第24話 地下室

 魔法を使うと濡女子を倒せないようだ。

 天之麻迦古弓で濡れ女子を倒した。この辺りは濡れ女子がやたら多く、残り30匹となった。  

 遊子の水荷浦は南予地方にあり、三浦半島の北岸から、宇和海及び宇和島湾に向かって分岐する岬の小さい集落である。岬の急傾斜面には、小さな石を積み上げて形成された雛段状の畑地が形成されている。この畑地を水荷浦では「段畑」と呼んでいる。この段畑を含む風景は、宇和海沿岸のリアス式海岸で営まれてきた半農半漁のくらしを示す独自の景観を形成している。


 平均40度の傾斜つけて築かれた高さ1メートル以上の石段の間に幅幅1~2メートル程度の畑を造っている。石段は60段以上あり、最も高い箇所では海抜90メートルの山上まで連なっている。約3.4ヘクタールに1000近い段畑がある。


 宇和島地方は山が海に迫る地域が多く、耕地が元々少ない。江戸時代に当地を治めた宇和島藩(伊達氏)の3代目藩主が、領民にイワシ漁を強制する代わりに、山の開墾は勝手次第としたことが始まりと伝わる。幕末に豊漁が続いて人口が増え、明治にかけて斜面のほとんどを開墾し、養蚕が盛んになるとカイコの餌となる桑畑も必要となって大正時代にかけて石垣を築いた。


 かつては他の浦にも段畑が広がり、サツマイモや麦も作られ、サツマイモは焼酎の原料として豊後水道対岸の九州にも出荷された。農業には元来厳しい地形であることから、昭和30年代以降に相次ぎ耕作放棄地となって森に戻った。


 水荷浦のみで約20戸の農家がジャガイモを育てつつ保全している。水荷浦の地名も、生活に必要な水を荷として担ぎ上げる苦労があったことが由来とされる。

 

 段畑からは鬼ヶ城山が見渡せた。大昔に鬼でも棲んでいたのだろうか?

 和樹は林檎のことが無性に心配になった。

 殺人鬼に襲われてなどいないだろうか?

 バスに乗り込み、宇和島城近くのバス停で降りた。

 移動中もモンスターと戦った。

 のびあがり入道はユニークな妖怪だった。愛媛県北宇和郡下波村(現・宇和島市)や徳島県祖谷地方を始め、日本全国に伝わる妖怪。


 目の前に現われたかと思うと、見ている内に次第に背が高くなり、それを見上げれば見上げるほどさらに背が高くなってゆく。愛媛の東宇和郡宇和町(現・西予市)では、その姿を見上げている人の喉元に噛みつくともいわれ、香川県では首を締め上げたり、その人の方へ倒れかかってくるともいう。徳島の祖谷地方では竹薮の中に1尺ほどの姿で現れ、次第に大きくなって竹の背丈ほどにまで伸び上がるという。昭和・平成以降の妖怪関連の文献においては、同様の特徴を持つ妖怪・見越入道の一種とされる。


 愛媛の下波村では、地上から約1寸(約30センチメートル)あたりのところを蹴飛ばして目をそらすと消えるといい、同県南宇和郡内海村(現・愛南町)では「見越した」と呼びかけると、姿を消してしまうといわれた。


 外見は影のようにはっきりとしない姿とされるが、丸くて奇妙な石のようだったとする説もある。


 昭和以降の話では、1988年頃のある日の深夜1時過ぎ、神奈川県で5人連れの友人たちを乗せた車が広沢寺温泉のトンネルに入ったところ、脇道から煙状のものが吹き上がって人型となり、それを目撃した者が後に、これを伸上りだと語ったという事例がある。


 伸上りや高入道の仲間とされる妖怪に「星ちぎり」がある。見ている間にズンズン背が伸びる妖怪で、高知県物部村山崎(現・香美市)に出没したといわれる。幻ともいわれ、同行者には見えないとされる。

 👹残り20匹

 

 奇神館に戻って来たのは19時過ぎだった。  

 満月が屋根の上にポッカリと浮かんでいた。

 狼男でも現れそうだ。

 林檎や岐南がバラバラにされて殺されていたらどうしよう?

 館に入るとロビーに林檎がいたからホッとした。

「あっ、お帰り」

「こんなところで何してるんだ?」

「部屋で1人でいると怖いから……」 

「ロビーの方があぶないんじゃ?」

 岐南は中華包丁を手にしている。犯罪が合法化された今、彼が林檎を刺さないとは限らない。

「そうかな? それよりご飯は? 今夜は魚料理だったよ」

 9月が旬の魚介類はサンマ、アマダイ、カレイ、マイワシ、ゴマサバ、カンパチ、クエ、タチウオ、カツオなど、非常にたくさんの種類がある。 特にサンマは漢字で「秋刀魚」と書くのだが、これは体が刀のような形であること、そして秋の代表的な魚であることからきている。

 和樹は食堂で1人で夕食を摂った。サンマの甘露煮は格別だった。 

 

 部屋に戻り、スマホを見た。充電があまりない。誰かから電話が来ている。ダリア荘の担当者からだった。通話中に電源が切れたらマズいし、充電してからすることにした。

 大浴場で汗を流した。ジャグジーは格別だった。

 体を洗ってると岐南が入って来た。

「戻ってたんですか?」

「ええ」

「ニマルさんも吉良さんもまだ戻って来ないんですよ」  

 岐南はバスチェアに座った。武器の類は持っていないようだった。

「そうなんですか?」

 熱いので風呂から上がり、部屋でミネラルウォーターを飲んだ。

 疲れていたので21時には寝た。いつもは23時頃寝ている。


 23時が過ぎた。テレビを消して、二階堂は部屋を出た。イザというときの為にボールペンを携行した。中華包丁や銃には敵わないかも知れないが、丸腰よりはいい。それにしても、あの織田って奴何者だ?殺し屋?スパイ?刑事?

 廊下は静まり返っている。

 ニマルの声を思い出していた。

『館の東にある緑色のドアの部屋に入って。暗証番号を入力しないと入れない仕組みになっている。番号は3621よ。そこには棺が置いてあるんだけど、棺の蓋を開けると隠し階段があるから降りて、地下室へ向かって?そこは武器庫になってるから、どれでもいいから武器を持ってきて』

 足音を立てずにゆっくり階段を降りる。

 例の部屋に辿り着くまでに、誰ともすれ違わなかった。ボタンを3621と押した。ロックが解除され、ドアを開けた。

 安全な棺って言葉がある。生きたまま埋葬されることを防ぐ棺のことで、中の人間が生きたまま埋められてしまっていることを外界に知らせるための装置がとりつけられている。安全な棺に関する設計の多くは18世紀から19世紀にかけて考案されたものであるが、その設計思想は変化しつつも現代に生きている。

 隠し階段を降りて、地下室に入った。

 銃や刀、斧などが安置されていた。斧や刀だと他の人間に見つかるかも知れないので銃を選んだ。

 二階堂が選んだ銃はグロック17だ。オーストリアの銃器メーカーであるグロック社が開発した自動拳銃。口径は9mm(9x19mmパラベラム弾)。装弾数は複列弾倉(ダブルカラム・マガジン)による17+1発。

 銃と弾丸の入った箱をポケットに入れて二階堂は無事、館を脱出することに成功した。

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