第460話 山で鬼ごっこはやめましょう


遠目にうすーく全体を見るようにすると、何故だかエリア名が表示されることに気が付いた。


たぶん、視覚系ユニークスキルが仕事してるんだと思う。便利なのは良いことだ。


「にゃっ」


裏側っぽい。


山なので入り口から見える表側と裏側がある。たぶん側面もハッキリとは見えてないので移動中に確認しなきゃだ。


夏の藪は秋になるとちょっと茶色が混ざった藪になってるし、何故か鈴虫とかコオロギとかが大音量でコンサート開いてる。ぶっちゃけうるさい。


ここまできたら音色じゃなくて騒音。しかも、コイツらの音をずっと聞いてると眩暈からの昏倒までいっちゃうのだ。


ただ、1匹2匹ならまったく問題ない。うるさいだけのモンスターである。つまり雑魚。


昆虫なので無駄に固いのはあるんだけど、ドロップ品が鈴とかミニチュア楽器シリーズとかなのでなるべく倒すのは遠慮したいのが本音。


因みにミニチュア楽器シリーズはちゃんと使える楽器ではあるけど犬猫サイズで人間には使えない……いや、使いにくい。うん、まぁ変な楽器使いの人ってどこにでもいるもんな。


ミニチュア楽器シリーズ使って演奏してみた動画とかあった気がする。


「キュー」


マスターの真似魔法。とヤクシが容赦なく虫達を殲滅していく。


「うにゃー」


そういえば虫が音を鳴らすのは求愛行動とか聞いた気がするんだけど。


「モンスターだからな、普通に攻撃では?」


『お見合い会場だったらーウケるー』



進む方にだけ水ブッシャーしてるけど音が止まないから攻撃なんだろうと納得した。


「というか、何故こんな小さな楽器を虫がドロップするのかまったくわからん」


「にゃー」


たぶん芸術の秋。


「………あー」


なんか『それかー』みたいな反応された。


いや、食い物多めなのは食欲の秋だと思うぞ?ほらダンジョンってその国の文化的なものも考慮して出てくるからさぁ。


どこかで読書の秋担当モンスターも居そうなんだけど、探してまで確認しようとは思わないんだよな。


読書するなら電子書籍のほうが読みやすいんだ、ほら俺の手って本を読むの難しいだろ?


元々コレクター気質だったから書籍のほうが好きではあったんだけど、身体的な問題だから仕方ないよな。



「にゃっ!」


ドングリエリアあった!


とうとう見つけたぜ!冬に葉っぱが落ちない種類のドングリの木って常緑樹だし、秋だと黄色というか枯れ葉色に変化するやつもあるけどここのは緑のやつだ。


だから目立つんだよなぁ!原色赤と黄色の斑模様はさぁ!


「うにゃぁ!」


豚居たー!


「おいまて俺のところに誘導するんじゃないのか!?追い掛けて行ってどうする!」


ハッ!ついテンション上がって何も考えずに豚に近づいてしまった!


「キュー!」


そのまま走って!


『気が付かれたのでーもう遅いーってやつなのよー』


マリモちゃん、それ追放物の影響受けてない!?


擬態しててもマリモちゃんが案外アニメとか把握してる事実を今知った。


俺達見つけて逃げる豚さんを追い掛けて、山の中に突入。俺とヤクシは小さいのでスルスル移動するけど、マリモちゃんは普通に木を魔法で曲げて木にマリモちゃんを避けさせるという荒業を使ってる。


因みに、飛べはするけど大きくて小回りが俺達に比べるときかないグレイが一番遅い。


ただ、誰も山の傾斜を気にしないので確実に豚さんに追い付いている。てか逃げ足が速い!回避が凄い!走りながら後ろから飛んでくるヤクシの魔法を避けてやがる!


だがしかし!俺達には植物魔法があって、ここは木が沢山ある!つまり、良い感じに根っこで豚さんの足をはらうことができるのだ!


「にゃっ!?」


ジャンプして回避だと!?


くっ、この豚さん、派手な見た目と引き換えに回避と危機察知と逃走に全フリしてやがる!強くはないのに倒せないとかいうヤバい豚さんだった!

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