第165話 高村はちょっと引いてる
世間に大々的に知られてしまった鳥獣人ですが、知られないように出来なかったのかと訊かれたら、出来たと答えるでしょう。
しかし、そうなると無かったことにされそうでしたから、むしろリークしときました。
まともになったらしい鳥獣人がミロク君たちに連れられてギルド本部にやって来て、とりあえず厳選した報道陣の前で、謝罪させときました。
「では、これから彼には色々説明などがありますので、一先ず皆様は鳥獣人は無事保護されたと発表をお願いします。獣人についての聞き取りなども行いますので、詳しくはおって報告します」
厳選しただけあって、騒がしくせずに帰って行きました。
獣人についてはミロク君に鑑定結果をもらってるので、ほとんどわかってはいますが、彼の知識レベルがどの辺りか確認しなければなりません。
行動学や心理学等の専門家も呼んで判定が必要ですし、彼が問題無くとも他の獣人が大丈夫とはなりませんから、獣人には戸籍登録の時にテストを受けて貰うように決めないといけません。
まぁ、考えるのは国のお偉いさんです。
高い給料貰ってるんだから、回復の水飲んででも頑張ってもらいましょう。
獣人用の法整備も必要ですし、獣人の情報が出た時点でやらずにゆっくりやろうとしてるからこうなるんですよ。
「一先ず、えーと……ピーちゃんは飼い主さんが会議室でお待ちですよ」
「飼い主……」
なんだかしょんぼりしてませんか?
「大丈夫だよ!ピーちゃんの分のお金とか稼げば良いんだよ!」
颯人君が一生懸命慰めてます。
そういえば、ミロク君が脅してましたね?会うのが怖くなっちゃったのでしょうか?
でも、連れて行かないと話が進まないので仕方ありませんよね。
ピーちゃんの腕を掴んでズルズルと引き摺って行きます。
「……俺等も行くのか?」
「キュ」
『ヤクシはー気になるんだー?マリモちゃんはーどうでも良いかなぁー』
大丈夫です、止めませんよ!
会議室の扉を開けると、泣いて目蓋の腫れた飼い主さんが待っていた。
「ピーちゃん!」
飼い主さんは勢いよく立ち上がり、ピーちゃんに抱きついて、また泣き出した。
「ピーちゃん心配したんだよぉぉっ!?なんで飛んで行っちゃうのぉぉっ!」
因みに、飼い主さんは40代男性です。
「すまないパパ」
「パパ!?」
颯人君、シーッですよ!ペットにパパですよー?とかママですよー?とか言う人は一定数居るんですよ。
ピーちゃんは15歳なので息子でもおかしくないじゃないですか。
「うにゃ!」
ミロク君が空気読まずに鑑定結果を見ろ!とパソコンを飼い主さんの前につき出しました。
読んだ飼い主さんの反応は予想通りのものでした。
「パパのせいで怖がらせてごめんよぉぉぉっ!」
「大丈夫、というか泣きすぎ」
……こう、中年の男性が15歳の少年にすがり付いて大泣きしてるのは、いたたまれない気持ちになりますね。
「うにゃにゃ」
「とりあえず泣き止め話が進まない、だそうだ」
「ぐずっ、失礼しました。ピーちゃんを見つけていただき、レベル上げまでしてもらったようで、誠に有り難う御座いました」
「えーと、たぶん勘違いしてると思うがうちの飼い主は颯人様で俺はドールでマスターは猫のミロク様だぞ?」
見た目成人してるグレイが代表だと思われたようです。
この飼い主さん、つい先日までネット環境の無い山奥の村でお医者様をやってらしたそうで、最後の村人だった御老人が老衰で亡くなったのを期に、こちらに引っ越して来たそうです。
回復の水が出回ったことで、医者の求人もなく、探索者として活動しようと考えてホームページで小ダンジョンのことを知り、今回の騒ぎになったようです。
だからミロク君たちのこと知らないんですよね。
流石に今時テレビも無ければ電話は固定電話のみの人が居るとは思ってませんでした。
医者になるのが大変過ぎてスローライフに憧れて山奥に行きたかったとか、意味がわかりません。
「なんと!?都会は不思議でいっぱいだなピーちゃん!」
私、この飼い主さん苦手かもしれません。
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