第182話 あと1個足りない
泥人形はめんどくさい。
だって泥なのだ。斬っても泥だからすぐ再生する。材料はいっぱいあるから無尽蔵なのだ。
だから燃やして固めてから壊す、そうすれば倒せる。コアがあるらしいけど、移動するしビー玉サイズだから壊せる人は一握りの人達だけ。
でも壊した時の方がコアのドロップ率が良いらしいんだよねぇ。なんで壊したのにドロップするのかは謎なんだけど。
因みに僕らの目的は泥人形が落とす陶芸用の泥5個だ。学生の実習でレアドロップなんて狙わせない。
そもそもドロップ率なんて言葉があるんだから、魔石だけの時が多いのだ。毎回何かしらドロップしてるミロクがおかしいだけで。
「あと2つ!」
「なんか神木氏がラストアタックした時の方がドロップしてる気がするでござる!」
「あー、そうかも?」
「早めに頼む、盾で防ぐと泥が飛び散って目に入りそうだ」
皆が泥だらけの中、僕だけ綺麗なままで申し訳ないなぁ、とか考えてたけど安田君が思ったよりも苦戦してた。
「やっぱり、神木の初期バージョンに書いてあったゴーグル持って来るべきだったな!銀、ファイアーウォール!」
いや、でも、ゴーグル以外はタオルとか着替えとかシャンプーとか必要?って物ばっかりだったから………僕はミロクに持たされてるけど。
銀のファイアーウォールで広範囲が固まった泥人形を斬り倒した………よし、陶芸用泥ドロップした!
……そういえば、装備のアクセサリーは幸運アップだった気がする。
「あー…あと1個だけど、近くに泥人形居るか?」
「気配は無いでござる」
「とりあえず顔を流させてくれ」
僕は安田君に洗浄魔法をかけてあげた。安田君は何故か小ダンジョンでも生活魔法が出ないらしい。防御魔法と植物魔法しか持ってない。
「どうする?探すか?」
「探すなら……気は乗らないけど、モンスターレーダーを持たされてるよ?」
レーダーと言いながら、見た目は地図なんだけどね?
ホームページに載ってた9階の地図と9階に出てくるモンスターの写真と情報と察知やマップのスキルが取得できる魔石を錬金術で合成したアイテムだ。
「ミロクにしか作れないだろうアイテムを学校の実習で出して良いものかと思ってたんだけどね?」
「それは……どうなんだろうな?」
「探すのも訓練な気はするでござるが、持ってるアイテムを使ってはいけないということも無いでござる」
「……チラ見してみよう」
というわけでチラ見。
「泥人形、リポップ待ちだったね」
「うっし、セーフティゾーン帰るか!」
リポップ待ってまで倒そうとは思わないってことで、明日に残すことになった。
セーフティゾーンで夜営の準備を始める。
「とりあえず結界石置いとくね?あとこれよかったら使って」
「マジか、サンキュー!」
「持たされたのでござるな」
「ありがたい」
シャンプーと桶だ。洗浄で綺麗になるといっても洗いたいだろうからね。
三井君が銀に頼んででっかいお湯の球を作ってもらって、桶で汲んで頭から流してる。三井君は先に銀を洗うもよう。
ミロクは気遣い屋さんだから動物用シャンプーも持たされてるよ。ペットショップの試供品の小さい袋のやつだけどね。
ミロクの貰えるものは貰っとこう精神はどこから来てるのか謎だ。
だってミロクはシャンプーとリンス別々のやつなのに試供品はリンスインシャンプーなんだもの。
絶対買わないだろうに、なんで貰ってきたのか謎だ。
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