第31話 不二子の正体

 虫丸のいる神社から目と鼻の先にあるビジネスホテルでは、寺具音生てらぐねおが貫一郎の目を粘着テープでふさぎ、両手足を布のベルトで縛って「静かにしろ。静かにしないと死ぬことになる」と脅し、逃げられないようにした。貫一郎を持て余した音生は『いっそのこと殺そうか』とも思った。犯罪は合法化になったし、こんなガキ殺したって大丈夫だ。だが、音生は釣った魚を捌くのも苦手なくらい血が嫌いだ。あの生臭いのが死ぬほど嫌だ。

  音生は中学生の頃から物書きをしている。が、未だに賞を獲ったことない。母親からは25歳になるまでに芽が出なかったら止めなさいと約束されていた。今月の20日で25歳になる。同じ日に史帆が約束を破ったら、貫一郎を殺す予定だ。

 史帆の出世作、『解体新書殺人事件』は音生の作品を盗作したものなのだ。

 『解体新書殺人事件』でデビューした。

 史帆の作品は名探偵の秋山優香あきやまゆかが活躍する。彼女は、ある日、東京新聞社から『解体新書殺人事件』という未解決事件の取材依頼を受ける。


 事件は、100年以上前に起きた日本史上最悪の連続殺人事件で、連続した五人の女性が解体された遺体となって発見されたというものだ。事件は、屋敷の中に設けられた密室で数日間にわたって行われ、殺害者はいまだに見つかっていない。


 秋山は、事件の現場である屋敷に向かい、調査を始める。屋敷は、場所が難アクセスであるため、犯人は車を使用したと推測される。また、事件当時は戦争中であったため、事件の捜査は犯人による隠蔽策により困難を極めたとされる。


 秋山は、古文書や屋敷の間取りなどを駆使し、真相に迫っていく。彼女は、事件の謎に迫る中で、犯人との近い距離に接近していくが、それは彼女自身の危険な状況にも繋がっていく。


 秋山が犯人の正体に迫る中、真実が次々と明かされ、事件は意外な展開を見せる。そして、解体された女性たちの意外な絆と秘密が明らかにされる中、事件はいくつかの謎を残しつつ、結末を迎える。


 音生の作品もタイトルは『解体新書殺人事件』だ。こっちのは杉田玄白すぎたげんぱくの書いた『解体新書』を巡って殺人事件が起きる。

 

『解体新書』は明和8年(1771年)3月4日、蘭方医の杉田玄白・前野良沢・中川淳庵らは、小塚原の刑場において罪人の腑分け(解剖)を見学した。玄白と良沢の2人はオランダ渡りの解剖学書『ターヘル・アナトミア』こと "Ontleedkundige Tafelen " をそれぞれ所持していた。玄白は実際の解剖と見比べて『ターヘル・アナトミア』の正確さに驚嘆し、これを翻訳しようと良沢に提案する。かねてから蘭書翻訳の志を抱いていた良沢はこれに賛同し、淳庵も加えて翌日3月5日から良沢邸に集まって翻訳を開始した。


 当初、玄白と淳庵はオランダ語を読めず、オランダ語の知識のある良沢も翻訳を行うには語彙が乏しかった。オランダ語の通詞は長崎にいるので質問することも難しく、当然ながら辞書も無かったため、翻訳作業は暗号解読に近かった(この様子については玄白晩年の著書『蘭学事始』に詳しい)。玄白は、この厳しい翻訳の状況を「櫂や舵の無い船で大海に乗り出したよう」と表した。安永2年(1773年)、翻訳の目処がついたため、世間の反応を確かめるために『解体約図』を刊行している。


 安永3年(1774年)、4年を経て『解体新書』が刊行された。玄白の友人で奥医師の桂川甫三(甫周の父)が『解体新書』を将軍に献上した。


 D大の江戸文学ゼミのゼミ生、秋山優香がキャンパスの研究室で1人でいるところを、何者かによって絞殺される。手元には『解体新書』が残されていた。アメリカから留学してるプラムって女性が謎に挑む。


 プラムのモチーフは峰不二子だ。プラムには怪盗というもう1つの顔があったのだ。

 不二子のプロフィールを暗記するほど彼女のことが好きだ。

 身長:167cm

 体重:50kg

 バスト:99.9cm

 ウェスト:55.5cm

 ヒップ:88.8cm

 好きなもの:お金、宝石、美男

 苦手なもの:カエル、ヘビ、狭い空間(閉所恐怖症)、ルパン三世。

 国籍:北海道浜中町出身

 

 音生も史帆と同じ山梨出身だ。音生は山梨市立図書館のデスクで執筆するのが日課になっていた。トイレに行っている最中に、原稿がまるまる盗まれた。あのとき、ウンコじゃなく小便だったらこんなことにはならなかったかも知れない。


 ワイドショーで史帆が出てきたとき、コイツが盗んだのだと確信した。特番で彼女が自宅を公開したときは思わずメモをした。

 

 せっかく、清水まで来たんだから周辺を巡ろうかな?

 しっかりと鍵をしてホテルから出た。

 レンタカーを疾駆して泉の館にやって来た。静岡県駿東郡清水町の国道1号沿いに位置するドライブインだ。元々は製紙業を営んでいた土地で、その時代の建造物(築80年以上を経た蔵と邸宅)が今でも残っている。柿田川公園やショッピングセンター・サントムーン柿田川に隣接している。

 サントムーン柿田川をブラブラしてると、サングラスを掛けた男と肩がぶつかった。

「いてぇな!コラッ!どこ見て歩いてんだよ!」

「悪いのはそっちだろ?」

「なんだと、この野郎!謝れよ!」

 グサッ!

 逆上した男はダガーナイフで音生の脇腹を抉った。血をダラダラ流し、やがて死んだ。

 男の正体は前田虫丸だ。

 

 和樹1点、虫丸1点、史帆2点。

 

 

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