第131話 淡々と語るのが効果的だった


人慣れしてる犬ならば、人に撫でられるのは嬉しいのだと思う。


猫は……撫でられるの大好きなのも居るだろうが、たぶん人のことをマッサージ機扱いしてる。


近所の野良が話してた、最近のデカイやつらは揉むのが下手くそだ。とかなんとか?



俺はご主人以外に触られるのは好きじゃない。



だから、触っても良いですかー?って来られても拒否だ!


「えーと…」


「にゃ」


「拒否だそうだ」


ご主人の様子を見て、グレイがスパッと言ってくれた。


「マスターはそもそも颯人様以外に触られるのは好まない、触りたいならヤクシ先輩を生け贄に出す」


「キュ?」


ヤクシが呼んだ?とやって来た。


「うにゃ」


「キュー」


「ヤクシ先輩なら触っても良いそうだ」


言われた人達はちょっと残念そうだが、ヤクシを撫で回している。


俺はご主人と遊ぶのだ!


「じゃあ、ミロクお座り、おて、おかわり、ふせ、ごろん」


これくらいのこと出来ずにスパ猫は名乗れぬ!


けど、なんか、おおー!みたいな声がする。


「よしよしミロク、良くできました」


「にゃぁん」


「あの、すみません!躾ってどうやるのか教えて貰えませんか?」


数人の暴れワンコ飼い主がやって来た。


「……躾?」


ご主人がめっちゃ困ってる。だってご主人が教えたわけじゃなく、動画見てて俺もこんくらい出来る!ってやり始めたやつだからだ。


「えーと、躾とか良くわかんないんですけど、その子たちはあなた方を見下してるから言うこと聞かないんだと思います」


偉いぞご主人!知らない人ともちゃんと話せるのか!


ご主人はワンコたちが飼い主を自分より下位の存在だと思ってることを説明してやった。これは大変だぞ?


「レベルを上げて威圧すれば早いのでは?」


「にゃにゃ」


ペットとテイムモンスターは違うのだよ。



「君たち、飼い主さんがご飯くれないと自分でご飯の調達も出来ないのに何を生意気なこと言ってるの?違うよ?人間は食事の順番で群れの順番決めない、君がうるさく騒ぐから黙らせるためにご飯を上げてるだけ、撫でるのもブラッシングも愛情表現の1つだよ、お世話してあげてるんだよ」


ご主人、淡々と事実を伝えている。


ご主人はユニークあるから、わかりあえるのだ。


「人間と暮らすために人間の指示を覚えるのは当たり前でしょ?人間は君たちにちゃんとした暮らしを提供して、君たちは人間に協力するために指示を覚える。それが出来ない犬は……駄犬って言われるね、犬は賢い生き物なのに、馬鹿犬とかアホ犬とかみんなの笑いものだよ?物を噛んでボロボロにするとか論外、ちゃんと噛む用のおもちゃあるでしょ?なんでスリッパ噛んじゃうの?なんで食べちゃダメって言ってるのに食べちゃうの?」



ご主人、淡々と飼い主さんたちの愚痴とかをワンコに聞かせていく。


ご主人が犬をわからせてる!


ワンコたちはベッコベコだ、伏せて頭に前足乗せてる。


よし、じゃあ俺は飼い主にアドバイスだ!


「うにゃにゃ」


「犬を小ダンジョン連れてって魔苔の魔石を食べさせればいい、と言っている」


「うにゃ」


「基本的に日本語理解してないので知力を上げてやる必要がある」


「にゃにゃ」


「知力を上げてからトレーナーに躾して貰えば良いのだ」


グレイの翻訳で飼い主たちに伝えて終了。



普通に考えて脳が小さいのだ、ステータスなんてもんがあるんだから知力を上げてやれば、ちょっとはマシになる。


暴れワンコってパッと見て知力が低いんだよなぁ。三井の銀は知力高いけど躾かた間違っててアホなんだけど。



俺は……免許だけ取ってダンジョンに入ってない一般人より知力高いけど、たぶんこれは魔法使うからだと思う。そんな頭良くなった気がしないし。猫の本能に引っ張られるし。


「お座りとかお手って通常犬がやれるものなのに出来ないなんて、猫のミロクにだって出来るのに…………」


「うにゃ」


「ん?こいつらのライフはもうゼロよ?何かのセリフ?」


「にゃぅ」


「そっか、もうベッコベコかぁ……」


「うにゃ?」


「あぁ、叔父さんのおかげで説教慣れというか、こういうのはすらすら出てくるんだ」



ご主人……


しょんもりとおとなしくなったワンコたちを連れて、なんだかニコニコしてる飼い主たちは部屋に戻って行った。

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