第292話 ご主人と鰻


本当にちょっと歩いた所にダンジョンはあった。


ご主人もグレイも着替えて準備完了。さっさと入るぞ!



「…にゃ」


…フィールド型とか聞いてない。


「言う前にスタスタ行っちゃうから、ここはフィールド型といっても狭くて、草原と雑木林、岩場と竹林、サバンナとオアシスにボス部屋って感じの3階層になってるよ」


洞窟型以外のダンジョンだと天井は時間経過があるけど空色に塗ってるだけみたいなのが多いんだが、ここは天井が普通に雲が流れる空に太陽っぽい光まである。


どうやってんだろ?というか、この空が無かったら、もう1階層くらい作れたのでは?ってくらい手間かかってそう。


ダンジョン作るのにコスト掛かるのか知らんけども……高そう。


「因みに池とか川とかもあるらしいよ?川は鰻を放流したら大繁殖しちゃったらしくて、このダンジョンに入ったら1人1匹は持って帰るようにだって」


……人間ってそういうことするよねパート2。


ダンジョンさんの生態系壊しちゃってない?池のお魚で懲りたのでは無かったの?



「にゃー」


持って帰ってどうすんだ。


「ギルドで買い取って市場に流すらしいよ」


この辺のお店だと鰻重がお安く食べられるんだって、とご主人はルンルンしてる。


ご主人、鰻重好きなの?初耳なんだけど?


俺、時々骨が刺さるから鰻重とかそこまで好きじゃないんだよなぁ……


「鰻ならレシピがあるので捌けるが?」


「にゃ!?」


マジで!?


「え!じゃあギルドに渡す分と家で食べる分捕まえていいかな?」


「あぁ、七輪と炭を買えば本格的なものを出せると思う」


「買う買う!はぁ、こうしちゃいられないね!さっそく川に行かなきゃ!」


お、おぉ……こんなご主人は珍しいな。


ズンズン進むご主人を追いかけて行くんだが、出てきた兎を進みながら斬り、出てきた鹿を避けながら斬りとご主人が止まらない。


「……キュー」


……大丈夫そうだしうろちょろしてくる。とヤクシがご主人にちょっと引きながら離脱した。


なんか巻き込まれたくない、という意思を感じたので許可しといた。


『マリモちゃんもーあのテンションはちょっとー』


といって、マリモちゃんも自由行動だ。



大丈夫だぞ、ご主人。


俺はちゃんとついていくからな!


「にゃ、うにゃー!」


あ、待ってご主人!


置いていかれてる!速足速足!


「ミロク、川はすぐそこだよ!」


「うにゃ!にゃぅにゃ!」


待ってご主人!どうやって鰻捕まえるの!


ちょっと速度落としてくんないかなと思って言ったんだが、ご主人はピタッと止まった。


「……2階に行って竹を切って罠作ろう」


真剣な顔してご主人が言った。


「颯人様は、時々馬鹿になるよな」


「にゃ」


言うな。


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