第6話 トライアングル

 2023年4月1日(土)、昼過ぎ。和樹は浦島駅東口のネット喫茶にやって来た。

 ニュースを見た。

 こども基本法施行。

 

 こども家庭庁発足。初代長官に同庁設立準備室室長の渡辺由美子が就任。

 

 宮内庁に広報室を新設。


 改正道路交通法施行。この日以降公道における自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務化。


 文部科学省が同年3月17日に各教育委員会に通達した新指針により、この日から始まる新学期以降、小中高校の児童生徒や教職員に新型コロナウイルス感染症予防策として求められていたマスクの着用が原則不要となる。ただし基礎疾患があるなど引き続き着用が必要な児童生徒や、それ以外でも登下校時に混み合う電車やバスに乗る際、病院・高齢者施設を訪問する校外学習などでは引き続き着用を推奨する。


 幼稚園、幼稚園型認定こども園、特別支援学校、幼保連携型認定こども園、保育所、保育所型認定こども園の送迎バスに、置き去り防止を支援する安全装置の設置義務化。違反者には業務停止命令(1年の猶予期間付き)。


 中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が25%から50%に増加。

 

 和樹は都市伝説について調べていた。

 ある日、掲示板に『アーサー』を名乗る人物の書き込みがあった。その内容は、半盲の老人からファミコンソフト、中古の『幻想将門伝』を買ったところ、中には『イトウ』のデータセーブが入っていた。データを起動してみると、クリアの直前で止まっていた。その後、アーサーは新たなセーブデータを作ってゲームを始めるが、あるバグ技を試したところ、バグ技を行った場合の展開とは全く異なる現象が起こり、主人公平将門の影や、ゲーム内で重要な役割を果たすが、通常は一定の場所から動かないはずの『源頼光』というキャラが将門を追いかけ、最終的に将門が死亡した。さらに、データを上書きしたはずの『イトウ』という名前のデータが復活しており、その上に『YOUR TURN』というデータがあった。恐ろしくなった彼は、このゲームが何なのか、確認のためにソフトを購入した老人に会いに、静岡県にある黒狼こくろう町にやって来る。

 隣人の老婆にイトウという名前を聞いたところ、3年前の2020年に伊藤という派遣社員がコロナで亡くなったことを知らされる。

 アーサーは家に帰り、ゲームを再開するとデータが勝手に進行しており、データをロードすると、ゲームの内容も変わっていた。『マカベ』というフィールドには影、ウキタ、エンドウといういるはずのない3人組のキャラが並んで出現した。

 

 また、海辺ゾーンで主人公の将門が変身する。泳ぎが得意な将門が影と遭遇すると同時に溺死してしまう。


 やがて、ゲームは現実の中にまで侵食し夢の中や背後に影が現れ、彼を追いかけてくる。

 食事もせずに憔悴してしまう。


 午前7時前頃、浦島市の農道脇の草むらにおいて、被害者、姉子杏あねこあんずが首に携帯ストラップが巻き付いた状態で倒れているのを車で通りかかった50歳男性が発見。発見された時点ではまだ息はあったものの、その後搬送された病院にて死亡した。死因は携帯ストラップで首を絞められた事による窒息死で、現場から靴が見つかっていないのにも関わらず靴下が汚れていない事から別の場所で首を絞められた後遺棄されたと思われる。また、着衣以外の携帯などの遺留品は見つかっていないが、杏が使用していた自転車は現場から600m離れたコンビニにて、カゴの中にプリンの入ったコンビニのビニール袋が入った状態で発見されている。

 杏は『将門伝サドンデス2』に参加していた。

 あのときはラスボスをいち早く倒した者が勝ちだったが、今回は4月30日までに妖怪をたくさん殺した者が勝ちになる。報酬は50万だ。


 俺は、トライアングル社にバイトとして潜入し、デスゲームを運営するための準備を進めた。最初は、俺は周囲の人々と協調的に働き、自分のアイデアや考えを提案し、会社の業務に貢献していった。

 俺は社長の前でプレゼンをした。

「将門伝3のストーリーは、平将門が起こした乱において、生き残った人々が一定期間、生き抜くことを目的とするものです。ゲーム内には、様々な場所や施設が用意され、参加者たちはサバイバルキットを与えられます。このサバイバルキットには、食料や医療キット、武器などが含まれています。

ゲーム中には、生き残りを守るための施設や、食料や医療キットの場所を確保することが必要です。また、ゲーム内には、他の参加者たちとの戦闘や、平将門軍との対決、地震や自然災害など、さまざまなイベントが発生します。これらのイベントに対処するために、参加者たちは機敏に行動し、戦略を立てて生き残りを目指します。

平将門自身もゲーム内に登場し、参加者たちと対決することがあります。彼に勝利することで、大きな報酬やアイテムを手に入れることができます。

このゲームは、生存者たちが互いに協力し、トラブルや災害に遭遇した場合には助け合いをすることが重要であるという、チームワークを強調したサバイバルゲームとして人気を集めることでしょう。また、歴史的な要素が取り入れられたことで、日本の歴史に興味があるプレイヤーにとっても魅力的なゲームとなるかもしれません」

 社長は大きな拍手をしてくれた。

「君の考えはなかなかユニークだ」

 また、『将門伝サドンデス』の参加者のプロフィールを入手することにも成功した。

「社長……」

 古参社員の村田優作むらたゆうさくが挙手した。

「どうした、河童」

 円形脱毛症なので、社長から河童と馬鹿にされていた。

「藤原秀郷を主役にするというのはどうでしょう?」


 しかし、しだいに俺は、デスゲームを企画していることが明らかになったことに対してモラルや良心の呵責を覚えるようになった。俺は、ゲームをクリアして賞金を得るために参加する人々に危険が及ぶことを知り、デスゲームを中止しようと試みたが、それは不可能なことだという事実に直面した。

『トライアングル』の社長、津田沼男つだぬまおの父親、津田文彦つだふみひこは防衛省の人間だ。デスゲームは敵国に備えるための、民間人の軍事訓練の一貫だったのだ。1945年、アメリカやイギリスをはじめとする連合軍に敗北したことにより、日本は戦えない国となった。いわゆる、ポツダム宣言だ。日本の武装解除、非軍事国化、民主化、国際社会への復帰等について述べている。 ポツダム宣言は、1945年7月26日に日本に勧告され、日本政府は翌8月に受諾し終戦を迎える。

 長らく日本は戦争とは無縁だったが、北の台頭やロシアとウクライナの関経の悪化をきっかけに軍事力の強化を余儀なくされた。

 俺は自分自身を律することが非常に困難になり、デスゲームに参加する人々の命を救うために何か手を打つ必要があると考えるようになった。俺は、内部からデスゲームに対する抵抗運動を起こす決心をした。


 俺は、他のゲーム会社との連携や、メディアへの声援、そして同僚たちに呼びかけることで、デスゲームの中止を促進しました。この取り組みは、会社内での難しい人間関係や、沼男の脅迫などに抗しながらも、多くの人々の協力を得ることに成功した。


 

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