第306話 高村の閃きで鶏肉が来た


道なりに進むと仁王立ちの鶏が居ました。


「では、とりあえず」


地面を蹴って一瞬で鶏の前に出て、拳に雷を纏わせて首目掛けて右ストレート。


これ、浅い階層だと頭吹っ飛んじゃうので加減が難しいんですが、今回は見た目も綺麗に倒せました。まぁ直ぐに塵になってしまうんですけどね。


「………は?」


「おい、佐藤しっかりしろ!ダンジョンで呆けると死ぬぞ!」


田中さんが佐藤さんの肩を揺らして正気に戻してます。


それで我に返った佐藤さん。


「いやいやいや!確かに近接も出来る魔法使いだって噂はあったけれどもっ!ヤバいやん!ヤバいやつやん!そこらの中堅物理職より速いやん!ヤバァ!」


「ツッコミが雑では?」


いつものキレが無いような?


「だから殴り大賢者とか言われてんだ。お?佐藤、鶏肉落ちてるぞ」


「あ、ありがとうございます。ってちゃうわっ!殴りとかのレベルちゃいますて!」


田中さんは慣れてるのでドロップ品を拾って佐藤さんに渡してますが、佐藤さんはまだ混乱しているようです。


「佐藤さん、世の中には猫パンチでオーガ倒しちゃう大賢者猫が居るんですよ?」


もっと凄いのが居るのでこれくらいで騒ぐなというつもりで言ったんですが、佐藤さんはスンと表情が無くなって落ち着きました。


さすがミロク君、佐藤さんも納得の不思議さです。


「せやな、猫がひっかいてオークキングとか倒せるんやから魔法使いが殴ってもええやんな」


無理矢理納得して、棒読みな感じで鶏肉をゲット出来たことを喜んでます。ツッコミキャラなわりに繊細というか、常識人ですよね。


「おい、高村と佐藤……あれ見ろ」


佐藤さんが落ち着くまで周りの警戒をしていた田中さんが小声で指示を出してきました。


おや?あれは……


「ヒヨコやん」


「ヒヨコですね」


「ヒヨコだよな?」


普通の鶏サイズのヒヨコが道の端にピヨピヨしてました。


「つまり、鶏肉が欲しいならヒヨコを倒して鶏トレインをしなさいというダンジョンの配慮ですね」


「ちゃいます」


「やめろ?」


何故か2人から止められてしまいました。ミロク君なら絶対にのってくれるんですけど……


「なんだかチキンステーキな気分になってきましたから肉は多いほうが嬉しいです」


言いながらバチッと軽い電撃でヒヨコを倒しました。


「「あぁぁぁっ!?」」


「ほら、遠くから大群の足音がしてきました」


「田中さん!俺土壁作ってその上から狙いますんで!」


「じゃあ俺はそれを壊されないようにだな。高村は勝手にやってろ」


「では近くに来たヤツから倒しますので、佐藤さんは遠くのお願いしますね」


思えば、ダンジョンで初めて組んだ人達とトレイン処理とか割りと大問題かもしれません。


「高村って時々こうやって勢いに任せた行動取るよな!お前が倒し終わった後のドロップ品拾えよっ!?」


………それがありましたね。忘れてました。


「初老に差し掛かったおじさんの腰を労れってんだよ!」


「善処します」


「それやらないやつやないですか!?」


やだな、やりますよ?勿論。

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