第454話 人間の心はある


「よっしゃ2面もクリアだ」


クリアしたところで、ムービーである。


『見つけたぞ!捕獲しろ!』


軍人がRたちを囲み、軍人たちの近くに居た子供が1人捕まった。


『薬は先に使っておけ』


プッシュ型の投薬器を首に押し付けプシュッと音がして、捕まった子供は恐怖で泣き叫んでいる。


『嫌だ!あぁぁぁ!嫌だぁぁぁっ!』


『あ……ぁぁ…J…』


「あ、そういえば薬のせいでバケモンになるって勘違いしてたな。Bの顔が凄いことになってる」


「うにゃ」


絶望とか諦観とかだな。


『………あっ』


粘液の音と何かが弾ける音がして、掴んでる軍人を巻き込みながらJは腐った肉の塊のようなバケモノに変化した。


『チッ!研究部は何をやってる!薬が効いて無いぞ!』


『総員撃て!』



『くっ……J……今のうちに逃げるぞ!』


軍人たちがバケモノに気を取られている間に、Bは皆を連れて逃げた。


そしてまた続きだ。


「………嫌な予感がするんだが、もしかしてクリアする事に人数減っていくやつなのか?」


「にゃぁ」


お手伝いさんが1人になっても大ジャンプは出来るから問題無いぞ。


「マスター、人の心無いんか?」


「うにゃ?」


猫の心しか無いが?


そもそも俺はゲームで感情移入する事ってそんな無いんだ。ストーリーは1回見ればいいし、その後のトロフィーとか隠し要素とかを探して揃えるほうが楽しいタイプだから。


ゲームのキャラとゲームの世界を自分のこととして考えて行動しないし、クリアを目的として、ついでにシナリオも楽しむみたいな?


別に人の心が無いわけじゃないからな?


「先に進めたく無くなるゲームとかゲームとしてどうなんだ?」


そんなことをブチブチ言いながら、3面をクリアした。


『そこまでだ!お前たちは処分が決定した!研究部は渋っていたが薬が効かないならお前たちは危険過ぎるからな!制御出来ない力は必要無い!』


「銃を構えた軍人に囲まれたんだが?」


グレイがもう子供たち目線でソワソワしてる。ジーッと画面から目を離さない。


ここまで、ムービー内ではBがゲームの主人公が如くBに視線が寄っていた。Rは目立たない感じで皆の後ろに居て、ちょっと見切れてる時もあるような感じだ。


それが、自然にゆっくりRを画角におさめて、ピントをRに合わせにきた。


軽くうつむき加減なRが、スッと顔を上げると両目の虹彩が赤く鈍く光っていた。


「うえっ!?」


「キュ」


それで驚くんだ。とヤクシはグレイにビックリしてる。確かにゾンビゲームでは表に出すほど驚かなかったのにな。


まぁ今まで普通に焦げ茶色だったRの目が急に変化してたら驚くよな。



妖しい目のRは、一番近くに居た子供を見ながらパクパクと口を動かして、次の瞬間には普通の目に戻っていた。


『そんなっ、皆をバケモノにしたのはお前らだろっ!なんだよ処分って!俺達にだって生きる権利はある!』


『ふんっ、研究材料の分際で……お前らを生かすも殺すも我々の権利!お前たちは我々が作った道具に過ぎない!何を勘違いしている!』


「うにゃぁ」


俺こういう時話なんかしないでさっさとやっちゃえば良いのにって思っちゃうタイプ。


戦隊物とかの変身シーンはお約束感があってテンションにより待つ時もあるし、さっさとやっちゃえな時もある。


「猫のマスターのほうが人間の感情学んだほうが良いのでは?」


いや、元人間なんで人間の感情なら既に所持してるが?

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