第284話 カメラ起動


鑑定結果は正常だった、解せぬ。


「おぉ、めっちゃ良い武器だな!でもなんでこんなファンシーなんだ?」


「そういう武器なので」


高村はおっさんの疑問に答える気がない。


「うにゃ」


『それよりおっさんは人形に魔力流せ』


これはドールであってドールではない、カメラに内臓されてるAIがドールっぽく見せてるだけのカメラだ。


カメラの機能しかないけど、ドール作成材料も入れてるので音声案内してくれるし、アングル調整とかも学習してくれる高性能AIになってる。


つまり幸運が仕事したのだ。


「俺っぽい人形にフェアリーの羽と犬耳と尻尾ついてるのキモいな」


因みに、この人形は真っ裸だったので、ご主人に送られてきた柄物衣類から布を取って服にしてる。


面倒だったので白地に真っ赤な薔薇の着流しにしたんだが、無駄に似合ってるのがいらっとくる。


おっさんは人形を弄りながら魔力を流した。よし!これで登録完了した!


「にゃ!」


『起動って言うのだ!』


「起動?」


おっさんの言葉に反応して、人形が動き出す。とりあえずおっさんの顔の前に浮かんでる。


『起動完了、録画か配信か選んでください』


人形が両手を前に出して広げると、ホログラムウィンドウが表示された。


「は?なんだこれ?」


『フェアリードール型浮遊カメラ、神木正人犬モデル通称マー君です。録画しますか?配信しますか?』


「……ミロク君?」


高村が説明してくれますよね?みたいな顔で見てくるので、目をそらしておく。


「うにゃうにゃ」


『俺だって今起動させたんだから知ってるわけないんだ』


ただ、鑑定結果的に対話がある程度可能ってことは知ってた。カメラ主体で作ったし基本はカメラ機能しかないんだから大丈夫。


「お前マー君って名前なのか?というか、えーと、浮遊カメラってしゃべる?」


『マー君には音声認識システムと声帯が内臓されています、録画しますか?配信しますか?』


「あー、神木についていける浮遊カメラが無いのでミロク君が用意してくれたらしいです。神木のチャンネル自体は作ってありますので配信も録画して動画投稿も可能です」


「俺配信やるって言ったことあるか?」


「言ったこと無くても、やらかしが多いので垂れ流しで良いから配信やれとギルド職員全員が思ってます」


「なんで?」


おま、おっさん、ホントさぁ……


思わず鼻ふんため息ついてしまった。


「キュー」


『ライブ配信してればコメントで止められるからだよ』


「自覚が無いの凄いな…」


『グレイー?感心しちゃ駄目だよー?』


俺らからビシバシ言われてるけど、おっさんは首を傾げてる。


「ついでにその剣も、そこまで見た目が違うならボスドロップとは間違えないだろうと作成しました」


高村は、ネタ武器を使うおっさんが見たいからカメラを用意したという事実を良い感じに誤魔化すようだ。


「あー……成る程」


「マー君はダンジョンに入ったら自動で配信を開始することは出来ませんか?」


『設定すれば可能です』


マー君はウィンドウに設定画面を出した。


設定しとけば自動的に配信したり出来るらしい。


「にゃぁん」


『因みにマー君は魔石を食べて稼働するからマー君から魔石を催促されたらあげてくれ』


「……ん?つまり、こいつずっと俺についてくんのか!?」


「うにゃ!」


『俺なんか24時間カメラで撮影されてるんだから文句言うな!』


ダンジョンの時しか配信されないならまだ良いだろ!俺なんか廊下でへそ天してたりトイレしてたりするのも撮られてるんだぞ!


それにそんな嫌そうに言ったらマー君が可哀想でしょうが!

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