第260話 モンスターはスルー


スピードで振り切ってしまえば奇襲も何も無い。このダンジョンはアスレチックと化したのだ!


壁を走るのも三角跳びも楽勝なのである。


因みに高くジャンプした後の着地のとき両前足が広がるのは、空気抵抗で着地の負荷を減らすための本能的行動……なのかもしれない。


勝手に広がっちゃうのだ、ちょっとモモンガ感あるから、もっとスタイリッシュなポーズを取りたい。


体の本能的行動、所謂反射反応は制御出来ないのが問題だな。


「高速で無駄なアクロバットして、疲れないか?」


「にゃ」


この程度で疲れる鍛え方してない。


まだ走り始めて5分も経って無いけど、既に3階も終わって4階に入ろうというところなので、モンスターをスルーすればどんだけ時間の短縮になるかって話。


いや、俺たちの移動速度が速すぎるのかもしれない。小さくなってるけど飛んでるドラゴンが遅い筈もなく、俺が楽しくなっちゃうくらい飛び回るフェアリーの飛行能力持ちのグレイも遅い筈がない。


そして猫の全力疾走にレベルアップと持久力が追加されてる俺が遅い筈ないのだ!



「うにゃぁ」


というわけで、こちらが5階の中ボス部屋になります。


『コボルトチームだからーちょっと速いゴブリンチームみたいなもんだよねー』


ちっちっちっ、そのちょっと速いで怪我人が出ちゃうのがダンジョンなのだよ!


強者による『ゴブリンより少し速いけど強さはゴブリン程度』という感覚の情報は、適正レベル帯の探索者からしたら油断をしてしまう原因になり得るのだ。



まぁ、俺はこのダンジョンの適正レベル帯より上のレベルなんだけどな。ここレベル40から50が適正だから。


「うにゃぁ」


グレイはここで盾訓練すればいいよ。


「そうだな、奇襲ダンジョンのコボルトは一撃離脱を繰り返すライトアタッカータイプが多いし」


「キュー?」


先制範囲魔法攻撃やる?


『うーん、とりあえず最初だからーコボルトの攻撃パターンとかもー見たいなー』


マリモちゃんはちゃんと力押しじゃなくてチーム戦闘として情報を仕入れたいらしい。


……というか、そうじゃなきゃダンジョンさんにエンタメ性がなくてつまんないとか愚痴言われてそう。


ダンジョンさんは苦労して色々経験しながらダンジョン攻略してもらいたいみたいだし、範囲魔法先制一発で終了とかマリモちゃんに不満をこぼしそうだもんな。


愚痴がウザいとまた魔苔が大繁殖してしまうので、ここはマリモちゃんの意見を採用しよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る