第174話 猫なので猫贔屓は当然


ギルドから出た俺達は、家に帰らず猫の魔法練習場に来ていた。


場所は空き地である。


草ぼうぼうの藪の中みたいな所だが、野良猫たちにとっては良い隠れ場所なのだ。


今回、魔法練習のために真ん中だけ草を刈り取り、広場に変えた。


何故かダンジョンさんは最初の一回だけ宝箱をプレゼントしてくれてるらしく、広場の隅には宝箱が大量に並んでる。


それぞれの個人スペースとして活用してるらしい。


コイツらがダンジョンに行くのはだいたい静かになった夜なんだけど、夜中に宝箱持った猫が藪の中に消えるとか、結構ビックリされるんじゃなかろうか?


「キュー…」


『猫ってー皆が皆ー、マスターみたいな感じじゃー無いんだねー』


ヤクシは、これが普通の猫…となんだかショック受けてるし、マリモちゃんはいったい何が言いたいんだ?


「うにゃぁん!」


それより、今から魔法スキルの魔石出すから選んで食べろ!


属性スライムとかゴブリンマジシャンとかの魔石の中で魔法がゲット出来るやつは取っといたのだ。


アイテムって一定数手元に残しとかないと不安じゃない?俺は不安になっちゃうタイプなのだ。


一個しかないアイテムとか使えなくてずっと残しとくタイプだ。


数えるのめんどくさいくらい猫が集まってるから魔法スキルの魔石は地面にざらざら撒いた。


勘とかで魔法を選べば良いのだ。


その間に、ヤクシ達から聞き取り。


「キュキュー」


普通の猫はひっかくを普通に使ってるらしいよ。だから魔力爪作るやり方とか教えてた。とヤクシが言ったんだが…


『マスターと違ってー、魔力がどうのこうのがー、先ずわかんないっていうかー。凄い苦労したんだけどー?』


あれー?


思わず首を傾げてしまった。


「うにゃ?」


本能的にわかるもんじゃないの?


……いや、でも、俺は前提として、人間の知識と記憶というか、ファンタジーを嗜んでたからか?魔力を自分で動かすとか、転生物の定番だ!って考えがあったから?


つまり……


「にゃぁん!」


俺はスーパーネッコだってことだな!


なんか一芸あったり動画のネタになる猫をネッコ、犬をイッヌと表すなら、俺はスーパーネッコなのだ。


……なんかヤクシとかグレイがやれやれって感じでため息ついたんだけど?


俺、なんか変なこと言ったか?


『ハイハイー、そーですねー、そんでーこの後はどうするのー?』


「うにゃ」


小ダンジョンで魔法の試し撃ちだ。


流石に広場といっても可燃物に囲まれてるし、火魔法とか危ないから、いっそ小ダンジョン行こうぜ!


「うにゃにゃ」


たぶん進化もしてるし、スキルとかの使い方とかわかってると思うけど、鑑定やストレージ持ちは皆に協力してあげてね。


「「「「にゃぁ」」」」


うむ、良いお返事だ。


今度探索者ギルドのホームページに載ってる探索の注意点とか簡単に纏めた動画を撮ってやろう。


ご主人の教科書も貸して貰って、探索者教育で習うことを動画にしてやれば、ペットも学べるし、野良たちの勉強にも使える。


ついでに人間社会についても教えとかないと、困りそうだし。


野生動物の進化とか、人間のほうでもちゃんと周知がされると良いけど、日本人のやることだからなぁ。楽観的というか、こと無かれ主義というか……


猫のほうにきちっと教えたほうが問題が起こらない気がするのだ。元人間の日本人的には!




……いやぁ?後で小ダンジョンに行ってダンジョンさんに進化でも人間の一般情報入れて貰えるよう頼んだほうが確実かぁ?


うん、ファンサしにダンジョン行こう。

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