第99話 相性が悪いかもしれない
ミロクはトートバッグを取り出して僕に持たせた後、バッグの中に入って寝てしまった。
『マリモちゃんも入るー』
そしてマリモちゃんとヤクシもバッグに入った。
「まぁ、俺も銀連れてるから良いんじゃね?」
三井君が軽く言いながら僕の背中を押してきた。
仕方ないのでバスに乗り込んで大人しく座る。
三井君はテイマーのレベルアップでモンスタールームのアーツが使えるようになったので、銀は出してないんだけど本当に良いのかな?
……良かったらしい。バスは定刻に出発して目的地に到着した。
「ミロク着いたよ」
「にゃ」
ミロク達をバッグから出したら、ミロクは毛繕いを始めてしまった。
「ちゃんと勉強してきたの?」
「キュー!」
『したのー!ゴブリンダンジョンなんでしょー?』
下調べもちゃんとやったらしいので、大丈夫そうだ。
いや、ミロク達のほうが強いんだけどね?見た目がほら、小さめな動物だから。
「にゃ?」
ご主人たちは行かないの?って訊かれてしまった。
「人間には装備という準備が必要なんだよ」
僕は済んだけど皆がまだなんだよね。
「神木氏、猫も一緒に行くので御座るか?」
「うにゃ」
「行かないらしい」
友達の野田君はしゃべり方が独特だけど、斥候としてとても優秀な人だ。
「残念で御座るな」
野田君が手をワキワキと動かすから、ミロクがちょっと距離を取った。
「ミロク気をつけろよー!野田は銀もワシャワシャして5分くらい動けなくしたテクニシャンだぞー!」
三井君が笑いながらミロクに伝えると、もっと距離を取った。
「うにゃ!」
「ミロクの尊厳を守るためにさっさとダンジョンに入る!だって」
走りはしないけど、こちらをチラチラ見ながら早足でダンジョンに入って行った。
「今のうにゃにそんだけ込められてたのか?」
静かな性格の安田君、タンク担当で安定感抜群。
「込められてたよ?犬とかもさ、お尻の匂いかいで挨拶じゃない?クンクンしてる時こんにちはー!とか言ってるっていうか、感じるっていうか、動物って鳴き声だけじゃないんだよね」
「興味深いな」
……あれ?これ動物がだよね?僕がじゃないよね?あ、スキルが興味深いかな?わからないよ…
「じゃ、準備出来たし行こうぜ!」
改札をくぐって中に入ると、1階の角の転移魔法陣に向かう。ここは10階まであって、既に5階をクリアしてるので6階から始められるのだ。
6階の転移魔法陣周りはセーフティーエリアになってるから、転移直後に襲われることもない。
このダンジョンは洞窟型なので、慎重に警戒しながら進む。まぁ、ここのゴブリンって結構異臭がするから匂いで気がつくんだけどね。
「そういえば、ミロク達匂い大丈夫かな?」
「銀が平気だから平気じゃね?」
いや、テイムモンスターと普通の猫じゃ違うじゃん?銀も最初は顔しかめてクチャいって言ってたんだよ?倒せば匂いも消えるって、我慢して倒してるけどやっぱり嫌そうだよ?
「ぬ?何か聞こえるで御座る!」
野田君が皆を止めて耳をすます。
………あっれ?何か?
「う……な…?」
「これミロクかも?くちゃぁいって叫んでる」
あとヤクシが浄化の魔法を連発してるのも聞こえる。
「段々近づいてくるで御座る」
「え、てことは…」
僕らは後ろ……まだ微かに見えていた5階と続く階段を見た。
「うにゃぁぁっ!」
「キュゥゥッ!」
『待ってー!』
「ミロクが、何でここのゴブリンこんなクチャいのぉぉっ!で。ヤクシが、浄化しなきゃなのぉぉっ!って」
「いや、呑気に通訳してる場合かよ?」
いや、ゴブリン居なきゃ臭く無いから階段で休憩してるし、良いかな?って思ったんだ。
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