第455話 グレイは複雑な気持ちを覚えた


俺は猫なので人でなしは悪口にはならないけど、人の心は知ってるのでグレイのように勉強する必要はないのだ。


「まぁマスターは猫だからな」


と、何かに納得してムービーの続きに集中し始めたグレイ。


『ガァァァァァアッ!!』


『N!?』


Rの近くに居た子供、Nが奇声を上げながら人間とは思えないほどの脚力で跳び上がり、離れた場所で銃を構えて子供たちを囲う軍人達の壁を越え、Bと話していた指揮官らしき軍人に組み付いた。


迫り来るNの顔のアップが映されたんだが虹彩は赤く変化し、顔には血管が浮き出て脈動し、奇声を発する口からは血液混じりの唾液が流れ出ていた。


『がっ!?やめろ!俺をっ!』


『ガァァァァッ!』


組み付いたNは軍人に噛みつき、それを呆然と見ている子供たちや軍人達が映し出された……咀嚼音やら悲鳴やらをBGMにしてるが、グロいシーンは無い。


「……これRがやったのか?というかバケモノに変化しない?」


「うにゃ」


ここ選択肢だぞ。


ここ、分かりにくいけど動けるのだ。そして軍人かBのどちらにインタラクトするかで次のムービーが変わる。


「え?あー軍人とBに話しかけるアイコン出てきてるな……え、どっちだ?」


因みにBだと騒ぎに乗じて逃げる、軍人だと銃を奪って軍人皆殺しである。どちらにしても逃げるけどエンディングのルート分岐なんだ。


「普通、Bだよな?」


というわけで、騒ぎに乗じて逃げる……ついでに軍人に気がつかれて子供が1人撃たれます。それを見たRは丁度良いとばかりに赤い目に変化して撃たれた子供をバケモノに変化させてBと逃げるのだ。


「嘘だろ……」


「うにゃ」


後でチャプターから別の選択肢選んだ場合からゲーム再開できるぞ。


「……何回もやりたくないんだがぁ?」


凄く情けない声出てきたな?グラフィック綺麗過ぎて表情がわかりやすくて心が抉られると評判だったから選んだんだけど、大正解だな!


ショックを受けてるセリフを言うBの声をBGMに淡々とRを操作してクリアしていくグレイ。


まさか自分たちはバケモノなのか?とか、どうしてあの子達が…とか、Rだけでも守りきるとか、プレイヤーの心を抉りにきてる。


「キュ?キュー」


Rの怪しさに気がつかないとか鈍感過ぎでは?とか言わなくなったからグレイも成長したよね。とヤクシがグレイを褒めているが、グレイは死んだ魚のような目をしながらゲームを進めてる。


そして、最終ステージにはボスとして研究所の所長が出てくるのだ。


因みに、ゲーム内で進んでる道はそういう仕様なのだが、上に向かって行ってる。だから最終的に辿り着くのは所長専用の研究室である。


『よくここまで来たね?だがお遊びはおしまいだ。君たちをここから出すわけにはいかないからねぇ?わかっているだろう?君たちはバケモノだ、そんなものを世に放つわけにはいかないのだよ』


『そんなっ、だったらなんで俺達をっ!』


『実験するためだよ、私の作ったエデンブラッドが人類に福音をもたらすための実験だ!強靭な肉体、驚異的な身体能力、永遠の若さ、人類は更なる進化を果たし繁栄する!そのためのエデンブラッドだ!だがエデンブラッドは強すぎた、人の肉体を破壊する勢いで変化してしまう』


『まさか…』


『そう、君たちはエデンブラッドの調整のために作られた子供だ……まぁ私も鬼ではないし少子化も問題ではあるので、エデンブラッドによる変化が全くみられない個体は廃棄ではなく軍事関係の孤児院に送ったが』


『え……』


「え?」


うん、そうなのだ。次々消えた子達は変化がありすぎた子供は処分されてはいるが、変化無しなら研究所の外で普通に暮らしているのだ。


元々子供達全員にエデンブラッドが使われていて、バケモノになる可能性があるけど適応する可能性もありという子供達だけが最後まで残っていたというわけなのだ。


これ最初にみた時、Bが主人公では?って思ったんだよね。だって絶望顔が酷いし、話してるのBだけだし、Rは我関せずな感じなんだもの。


『なるほど、産まれた時点で調整は終わっていて、経過観察状態だったんだな?密かに薬などが食事に混ぜられて様子を見られていたのではないかと疑っていたが…』


急に長文を話し出したRはにっこにこだった。


『ならばもうここに用は無いな』


そう、宣言したRは目を赤に変化させてBを破裂させた。


「おいぃぃっ!?」


今日一番の悲鳴だった。

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