第320話 中ボスの宝箱


「はぁ……」


「キュ……」


はぁ……


『これしきのことでー全滅してしまうとはー情けなしー』



最後の1体を倒し終わったあと、グレイもヤクシもため息ついて、マリモちゃんは文句を言った。


あれだけ暴れたのに満足してないらしい。


ドロップアイテムはお察しだが、宝箱は皆の機嫌がなおるような物が出ることを期待する。


全員分の宝箱が出たので、なんか良い感じに嬉しくなるような物が出ればいいなと思いつつ、このダンジョンのセンスで選ばれる俺達が欲しがりそうなアイテムに不安を感じている。


なんかマイナス方向に行きそうな予感がひしひしと!


「うにゃ!」


まずは俺が開ける!


生け贄になるような気持ちで宝箱を開けると……


「にゃ……」


完全栄養フードのレシピ……


全動物対応、1粒で1日の必須栄養素を全て補給でき、満腹感も1日続く。スーパーフード!


「うにゃ!」


コレジャナイ感!


「ですよねー」


「キュー」


このダンジョンには期待してない。


『いらないやーつ』


俺の宝箱の中身を確認して、それぞれブツブツと文句を言いながら宝箱を開けた。


グレイが中級ダンジョン~上級ダンジョン中層まででも使えるドール用の装備レシピだったが、グレイの装備はヤクシの毛とか使って俺が作ったのでレシピの装備より優秀なのだ。


ヤクシは何故か中級ダンジョンモンスターに効く毒薬のレシピ本。


ヤクシは毒(言葉)は吐くが毒薬は使わないぞ。


そしてマリモちゃんは化学肥料(普通の植物用)のレシピ本だった。


マリモちゃんはモンスターなので普通の植物用の肥料は意味がないのだ。


「にゃー」


かすってるようでかすってない。


普通に当たりの部類だとは思うんだけど、俺達は使わねぇなって物ばかりだった。


こ、これは更なるストレスをためたのではないだろうか!?


もう目が据わっているような気がする!グレイまで分かりやすくいらっとしてるんだぞ?そういう感情の学習も必要ではあるけど、荒んで欲しいとは思ってないんだが?


「このダンジョンにはわからせないといけない」


「キュキュー」


何でこんなダンジョンを残してるのか全くわからないよ。


『魔苔たちよー今こそ侵略のときーじわじわとー増えてムシムシとさせるのだー』


マリモちゃんは呪いっぽいの止めろ?ボス部屋に魔苔の塊植え付けて増やそうとするの止めろ?高村に怒られるだろ?


「にゃぁん」


こんなところにもう用はない、帰るぞ。


とりあえず、皆をここから連れ出そう。皆が怒ってるから俺は逆に冷静になったというか、皆にドン引きしたというか…


世の中にはクソゲーというものがあってだな?そういうゲームを嗜んでた記憶がある分、俺はこういうのに耐性があるみたいだ。


俺もなんだかなぁって気持ちではあるけど、皆ほどイライラしてないのだ。


「うにゃにゃぁ」


クソゲーもやってるうちにクセになるから、クソゲーでしか摂取出来ない栄養があるから。


慰めのつもりで言ったのに、何言ってんだコイツ?って目で見られた。


解せぬ。

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