第9話 あるゲームの決着

 4月8日(土)

 杏と梅子の葬式が済んだ。

 西瓜は母が作った朝食を食べ終え、冒険に出る準備をしていた。

 今日は土曜だからスマホを自由に扱える。学校へのスマホの持ち込みは校則違反だ。

「パパと買い物に行くけど、西瓜も行く?」

 キッチンで洗い物をしながらママが言った。

「食洗機で洗った方が水道代が節約できるよ」

 朝刊を読みながらパパがアドバイスする。

「行かねーよ!」

 反抗期真っ盛り。西瓜の鋭い口調にママがムッとした表情になる。

「普通に言えないの!?」

「普通に言ってるでしょ!」

 コロナのせいで校内はおろか、自宅でさえマスクをしないとイケない。ストレスは溜まる一方だ。漸く、世間は花見をしたり出来るようになったが、去年ママがコロナで入院したせいもあって、パパもママも、西瓜もビクビクしていた。

「まともに話もできない!」

 ママが泣きそうな顔になった。

 

 家を出て畦道を歩いた。桜が散り始めている。

 コロナは下火になったが花粉が酷い。

 マスクの繊維が顔に当たって痒い。中国に対し、西瓜は殺意を抱いた。あの国があんなことをしなけりゃ、ママだってあんな目に遭わなかった。

 10時過ぎ、浦島図書館にやって来た。浦島図書館は7年前より蔵書し、広くなった。星の数は4つだ。

図書館だけでなく公園でも武器をゲット出来るようになった。

 将門は冒険当初はステゴロだ。足軽兵ですら倒すのは大変だ。西瓜は家の近所にある浦島公園で短刀を手にしていた。ヤンキーが夜、公園に集まって花火や落書きをする為、評判は最悪で、ベンチや遊具が壊れている。

 

 ☆短刀

 ☆☆日本刀

 ☆☆☆槍

 ☆☆☆☆弓矢

 ☆☆☆☆☆鉄砲

 

 🏹角突弓つのつきゆみ - 田村語りおよび坂上田村麻呂伝説で藤原俊宗が使用した弓。また『田村の草子』『田村三代記』などでは神通の鏑矢を通して親子の確認がおこなわれる。

 

 つい最近、同級生が歩きスマホをしていて車に轢かれて死んでしまった。そのことを思い出したら怖くなった。図書館前の木製ベンチに座り、河童を2匹弓矢で射抜いて殺した。西瓜が倒した妖怪の数は9匹、新優勝者候補の木通(8匹)を抜いた。


 4月9日(日)

 西瓜に招かれ新宮邸を訪れた私立探偵の和樹は、池の前で血を流して倒れている男と銃を手にし傍らに立つ女という芝居じみた光景を目撃する。それは名探偵を歓迎するための余興ではなく、銃殺された枇杷島大地と、容疑者と思われる西瓜による本物の殺人事件であった。ところが、大地の命を奪った弾丸は、西瓜が手にしていた銃から発射されたものではないことが判明し、捜査は暗礁に乗り上げる。

 

 枇杷島はあれから河童を5匹も殺した。枇杷島、6匹。

 対する西瓜は天狗を2匹。西瓜、11匹。

 

 4月10日 (月)

 2月21日に発生した渡刈クリーンセンターのプラント内での火災に伴い、愛知県豊田市は処理能力が低下しているとして、「ごみ非常事態宣言」を発令。


 胡桃は学校帰りに『将門伝サドンデス2』で遊んだ。5匹しか倒していないからまだ、勝ち目はない。『こもれび食堂』ってとこにやってきた。枕返しが現れた!枕返しとは、日本の妖怪の一つ。夜中に枕元にやってきて、枕をひっくり返す、または、頭と足の向きを変えるとされている。具体的な話は江戸時代・近代以後に多く見られ、その姿は子供、坊主であるともいわれるが、明確な外見は伝わっていない。江戸時代の妖怪画集『画図百鬼夜行』には小さな仁王のような姿で描かれている。

 胡桃は光線銃を手に入れていた。光線や何らかの荷電粒子などを発射する銃のことである。

 長らく空想上の武器であったが、近年になり、実用化の段階に入りつつある。 現実の世界でレーザーが実用化されたのはあくまで1950年代ころであるが、『光線銃』やそれに類するアイディアはレーザーの実用化の半世紀ほど前からあったと言ってもよい。

 胡桃は枕返しを撃破した。胡桃、6匹。

 腹ペコだったからハンバーグが食べたい。

 レストランでは回復が出来る。『こもれび食堂』のランクは星4つだ。胡桃は将門に『アイロン』と名づけていた。『アイロン』はHPが☆になっていた。☆☆☆☆☆になった。

 

 酸塊は胡桃の姿を見つけた。次の標的はアイツだ!

 酸塊の現段階の倒した妖怪の数は5匹だ。

 酸塊の家は貧乏だった。父親は印刷会社の社員だったが、リストラされてしてしまった。以前は優しかったが、それ以来荒んでしまい、酒浸りになり母親や酸塊を殴るようになった。

 さすがにレストランの前で殺したらバレバレだ。

「胡桃。何、校則違反なことやってんだ!?」

「スマホ持ってきたことは謝ります。だから、先生たちには言わないで!」

「梅子に次いで、枇杷ッチまで殺されちまった。犯人は誰だろうな?」

「知りませんよ」

「西瓜は退学処分になるみたいだ。枇杷ッチとイケない関係になったんだ。当然だよな?」

「両親は旅行中だったようです。酸塊さんが部長になって文芸部も安泰ですよ」

 胡桃は説教タイムから逃げたくて仕方がなかった。ゴマすんないと大変だ。酸塊は生徒会長でもある。

 それにしても、枇杷島を射殺した直後に西瓜が買い物から戻って来るとは思わなかった。

 天井裏に逃げ込んだからよかった。西瓜は新宮財閥の令嬢だ。新宮邸は山城を改装したものだった。

 テレビや映画に出てくるような探偵がやって来るとは思ってもみなかった。

 あのチャカは親父の部屋の、机の抽斗ひきだしから見つけた。梅子は夫が帰ってくる前に殺して、ワゴン車を運転して逃げた。

 

 4月11日

 消費者庁、大幸薬品に対し、同社が製造・販売し、空気中のウイルスや菌を除去できるとした『クレベリン』の表示や広告には根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして、6億744万円の課徴金納付命令。同法に基づく課徴金命令額として過去最高額。


 印南邸のメイドが「書斎に死体がある!」と言って夫人の印南池子いんなみいけこを起こす。池子は夫のうなぎを起こす。鰻は書斎の暖炉の前の敷物の上に、若い女性の死体を発見する。鰻は警察を呼び、林檎と蜜柑が派遣されてくる。


 この死んだ若い女性の身元を確認しようと、林檎は近くの学園に向かう。

 やがて、勝神胡桃って2年生であることが判明した。

 検死の結果、胡桃が前日の夜10時から0時の間に死亡したこと、薬物を投与された後に絞殺されたこと、性的虐待を受けていないことが判明する。

 

 4月15日

 浦島警察署刑事課の虎尾真とらおまこと警部補、後藤柘榴ごとうざくろ巡査部長、蓮城果林れんじょうかりん巡査は夕闇の印南邸を包囲していた。

 酸塊は屋上からスナイパーライフルをぶっ放し、3人を射殺した。果林と後藤は結婚間近だった。

「地獄に行って杏をもう1回殺す!」

 酸塊は遊びに来ていた木通を撃ち殺し、銃口を口に咥えた。ドンッ!!

 


 




 

 

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