第70話 カニの味ならそれはカニ
学校から帰ってきたご主人に蜘蛛の足を渡すと微妙な顔をされた。
「何これ?」
「にゃん」
「うわぁっ!」
蜘蛛の足って答えたら机に置いてた足からズサァと距離を取られた。
「にゃ」
蟹味で食べれるんだって言ったら、恐る恐る近づいてきた。
「そっかぁ、蟹かぁ、見えなくもないな?」
そう言ったご主人はひょいっと足を掴んで冷蔵庫にしまった。
ヤクシが嘘だろ!?って顔してるけど、やっぱ蟹は食うだろ。
「大きいけど、1本だし茹でて解して料理に使うね」
「にゃ」
猫も食べられるから俺も食べるとご主人に伝えた。
「うにゃ?」
ヤクシは本当に要らないの?って訊いたら、やっぱり頭を横にぶんぶん振られてしまった。
「ヤクシ要らないの?蟹だよ?美味しいのに」
「キュー」
俺とご主人だけでどうぞだって。俺の常識インプットしてるくせに、こういうの駄目なんだなぁコイツ。
「ダンジョンの蜘蛛って蟹なんだね」
「にゃ!」
そうそう!平気平気!これはドロップ品だから怪しい寄生虫とかもいないぞ!
というわけで、夕飯に茹でた蟹のほぐし身がトッピングされたカリカリが出た。
ご主人は贅沢カニ玉にカニチャーハンだ。
味も食感も蟹だった。
「美味しい蟹だね、たまに中級の人とかが中ボス倒しに行ってるのって、これ目当てなんだろうか?」
「うにゃ」
だろうな。蟹には旬があるしパチモンでも美味しい蟹味なんだから自分でゲット出来てリーズナブルだ。
ヤクシは食事中無言。モンスターより悪食なのでは?と悩んでた。フグ毒の説明したあとで卵巣の糠漬けとか教えたし、ナマコの画像やマムシ酒の画像なんかも見せてみた。
日本以外でも虫は食べるしコウモリは食べるしワニだって食うんだ。慣れれば普通だぞ?
日本人は美味いものを食うことに執念感じるレベルだから、食べてみれば良いのにな?
猫と違って色々食えて羨ましいのに食わず嫌いはアカンぞ!
「にゃにゃ」
「……キュ」
一回食べてみれば良いのにって言ったら、しぶしぶ食べて……美味しいって呟いた。
「にゃー?」
「キュ!」
ほらなぁ?って言ったら本当に美味しい!ってはしゃいでた。ふふん、蟹の美味さを知ったか、では今度カニカマを食うがいい。
ビックリするぞ。
「うにゃ」
「え?カニカマ?ヤクシにか、うん今度買ってくる」
「キュ?」
「カニカマって言うのは庶民の味方な蟹だよ」
ヤクシの知識って生活する上での人間ルールとかで、食材とかそういうテイムモンスターに必要ないことは範囲外っぽいんだよな。
一応文化的な部分である車とか自販機とかは入ってるみたいだけど、それも辞書で見たみたいなもんかな?
中途半端に思うけど実際テイムモンスターに必要ないからなぁ、テイマーの指示に従えば良いんだし。
普通のテイマーはこんなペットみたいな扱いしないからな。
「キュ」
「うん、食べてみようね」
ヤクシは蟹楽しみって言ってるが、残念実はカニカマって蟹じゃないんだぞ。
ふひひ、食べたときの反応が楽しみだ!
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