第291話 忘れてた
雑談配信が終わった次の日。
本日、ご主人がお休みなので皆で一緒にお出かけらしい。
ご主人に何処に行くのか聞いても笑顔で内緒と言われたのだ。
「じゃあ皆、準備出来たかな?」
「にゃ!」
「キュ!」
『はーい!』
「マスターたちの入ったリュックは持ったぞ」
どうやらタクシーを呼んだみたいで、今日は猫馬車はいらないそうだ。ヤクシもマリモちゃんも何処に行くのか知らないらしくて、ワクワクしてる。
タクシーに乗ると、先に伝えてあったのか行き先を告げなくても動き出した。
車酔いはしないけど、移動中は暇なので睡眠モードに突入。俺は車でも騒がない猫なのだ。
………ココドコ?
「む?颯人様、どうやら起きたようだぞ」
「あ、ようやく起きたの?」
何ここ?キョロキョロと周りを見ると、見覚えはないけど理解は出来た。
「うにゃー!」
病院ではなかろうか!
「うん、動物病院だね。体重とレントゲンは寝てるうちに済ませたから、あとは採血とかだけだよ」
ハッ!そういえば忘れてたけど検診があるとか言ってた!
「思い出した?そう、検診です。平日に予定組まれたから日曜日に変更して貰ったんだけど、4月になっちゃったんだよね」
おのれ!あれから全く話に出てこなかったから中止になったと思ってたのに!
指定日の変更で延期になってただけか!
「うにゃ」
「いや、騙してないよ?言わなかっただけだし」
「にゃぁ」
お出かけだと思ってたのに。
「お出かけもするよ?だから関係無いヤクシやマリモちゃんも連れてきたでしょ?」
くっ、ヤクシやマリモちゃんが一緒だったから普通のお出かけだと思ってたんだ。本命が検診だとは知らなかった。
「というか、最近ミロクって抱えて動かしても起きないくらい熟睡するよね?」
「うにゃにゃ」
危機察知系のスキルがあるから熟睡しても問題無いから気を抜いていたのだ。
しかもご主人やグレイという安心できる相手なので、動かされて覚醒は促されても寝ていて大丈夫判定してるのだ。
「まぁ検診受けるついでにダニ予防のお薬とかも貰うから」
あぁ、いつもの獣医さんで貰うやつもついでに貰っていくのか。
「指定病院が遠いからいつもの獣医さんで検診出来れば良かったんだけどねぇ」
検査出来る機械とかが指定病院にしか無いらしい。なんというか、普通の動物病院というより動物研究センターと病院が合体したみたいな場所らしい。
因みに半国営みたいなもんだとか。
そんなわけで、針で刺されるのを我慢して、尻に体温計入れられるのも我慢して、採れるなら尿も採りたいとかいうのを拒否して、ようやく終わったのだ。
検診は無料だけどお薬分は料金を支払って、病院を出た。
「……にゃ」
「そうだね、疲れたね」
翻訳アプリがあるからって沢山質問されたのだ。ご主人も飼い主として質問されてたし、無駄に熱量半端なくて疲れた。
陰キャコミュ障にグイグイ行っちゃいけないって習わなかったのか?
「お疲れ様だったな、ところでこの後の予定は聞いてないが何処に行くんだ?」
グレイが持ってきていた水筒にはミルクティーが入っていたらしく、ご主人はコップをグレイに手渡されて一息ついてる。
俺はにゃーるを貰ったぜ。
「ここから歩いて行けるダンジョンでね、初級なんだけどテイムモンスターのオモチャとかが出るダンジョンなんだ。ほら、ミロクたちの首輪とか」
ふむ、それは楽しそう。
「ダンジョン名はモンスターのオモチャ箱、初級だし獣系のモンスターしか出ないから簡単なんだけどね、ペットの参入によってそういうアイテムが品薄で高く売れるんだって……三井君が言ってた」
む、三井情報か、ならば行くしかないのだ!
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