第419話 季節ダンジョン 12階ボス


エリアボスは鳩で、なんなら飛ぶ。ボスエリアの限界みたいな透明な壁で遠くに逃げたりはしないけど飛ぶ。余裕で5、6mは飛ぶ。


何気に飛ぶボスは初ではなかろうか?これはあれか?逃げるな卑怯ものぉ!とか言ったほうが良いのか?それとも降りてきなさい!とか?


エンタメとなるとネタをやったほうがいいのかと考えていたんだけど……


「キュー!」


邪魔!とヤクシさんが鳩をひいた。そしてそのまま山を下って森へと消えた。



飛ぶモンスターとどう戯れようか考えてたのに、到着と同時にひき逃げの現場を見てしまった俺とグレイはしばらく動けなかった。


「にぃぃ?」


そんなことあるぅ?


「えぇぇ?ヤクシ先輩ぃ?」


鳩、ひき逃げされたあと吹き飛んでボスエリアの透明な壁にぶつかってべしゃっと落ちて消えた。


区切りとしてボスエリアの壁を設定してあるんだと思うんだけど、透明な壁の癖にボスモンスターはぶつかるようだ。これ、悪さし放題では?ハメ技できるぞ?


「大部分はヤクシ先輩の突進ダメージだとしても壁への激突と地面への落下ダメージが加わって倒せるって12階のエリアボスにしては弱い気がする」


「うにゃにゃにゃ」


毎階層に居るんだからそんなもん。


エリアボスというか、門番的なものだと思ってる。その階層の代表的なモンスターもしくは一番レベルが高いモンスターなだけだと思うんだよね。


……深層の予行練習にどうぞ!って出されたみたいなダンジョンであるのは気のせいだ。予行練習にしてはエリアボスの場所がわかりやすいから、本当にたぶん気のせいだ。


「ドロップ品は魔石だけみたいだな」


「うにゃ」


宝箱開ける。


門番だと思えば宝箱が出てくるだけ良心的であると思う。俺の幸運を持ってしてもアイテムがショボいのは仕方ないことなのだ。


「うにゃ」


頭が痛くならない氷が作れる製氷機。


20cmくらいの箱型、上の面に魔石を入れるスライド式の入れ口があり、その真ん中には水を入れる穴がある、そして赤と緑のランプがあって、側面には取り出し口と書かれたひきだしの取っ手が付いていた。


「頭が痛くならないとは?」


「うにゃ?」


かき氷じゃないか?


頭がキーンてならない氷とか、あるらしいぞ?俺は猫になってから熱すぎるのとか冷たすぎるのとか、なんか苦手。ぴぇっ!?ってなる。


「なるほど?」


あぁ、グレイはキーンてならないもんな。ご主人もかき氷かきこんだりしないし。ちょっとよくわかんないですって顔にもなるか。


「うにゃ」


それよりちょっと休憩しよう。


グレイにレジャーシートをひいてもらってから、その上にひえひえクッションを置く。


ふふんっ、俺に抜かりは無いのだ!ちゃんとひえひえクッションを持ってきている!


グルグルゴロゴロと喉がなっちゃうくらいリラックスしてしまうが、エリアボスを倒した後の広場は安全地帯なのである。


クッションはデカイので、俺が乗ったあとでも小さめなトレイなら置ける。そのトレイには水とおやつがのっているのだ。


今日のおやつは魚ジャーキーと名付けたグレイお手製のおやつである。たぶんすり身にして薄く伸ばしてから蒸して、乾燥させたようなやつである。


別に普通にすり身でも良いのだが、グレイにとってちょうど良い暇潰しらしくて色々加工してる。


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