第159話 鳥は怪我してない、たぶん。


道無き道を移動中、ハタと気がついてしまった。理性が囁くのだ……このまま連れてったら怒られやしないか?とな。


後ろから何か叫びながら追いかけてくる気配が有るから急がねばならない。だが傷だらけの鳥を見て、ご主人は怒るんじゃないだろうか?


「居た!」


「自慢気にスタスタ行きやがって!」


「無駄に姿勢良いのなんなの!?」


「猫ってああいうとこあるわよねぇ!ダメだってわかってる癖に自慢しに来ちゃうのよねぇ!可愛いけど憎たらしいわっ!」



うむ、猫飼いさんもいらっしゃるようだな。


とりあえず、この傷だらけはダメかもしれない………あ、ヒールしながら行けば良いんだ!


リジェネ風に継続回復かけながら移動再開。


「ちょっ!?速いって!」


「草が邪魔!根っこ転ける!」


「なんか、鳥獣人が、うっすら、光ってないか!?ハァハァ」


「ヒールかけながら運ぶくらいなら俺達運びますけど!?」



なんか背後がうるさいなぁ。


人間は道が無いとうまく走れないから大変だな!


俺は荷物有りでもすいすい進むぞ!たまに荷物が引っ掛かるけど、ヒールしてるから大丈夫!


世の中には、甘い物食べた後にしょっぱいの食べたらカロリーゼロとか暴論かましてるやつが居るんだし、ヒールしたら傷はゼロだし、俺の方が正当性あるよな!


それに、逃げたってことは野生で生きてくことにしたってことだし、こんくらいの怪我なんて無いようなもんだ!


にしてもこの鳥は何で逃げたんだろうか?飼育環境や飼い主に不満でも有ったのかなぁ?でもわざわざ獣人化する必要性がわからないし。


飼い主に反逆したいなら、獣人になって飼い主を害するでもなく逃げたのは変だし。


……項目選び損なって獣人化したことにビックリして逃げたとかなら笑うけど。めっちゃ笑うけど。


あ!そろそろテントにつくぞ!


ご主じぃぃん!鳥捕まえたー!


「うにゃぁん!」


あ、落としちゃった。


「うわっ!ミロク!?」


「大丈夫だ、ヒールされてる」


「何が大丈夫なんだ!?」


ご主人はビックリして、グレイは落ち着いた様子で頷き、現場責任者のおっさんは慌てた様子で叫んだ。


俺は再度鳥を咥えて、ご主人の前に持って行って地面に落とした。


「にゃぁ!」


俺が捕った鳥!


「そ、そっかぁ、ミロクが捕った鳥かぁ!凄いねぇミロク!」


おお!褒められた!


「にゃぁん」


ご主人にあげる。


「え、いらな……いや、ありがとうミロク」


ご主人は途中でグレイに肘打ちされて苦笑いで喜んだ。


すまないご主人、要らないんだろうなって理解はできるけど、本能が勝ったのだ。


獲物をご主人に自慢気に見せに行く猫の気持ちが凄くわかった。ご主人が嫌がるのも騒ぐのも、なんだか楽しいのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る