第379話 28階 卵でなく違和感を探せ
「これ、部屋ごと焼き払ったりしちゃダメなのか?」
遂にグレイが言い出した。だが残念!
「うにゃぁ」
卵はな、頑丈になる付与がされてたりサイズ変更されてはいるが、普通の卵の殻に色付けしただけの物なんだ。
魔法に対する付与はされてないので普通に燃えちゃうのである。見つけた分の卵は確認してるので他のもそうだと思う。
卵形の何かだと思ってたのに、イースターエッグイベントの仕様に忠実なのなんなん?それよりどうやって卵の殻を入手したのだろうか?
俺が言うと、グレイは……いやヤクシもマリモちゃんもとても残念そうだった。
そもそも付与もどれだけ頑丈だったりするのかわからんのである。端から地道に物を出しといて良かったよな、中に入って探すとかしたら重さに耐えられず卵が割れてたかもしれん。
それにしても……隠し場所が巧妙だなぁ。電気で明かりがつくろうそくの燭台の、炎の部分が1つだけ卵になってたりする。ご丁寧にカモフラージュペイントまでされてて、ちょっと丸みをおびてるな?と違和感を感じなければ見落とすやつだ。
「キュー!」
ねぇ扉が出てきたよ!とヤクシに言われて中に入ると、どうやら奥の物を手前に移動していたようだ。
奥のほうで天井付近までゴミが山積みされていたのをどかしたら出てきたらしい。
『つまりー卵を見つけなくてもー次の階層には行けるってことー?』
「……それはそれでなんか悔しい」
「にゃにゃ」
せっかく16個まで集めたんだからクリアするぞ。
俺の鑑定がある分俺達は楽なんだ。これを一つ一つ自力で見つけなきゃいけない普通の探索者に比べたら……俺達が諦めるわけにはいかない!
そう、決めたんだが……卵に人間の手足付けたキャラ人形っぽいのはどうなの?卵の殻に着物みたいなペイントと、平安美人顔みたいなうっすい顔が描いてあって、肌色の粘土っぽい手足が付いてるのだ。
これ、手足をブチッと取らなきゃいけないやつだよな?いや、猫は虫の足とかブチッとやるけれども……我お利口猫ミロクであるからして、虫の足もブチッと出来ない(モンスターは除く)都会っ子な家猫なのだ。
いや、まぁ、やるけれども。人形の手足千切るとか罪悪感ハンパねぇ!
あと、顔が日本人形っぽくて呪われそう。
因みにこういう変なのは少なくて、大抵はゴミ袋の中に入っている。そういう卵の殻は可愛くカラフルにペイントされているのだ。
卵の殻のデザインに力入れるくらいならゴミ部屋どうにかして欲しいわぁ……
「よし!これで最後のゴミだ!」
漸くか!えーと………無いな?
「にゃ」
無い。
「キュー!」
じゃあ終わりだね!と喜んでるとこ悪いけど……
「うにゃ!」
あと1個足りない!
「「『………』」」
うわ、スン……って表情無くなったぞ。
「うにゃぁ」
大丈夫、俺が部屋に入って探すから。
あからさまにホッとした顔しやがって……まぁ、大変そうだったけどな。
さぁて、中に入って真ん中でぐるりと一周見回した。パッと見は無い。
とりあえず壁から確認だ、罠察知とかも反応はなく、壁の穴に卵が隠されてるとかでもない。
床も、床下収納があったりするわけでもなく、変に凹凸がある場所もない。ということは天井…………
「うにゃ」
お前ら今まで無かったものあるじゃん。
ぶら下がり型の電灯、ご家庭にあるような、かさタイプである。
今までの部屋では謎光源によって明るかっただけで電灯は無かったのだ。
「あ」
「キュ」
『あらー?』
調べてみたら保安灯の電球部分に卵が填まっていた。
グレイに取ってもらって、28個の卵を集め終わった瞬間、パンパカパーンと音がなり、宝箱が出現した。
それも2つ!さっそく開けると……宝箱いっぱいのスイーツだった。なんというか、宝箱が重箱みたいに分裂したのだ。宝箱の山型部分に数種類のケーキ、2段目にはヒヨコデザインの容器に入ったプリン、3段目に数種類の焼き菓子といった構成だ。
そしてもう1つの宝箱には……発毛剤が1ダース入っていた。もちろんダンジョン産なので、効果は保証されてるやつだ。
……将来の、ご主人に、必要、かなぁ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます