第14話 奇神館

 和樹は金を渡すと虎次郎から銃を受け取った。  

 ジュニア・コルトは、アメリカの銃器メーカーであるコルト社がスペインで生産して輸入販売し、後に自社生産した自動拳銃である。

 本銃のオリジナル名はアストラ 2000 (Astra 2000 / Astra M2000(後にアストラ・カブ (Astra Cub)と改名して販売) で、スペインのアストラ社により開発・製造されたものであり、同社の小型拳銃、アストラ 200 (Astra 200 / Astra M200)を改良したものであった。


 護身用として広く用いられた小型拳銃であるベスト・ポケットが生産を終了した後、コルト社はそれに代わるものとして1958年よりアストラ社にM2000をコルトブランドに仕様変更させたものを生産させて輸入し、引き続きベスト・ポケットの流通ラインにて販売した。輸入総数は64,000丁余りである。


 アメリカでは1968年に輸入銃器への法的規制(Gun Control Act of 1968(GCA or GCA68)が行なわれたため、スペインからの輸入が不可能となり、コルト社は1970年より仕様を多少変更してアメリカ国内での製造に切り替え、コルト社純粋の製品として1974年まで生産した。


 .25口径(0.25インチ)の.25ACP弾を使用し、6発+1発のストレートブローバック、ハンマー方式の小型拳銃である。


 外見は設計の源流を同じくするコルト・ベスト・ポケットもしくはFN ブローニング・ベビーに近く、銃把(グリップ)部がやや長いものの全長や総重量はほぼ同じだが、露出ハンマー型になり、マニュアルセフティもトリガーガードの付け根に移動し、ベスト・ポケットにくらべて少し無骨なデザインとなっている。内部機構も同じストレートブローバック方式であるが、撃発方式はストライカー方式(銃に内蔵された撃針によって発火させる方式)ではなく、撃針を外部の撃鉄(ハンマー)が叩いて撃発するオーソドックスな方式である。


 なお、スライドとバレル、マガジン他を交換して.22ショート弾を使用できるコルト社公式のコンバージョンキットも販売された。


 虎次郎はホルスターもよこした。

 虎次郎はガンスピニングという、拳銃のトリガーガード(用心金)部に人差し指をかけて回す曲芸を見せてくれた。和樹は焼きそばを食べながら観覧した。

「お見事」

「この世の中、予期せぬことがたくさん起きる。足元に気をつけろよ」

 虎次郎はアドバイスをくれた。さらに地下室で銃の取り扱い方を教わった。

 

 20日 - 横浜市の大口病院(現・横浜はじめ病院)で患者が2人が中毒死し、同病院で過去2ヶ月のうちに50人以上が亡くなっていたことが発覚。


 宇和島には14時頃到着した。

 西側は宇和海に面し、それ以外の三方は山地に囲まれている。リアス式海岸が広がり、加えて離島もあり、漁港の数では全国有数である。

実際には八幡浜市よりも南南東側に位置するが、JR四国の予讃線の特急列車の終着駅であるため、地元住民以外には愛媛県の最西端の市と思われがちである。 

「おまえ、随分太ったな?」

 和樹はズケズケと失言した。昭和の歌手、清水健太郎の歌に『失言レストラン』ってのがあったな?

 頭端式ホーム2面3線を持つ地上駅。駅改良の前は線路は駅より先に集まり、車止めは1つのみであった。松山方面の特急列車は全て改札口前の1番線から発着する。1番線、2番線の線路の先端部分は、若干右にカーブしている。


 2番線・3番線は1番線よりホームが短く、原則普通列車のみが使用する(一部1番線に発着する普通列車もある)。1・2番線の間には給油設備がある。


 直営駅。キオスクは待合室横と駅舎外の2か所にあったが統合され、ビッグキヨスク宇和島店としてリニューアルオープンしている。その後セブン-イレブンに転換され、セブン-イレブンKiosk宇和島店となった。


 ロータリーに出た和樹は『幻想将門伝』を起動させた。

 👹残る妖怪の数は35匹

 

 林檎も『幻想将門伝』を起動させた。

 👹残る妖怪の数は49匹

 林檎のレベルは2。レベル1のボスは平良正だ。

 和樹は夜雀よすずめと戦った。

 夜雀は、高知県幡多郡田ノ口村(現・黒潮町)、富山村(現・中村市)、安芸郡北川村、愛媛県南宇和郡、和歌山県東牟婁郡本宮町(現・田辺市)などに伝わる鳥の妖怪。

 名前が示すようにスズメのように「チッ、チッ、チッ」と鳴き声をあげながら夜に現れる妖怪で、山道を歩いている人の前後について来るという。


 田ノ口村では、夜雀に憑かれるのは不吉とされる。富山村ではこれを除けるの呪文として「チッチッチと鳴く鳥は、シナギの棒が恋しいか、恋しくばパンと一撃ち」または「チッチッチと鳴く鳥を、はよ吹き給え、伊勢の神風」などと唱えると良いという。また、迂闊にこれをつかまえると夜盲症を患ってしまうという。


 安芸郡北川村では鳥ではなく黒いチョウのようなものといい、「チャッ、チャッ」と鳴きながら懐の中や傘の中に入ってくるので、騒々しくて歩くに歩けなくなってしまうが、気を静めると自然と消えてしまうという。愛媛でも同様にガの一種とされ、山犬の出る前触れとして、道を歩けないほどに飛んで来るという。


 和歌山の本宮町でも、暗い山道で姿を見せずに「チチチ……」と泣きながら、どこまでもついて来るものといわれる。また和歌山では、高知の伝承とは逆に不吉なものではなく、夜雀が憑いている間はオオカミが山の魔物から守ってくれる証ともいわれる。

 将門は戦闘開始から30秒くらいで夜雀を倒した。

「ヨエーヨエー」

 👹残り34匹


 宿泊先である奇神館は宇和島城のすぐ近くにあった。チェックインして、ロビーでアイスコーヒーを飲んでると、林檎が「宇和島城って誰が築いたの?」と尋ねてきた。

藤堂高虎とうどうたかとらだよ」

 宇和島城は、中世期にあった板島丸串城の跡に藤堂高虎の手によって築かれた近世城郭である。標高74メートル(80メートルとも)の丘陵とその一帯に山頂の本丸を中心に囲むように二ノ丸と帯曲輪、その北に藤兵衛丸、西側中腹に代右衛門丸、藤兵衛丸の北側一段低い所に長門丸を配置し、東側の中腹に井戸丸、麓の北東に三ノ丸、内堀で隔てて侍屋敷が置かれた外郭を廻らせる梯郭式の平山城となっており、各曲輪が山上部に散在している中世的な縄張りを色濃く残しながらも、山麓部には追手門や搦手門のように内枡形や喰違虎口といった近世城郭的な縄張りももつ。東側に海水を引き込んだ水堀、西側半分が海に接しているので「海城(水城)」でもある。


 現在、見られる天守などの建築は宇和島伊達家によるものであるが、縄張そのものは築城の名手といわれた藤堂高虎の創建した当時の形が活用されたと見られている。外堀などの外郭ラインが五角形となる縄張りは、幕府の隠密が江戸に送った密書(『讃岐伊予土佐阿波探索書』)には「四方の間、合わせて十四町」と誤って記され、この史実から高虎の巧みな設計として「空角あきかく経始なわ」の伝説が生まれたとされる。


 高虎の発想は、城を攻める側は当然方形の縄張を予想して攻めてくる。しかし実際は五角形だから、一辺が空角になる。つまり、城を攻める側にとって、完全に死角になってしまい、攻撃は手薄になる。いわば、この一辺の空角は、敵の攻撃を避けられるとともに、敵を攻撃する出撃口ともなり得る。そればかりではない。この秘かな空角は、物資搬入口ともなり、城から落ちのびる場合の抜け道ともなる。これは守城の作戦上、効果は絶大なものといえるだろう。当時の築城術でこのようなからくりを用いた城は他にはなかった。


 宇和島城には本丸天守から、原生林の中を抜ける間道が数本あり、西海岸の舟小屋、北西海岸の隠し水軍の基地などに通じていた。宇和島城には、間道、隠し水軍などの優れた高虎の築城術の秘法が、見事に生かされた城だったのである。


 城を囲む五角形の堀は高虎の後の大名にも代々受け継がれ、三大海城の一つと謳われたが現在は堀も海も埋め立てられており、その面影は大きく失われている。明治以降は大半の建物が撤去され、城郭は戦後「城山公園」として整備された。建物は、天守、追手門などが残されたが太平洋戦争中の空襲により追手門を焼失し、現在は天守(重要文化財)と上り立ち門(市指定文化財)、石垣と山里倉庫(城山郷土館)が現存する。

 奇神館は木造平屋建、屋根は多角形の寄棟造、桟瓦葺き、建築面積510.8平方メートル。附属屋は木造平屋建、桟瓦葺き、建築面積129.2平方メートルだ。

 2階の南正面にはベランダを設け、屋根上には左右2つの三角形のペディメント(破風)を設ける。建物東側にアーチ形の入口がある。

 

 館の門扉の前に怪しげな男が立っていた。黒いハットをかぶり、マスクをしていた。

「あなた! 何をしようとしてるの!?」

 林檎は大声で呼び止めた。

 

 

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