HP


将門は自らの力を高め、猛虎を更に大きくして、最後の一気の勇気ある攻撃で龍を倒した。


 だが、油断は出来なかった。龍は死ぬ寸前に秀郷を全回復させ、さらに将門たちの攻撃が当たらなかった時には倍の攻撃力になるという『炎魔えんま』という魔法を秀郷に掛けていた。

 秀郷は『炎魔』を駆使して桔梗の前を倒した。

 和樹は頭の中が真っ白になった。絶体絶命だ。

 そのとき、ダンッ!と銃声が響き渡った。

 撃たれたのは和樹だった。

 自動販売機の陰から虫丸がトカレフ TT-33をぶっ放した。この銃は労農赤軍が1933年に正式採用した軍用自動拳銃である。虫丸はチンピラだ。銃など簡単に手に入る。プエルトリコに行ったときに武器屋から手に入れた。プエルトリコは山脈、滝、エル ユンケ熱帯雨林のあるカリブ海の島で、アメリカ合衆国の未編入領域だ。首都のサンファンはプエルトリコ最大の都市で、その海沿いのアイラヴェルデにはホテル、ビーチバー、カジノが並んでいた。旧市街オールド サンファンにはカラフルなスペイン植民地時代の建物や、何世紀も昔の巨大な要塞であるエルモロやラフォルタレザがある。

 

 邪魔者を消して、俺は秀郷との戦いに挑んだ。

 逗子駅近くの『メテオ』は星5つで、弓矢はハデスの兜を手に入れて不死身になっていた。魔法など使うことなく種子島銃で龍と秀郷を倒した。


 翌日の昼過ぎ、俺は新宿にあるゲーム会社、トライアングルにやって来た。トライアングル社の社長

、津田沼男から金メダルとプレステ4のゲームソフト『幻想幕末伝』をもらった。

 賞金の100万円は後日、銀行口座に振り込まれるとのことだ。

 式典は15時頃には終わり、エレベーターに乗り込んだ。ゲーム会社から出て駅に向かって歩き出す。

 新宿駅の巨大ビジョンに備後首相が映し出された。記者会見でSATやSPの活躍もあり、テロリストを全員確保したと報告した。息子も無事だったようだ。

『悪質な輩には絶対に屈しない。今回の日本国内の法制度の強化が必要と感じました』

 

 林檎たちは伊豆大島に潜伏していた毒島を逮捕した。


 翌日、俺は松山総合病院に入院している鈴花のもとに向かった。

 しかし、病院に到着する前の数分後、鈴花は亡くなってしまった。彼は、その悲しみに包まれ、妹が亡くなる前に会うことができなかったことを悔やんだ。

 布を顔に被され、神に祈るように手を組まされていた鈴花の遺体にすがりつき、俺は泣き叫んだ。

「鈴花ァッ! 俺は何のために戦ったんだァッ!? 戻って来てくれぇ!!」

 鈴花は明るく、優しく、いつも心地よい笑顔を持っていた。彼女が亡くなってしまったことは、ただただ不思議なことだった。


 和樹は手作り防弾チョッキにより気絶しただけで済んだ。『将門伝サドンデス』のランクは2位だった。日高川林檎は10位、有田蜜柑は8位、岐南丈次は15位だった。


 和樹はキルゲームに優勝したものの、毒島が逮捕され、ピエロたちも一網打尽になったので賞金を手にすることはなかった。体が空洞になったかのような無力感に苛まれた。

 

 和樹は派遣社員として『トルネード』などの会社を転々とすることになる。

 派遣会社の『ファイブエージェンシー』がスパイ機関であると気づくのはずっと後のことだった。


 


 

 


 

 

 

 

 

 

 

 


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幻想将門伝  鷹山トシキ @1982

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