第307話 お裾分け返しを思い付いた


鶏が大群でやって来て、あっという間に囲まれました。


「なんで囲まれるまで待った!?」


と、田中さんが全包囲バリアで鶏を防ぎながら叫びました。


「いや!俺は副ギルド長が先陣切るかと思ったんやけど!?」


確かに何か言いた気にチラチラ見てきましたね。


「いえね?先頭の鶏を倒したら、ドロップ品が後続に踏まれるかもしれないでしょう?」


「マジかお前!」


ちゃんと理由を話したのに田中さんは嘘だろ!?とか言ってます。


「えーと、倒して……倒します!」


なんか駄目だコイツらみたいな目で私と田中さんを見た佐藤さんは、対多数用の技で鶏を倒していきます。


「高村と一緒にすんなよ?俺はちゃんとカウンタータイプのバリア張ってるし仕事してんだよ!」


「あ、ホンマや……すんません、基本ソロやからタンクに詳しく無いんですわ」


「失礼な、私は仕事してないのではなく佐藤さんや田中さんの経験値を増やしているだけです」


「その配慮今いらんのですわ!」


ツッコミしながらも正確に矢を放ってますね。佐藤さんって何気に優秀な狩人なんですよ。


「俺は鶏肉目的で来たんじゃねぇし、レベルアップ目的でもねぇから別にいらねぇぞ」


「そうですか、では遠慮なく」



いらない配慮だったようなので、バチッと雷拡散攻撃で処理しました。


「一撃やないかっ!」


「うわ、肉が散乱してる……」


「では拾いましょうね」


やはり囲ませてから倒したお陰でドロップ品も散らばらず、あちこち歩き回らずに済みました。


優秀なタンクが居るから出来ることです。神木じゃこうはいきません、やつは自動バリアなのを良いことに大群に嬉々として突っ込んでいくタイプです。


「俺、肉5個でええんやけど…」


「俺は欲しがってもねぇよ」


「あ、足とか鶏冠とかありますよ?田中さんおつまみ系好きでしたよね?」


「足や鶏冠を1つ2つ貰って俺にどうしろと?それでおつまみ作れる一般人がどれだけ居ると思ってんだ?」


「やっぱそれ使って料理出来るわけや無かったんやな、出来るんかと思ってツッコミ出来ひんかったわ」


いやぁ、レアドロップはレアドロップなんですけど、ギルドでも困るんですよね。ここって殆どが食用品ドロップなので1つ2つ程度だと卸売りが難しくて……


まぁ、謎フィルムから出さなければ腐らないので保管して量が増えたら売りに出してますけど。


「…ミロク君のところのグレイなら調理出来そうですし、お裾分けに行きましょうかね」


一応、私は登録してあるので颯人君宅のセキュリティに引っ掛かりませんが、佐藤さんと田中さんが家の中に入るには門に設置されているパネルに探索者免許の提示をして、そのパネルで免許のスキャンを行って警備会社にデータが送られて、データベース照合と犯罪歴等の確認をされてから、颯人君に確認が入ってと中々に面倒なことになります。


宅配なんかだと門に埋め込み式の大きな宅配BOXがあって、そこに荷物を入れると自動で中をスキャンして危険物が無いか確認してます。


ここまで厳重なセキュリティで守らないと行けなかったんですが、神木のお嬢様スキルのお陰でかなり颯人君の自由度が上がりました。


やつの人生最大の功績だと思っています。


「……というわけでお二方、用事が出来ましたのでここで失礼しますね」


「神木さんに言えないくらい副ギルド長も唐突で自由人やなっ!?」


「言うな佐藤、ここで解放されなかったらボスまでだぞ」


「ハッ!せや!俺もはよオカンに肉届けな!ここで解散に賛成です!」


「佐藤さんに田中さん、今度指名依頼入れときますね」


「「職権乱用!?」」


「では、また」


さて、早くダンジョンから出て推しに肉を届けに行かなければ!


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