第13話 ゲーセンテロ

 坂口憲二似がまた外に出た。看板を『CLOSE』から『OPEN』に戻した。 

 再戦しようとしたら『GPSの信号を探しています』と表示されていて、キャラが動かない。和樹は体が震えていた。かなりヤバい人なのは間違いない。厄介なことが起きないうちに店から出るべきだ。半分くらい残っていたが、勘定を済ませて店を出た。雨は小康状態なっていた。

 店の外でもう1度試したら、今度は大丈夫だった。『どくけし』がなかったのが痛かった。イルカは毒死してしまった。セブンが正気になり、将門に再加勢した。セブンが呪文を唱えた。家鳴が『毒霧』を浴びて、150あったHPが100にまで減った。

 家鳴が将門を殴ってきた。将門、80→70

 イルカの顔のところには💀と表示されている。

 和樹はもう1度『猛虎』を召喚させることにした。今度はうまくいった。

 🐅『猛虎』は家鳴に飛びかかった。HPが100から50に減った。

 セブンの毒霧攻撃により家鳴のHPが0になった。

 家鳴は死んだ!

 残り59匹

 

 イルカを蘇生させないといけない!神社仏閣だけでなく病院でも蘇生出来る。星5つという条件がつくが。小康状態になったとはいえ、まだ暗雲が立ち込めている。雨を凌ぐには神社仏閣より病院の方がいい。坂東病院は評価が4.3、惜しい。

 

 薬局に行き、『どくけし』を手に入れたいが評価が2以上の店でないと手に入らない。丁度、ゲームのやり過ぎで腕が痛いので、湿布が欲しかった。ここから10分ほどのところに『しば薬局』ってところがある。評価は3.5だ。  

『しば薬局』でどくけしを手に入れた。さらに、温湿布を買った。

 帰ってきて手当をして荷造りをした。

 尾崎豊の『銃声の証明』をラジカセで聴いた。


 Wow… Wow… Wow…

 俺は貧しさの中で生まれ 親の愛も知らずに育った

 暴力だけが俺を育てた


 街角で娼婦の客をとり 路地裏で薬を売りさばき

 だけどそれも俺の仮の姿

 ある日 役目をまわされた 政治家を一人殺るやまさ

 跳べと言われれば 今の俺にはそれしか生きる術がない


 Woo 渇いた 銃声が奴の頭をぶち抜いた

 Woo 次は俺が殺られる番だ 何も訳など知らないままに

 

 和樹の母親、海絵うみえが小遣いを5000円くれた。

「宇和島でのセミナー頑張ってね」

「ありがとう」

 和樹は嘘をついてることに罪悪感を覚えた。

 これで用意するべき金は5000円になった。

「明日は高校時代のダチに会うから晩飯いらない」

 朝飯と昼飯代は家で食ったから浮いた。スマホのマップを調べて、家からほど近い歯医者が星5つだということが判明した。

 刑事をしている父は朝早くに職場に出かけていた。

「早く嫁さん見つけないとジジィになっちゃうよ?」

 出来合いのコロッケを食べながら海絵が、和樹を焦らせる。🧆

「あんまり急かさないでよ」

 自室で防弾チョッキを作ることにした。材料はまずハードカバーの本。そしてオーブン用のプレート、園芸用の石、ボンドとガムテープ。弾丸はまず石に当たって威力が減衰し、そして本によってストップする……という理屈で作られる。プレートにボンドで石を敷き詰め、その上から本をかぶせて……完成した。

 海絵には高校時代のダチに会うと嘘を吐いた。


 15時頃、自宅を出て歯医者を目指してマウンテンバイクを漕いだ。利根川沿いにある『ピータークリニック』っていう名前の病院だ。院長が外国人らしい。イルカを蘇生させた。

 病院からチャリで2分のところに『タイトーFステーション』というゲームセンターがある。待ち合わせの時間までは随分時間があるので、そこで時間を潰すことにした。平安大将棋の『奔車はんしゃ』を手に入れた。この駒は前後にいくらでも行け、成ると金将だ。

 この駒は朧車おぼろぐるまを召喚することが出来る。鳥山石燕による江戸時代の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』にある日本の妖怪の一つで、牛車の妖怪だ。

 石燕の画図では、半透明の牛車の前面の、本来なら簾がかかっている場所に巨大な顔のある姿で描かれている。解説文では、「むかし賀茂の大路をおぼろ夜に車のきしる音しけり。 出てみれば異形のもの也。 車争の遺恨にや。」とある。「車争い」とは、平安時代に祭礼の場などで、貴族たちが牛車を見物しやすい場所に移動させようとした際に牛車同士が場所を取り合ったことをいう。平安中期の物語『源氏物語』において、六条御息所が祭り見物の牛車の場所取り争いで葵に敗れ、その怨念が妖怪と化したという話がよく知られていることから、この話が朧車のもとになったという説がある。


 中世日本の説話集『宇治拾遺物語』には、加茂祭り見物のためにつくられた桟敷屋という小屋に泊った男が怪異に出遭う話があり、これが朧車のイメージに繋がったとの説や、その『宇治拾遺物語」を含め、百鬼夜行(夜間に様々な妖怪が列をなして闊歩すること)に類する話が多くの古典資料に見られることから、そのような百鬼夜行の類を石燕が「朧車」という妖怪として描いたとの説もある。「朧車」の妖怪画は牛車の前面を顔が塞いでいるが、江戸中期の妖怪物語『稲生物怪録』には巨大な老婆の顔が戸口を塞ぐ場面があり、構図が共通しているとの指摘もある。

 

 ゲーセンに入ると化け猫が現れた。山や里、建物の中に出現する。日本全国に分布している。

 ネコが妖怪視されたのは、ネコが夜行性で眼が光り、時刻によって瞳(虹彩)の形が変わる、暗闇で背中を撫でれば静電気で光る、血を舐めることもある、足音を立てずに歩く、温厚と思えば野性的な面を見せることもあり、犬と違って行動を制御しがたい、爪の鋭さ、身軽さや敏捷性といった性質に由来すると考えられている。


 動物の妖怪譚はネコ以外にも、ヘビの執念深さ、キツネが持つ女性への変身能力、民話『かちかち山』などで人を殺すタヌキの凶暴性などがあるが、江戸時代に入って都市や町場が形成され、人間たちが自然から離れて生活することが多くなると、そうした野生動物の妖怪としての特徴が、人間の身近にいながらも神秘性を秘めた動物であるネコのものとして語られることが多くなり、次第に化け猫のイメージが作り上げられていったとの解釈もある。


 また、化け猫の俗信として「行灯の油を舐める」というものがあり、江戸時代の百科事典『和漢三才図会』にも、ネコが油を舐めることは怪異の兆候とある。これは近世、行灯などの灯火用に安価な鰯油などの魚油が用いられ、ネコがそうした魚油を好んで舐めたためと見られている。また、当時の日本人の食生活は穀物や野菜類が中心であり、その残りを餌として与えられるネコは肉食動物ながらタンパク質や脂肪分が欠乏した食生活にあった。それを補うために行灯の油を舐めることがあり、行灯に向かって二本足で立ち上がる姿が妖怪視されたものとの指摘もある。


 こうしたネコの神秘性は、江戸時代の遊廓に勤めていた遊女のイメージとも結びつき、当時の草双紙などで人気を博していたキャラクター「化猫遊女」が生まれる元にもなった。


 茨城県那珂郡額田地区では、ネコが黒い雲に乗って遺体にいたずらしにくるという伝承がある。鱗勝院の住職が葬儀にいった際、西から黒い雲が発生した。読経をすると棺の上を黒い物が飛び跳ねたため、払子で打つと悲鳴を上げ雲をとともに去り、その後帰ると養っていたクロという名の黒猫が片目になっていた。住職は、ネコが魔物でいたずらするものと知っていたため、檀家に対し枕許に刃物を置くように伝えたとされる。


 和樹の先制攻撃だった。朧車はメチャクチャ強く、ゲームがはじまって数十秒で敵を倒した。

 その後、8匹の妖怪を倒し残り50匹となった。


 和樹は格ゲーやUFOキャッチャーなどをやって時間を潰した。18時、ガンアクションゲームをやっていた男が、スキンヘッドのキャラにアメリカ風の警官が撃たれてゲームオーバーになると、イライラしながら一旦退出。ガスマスクをつけ、防弾チョッキとヘルメット、ズボンを着用し、黒の戦闘用の手袋をはめ、拳銃2丁にライフル1丁、ショットガン1丁で武装した上で、開けたままにしておいたドアから再び館内に戻り、上映中だった館内の前方に立ち、催涙ガスを2本投げつけた。ガスが立ちこめる中、持っていた銃で逃げ惑う客に対して10〜20発の銃乱射を行ったほか、爆発音もあった。和樹はトイレの個室でウンコをしてる最中だったので無事だった。


 警察は青年を、ゲーセン裏の駐車場に停めてあった車の中にいたところを逮捕。青年の名前は卜部建といった。建が警察に対して自宅アパート3階に爆発物があると供述したため、室内の捜索を実施した結果、爆発物が発見されたため近隣住民を避難させた上で遠隔操作で処理を行った。発見された爆発物は化学物質などが含まれており、解体作業に数日を要すると思われるほど非常に精巧なものであった。


 事件当日に坂東警察署が犠牲者は12名、負傷者は59名が確認されたことを発表。

 

 約束の時間になった。秋らしくなり、草むらでスズムシやコオロギが鳴いている。夜風が心地良い。ゲーセンからほど近い、公園の公衆トイレの個室に入り、即席防弾チョッキを装備した。

 

『とらじろう』のドアには『CLOSE』と看板が掛かっていた。ヤバい品を売るってときに『OPEN』にはしどけないよな?

 和樹はドアをノックした。

 ドアが開いて例の男が顔を覗かせた。

「いらっしゃい。待ってたよ」

「あの、名前を教えてくれませんか?」

九鬼虎次郎くきとらじろう


 

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